[諸外国における原子力発電開発の動向] 最近の動き (2002年3月中旬〜5月中旬) |
[中 国] 2001年の原子力発電電力量は166億8000万kWhで、シェアは1.13% 中国における2001年の原子力発電量は166億8,000万kWhで、前年の159億6,000万kWhから4.5%増加したが、原子力発電が総発電電力量に占める割合は前年より0.05ポイント下がって1.13%となった。 2001年の原子力発電所の平均設備利用率は前年の84.2%から87.9%に上がり、とくに秦山T-1号機(PWR、30万kW)は94%で235日連続運転を達成した。 秦山U-1号機、4月17日に営業運転開始新華社電によると、秦山U-1号機(PWR、64万2,000kW)は予定より47日早い4月15日に営業運転を開始した。秦山U期プロジェクトの原子力発電所は、中国が独自に開発した初の国産商業炉で、総投資額は148億元。 さらに、秦山U-1号機に続き、嶺澳1号機が4月21日に100%出力運転に成功したことが建設プロジェクトに参画しているフランス側から発表された。同機は2月4日に送電網に接続され、7月中旬に営業運転を開始する予定。 電力公司を分離へ国家発展計画委員会は3月7日、電気事業改革の一環として、中国の電力供給を一元的に担当してきた国家電力公司を発電と送電の2つの部門に分離する意向を明らかにした。 発・送電の分離は、@送電側がコストの低い発電所から廉価な電力を調達できる、A需要家が支払う電気料金を引き下げる、B外資が発電設備へ投資しやすい環境を整える――のがねらい。具体的には、送電事業を6つの地域に分割するとともに、発電事業も複数の企業に分割し、発電コストの引き下げをめざす。 一方、米カリフォルニア州の電力危機や米エンロン社の経営破綻などもあり、政府内には電力の自由化への慎重論も根強く残っている。 [インド]カイガ3、4号機が着工 インド原子力省(DAE)によると、カイガ3、4号機(PHWR、各22万kW)が3月30日にコンクリート打設を行い、4月2日に本格的に着工した。計画通りに進めば、3号機が2007年3月、4号機が同9月に営業運転を開始する予定。クダンクラム1、2号機(VVER、各100万kW)も3月31日に着工しているほか、ラジャスタン5、6号機(PHWR、各22万kW)も近く着工する見通し。 インドには現在、14基の原子力発電所が運転中で、2001年の原子力発電電力量は前年より49億8,000万kWh増の191億9,000万kWh(総発電電力量の3.76%)を記録。平均設備利用率は83%であった。 [インド − ベトナム]二国間協力で了解覚書に署名 インド原子力省(DAE)は5月2日、ベトナムとの間で2002〜2003年にかけての原子力平和利用に関する二国間協力の了解覚書(MOU)を締結したと発表した。MOUの調印は4月にベトナム代表団がインドを訪問した際に行われた。 ベトナム代表団に対して、インド側から多目的研究炉や出力22万kWの加圧重水炉(PHWR)について説明が行われた。 インドとベトナムの原子力協力協定は1986年3月に発効しており、今回のMOUは同協定に基づき取り交わされた。 [米 国]AP1000型炉の設計認証を申請 米国原子力規制委員会(NRC)は4月2日、ウェスチングハウス社がAP1000型炉の設計認証を申請したと発表した。AP1000型炉は出力110万kWの加圧水型炉(PWR)で、原子炉を停止したり事故の影響を軽減するにあたって重力や圧力差を利用した受動的な安全システムを採用しているのが大きな特徴。設計寿命は60年に設定されている。 AP1000型炉がNRCから設計認証を取得できれば、今後米国内で建設される新規原子力発電所の有力な候補炉型となる。電力会社は、新しい許認可手続きである10CFRパート52(Early Site Permits; Standard Design Certification; and Combined Licenses for Nuclear Power Plants)にしたがい、建設・運転一体認可を申請するにあたって、認証を受けた炉型を添付することができる。NRCから設計認証を受けた炉型は、原子力発電所を建設するサイトに特有の環境影響評価の対象とはなるものの、安全性にかかわる問題についてはすでに設計認証取得の段階で片がついているため審査の対象にはならない。NRCはこれまでに、ゼネラルエレクトリック(GE)社のABWR(135万kW、97年5月認証取得)、ウェスチングハウス社の「システム80+」(同)とAP600型炉(61万kW、99年12月認証取得)の3つの炉型に対して設計認証を発給している。 エクセロン社がPBMR計画から撤退米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン(ジェネレーション)社は4月16日、南アフリカで進めているPBMR(Pebble Bed Modular Reactor=モジュール方式の小型高温ガス炉)プロジェクトから撤退することを明らかにした。PBMRプロジェクトは現在、詳細実行可能性調査段階にあるが、エクセロン社はこの段階が終了した時点で撤退する。同社は撤退の理由について、新型炉の開発作業はベンダーが行うべきものであり、電気事業者としての事業範囲を越えていると判断したためと説明している。 PECOエナジー社は、ユニコム社と合併してエクセロン社を設立する前の2000年8月に南アのPBMRプロジェクトに10%出資を表明。また、同10月にエクセロン社(持株会社)が設立されてからは、出資比率を12.5%に上げていた。PBMRプロジェクトには、南アの国内以外からは、英原子燃料会社(BNFL)が22.5%出資している。 エクセロン社は当初、米国内で新規に原子力発電所を建設するとした場合の有力な炉型候補としてPBMRをあげていた。しかし、仮にPBMRの設計認証を米国の原子力規制委員会(NRC)から取得するとなると、資金面での負担も相当な額になるためベンダーとしての役割を放棄したとの見方が出ている。なお、同社関係者はPBMRが将来の有力な候補炉型であることに変わりないと語っている。 下院がヤッカマウンテンを支持米国下院は5月8日、ネバダ州のヤッカマウンテンに使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物(核廃棄物)の貯蔵所を建設するというブッシュ大統領の勧告を306対117の圧倒的多数で支持し、同決議を上院に送付した。ネバダ州のグイン知事(共和党)が4月8日、核廃棄物政策法にしたがい、大統領の勧告に拒否権を行使する旨を議会に通知したことを受け、審議の場が議会う移っていた。 現在、下院の勢力分野は共和党221、民主党212、無所属2。今回の採決では、民主党議員のほぼ半分が大統領の勧告を支持し、グイン知事の拒否権を覆す結果になった。一方で、ネバダ州選出の議員など、一部共和党議員がグイン知事の拒否権を支持した。 上院もグイン知事の拒否権を覆せば、核廃棄物の処分に責任を負っている政府を代表してエネルギー省(DOE)長官が、原子力規制委員会(NRC)に対して、ヤッカマウンテンへの貯蔵所建設を申請することになる。グイン知事は、上院(民主党50、共和党49、未所属1)に対して拒否権支持を働きかけるとともに、これとは別に裁判所に提訴する構えを崩していない。 3電力が相次いで「事前サイト許可」の申請を表明米国を代表する原子力発電事業者のドミニオン(エナジー)社、エンタジー(ニュークリア)社、エクセロン(ジェネレーション)社は相次いで「事前サイト許可」(Early Site Permit)を申請する候補サイト名を公表した。事前サイト許可は、1989年に発効した原子力発電所の新しい許認可手続きである10CFRパート52(Early Site Permits; Standard Design Certification; and Combined Licenses for Nuclear Power Plants)を構成する柱の1つ。 3社の申請表明は、いずれも最終的に原子力発電所を建設することを決断したものではない。また3社は、DOEが今年3月に公表した新規原子力発電所の立地地点の選定とNRCへの申請を官民協力で実施するというプロジェクトへの参加を申請した。 3社が発表した事前サイト許可の候補サイトと申請予定日は以下の通り。なお、事前サイト許可は取得後、20年間にわたって有効なだけでなく、さらに20年までの延長も可能。 ドミニオン社(4月1日発表):候補サイト;ノースアナ原子力発電所、申請予定:2003年9月 エンタジー社(4月16日発表):候補サイト;グランドガルフ原子力発電所、申請予定;2003年6月 エクセロン社(4月30日発表):候補サイト;クリントン原子力発電所、申請予定;2003年6月) 原子力支持含むエネルギー法案が上院で可決米国上院は4月25日、プライス・アンダーソン(原子力損害賠償)法の延長など、原子力産業界にとって有利な内容を含んだ包括的なエネルギー法案(S.517)を88対11で可決した。下院でも同様な法案(H.R. 4)が昨年8月に成立しており、今後は両院協議会の場で調整が行われる。 今回、上院を通過した法案の中には、プライス・アンダーソン法の延長のほか、(1)原子力研究開発と大学の原子力科学・工学教育の充実に12億ドルを支援する(2)エネルギー省(DOE)が中心になって先進的な原子炉の開発を行うとともに、次世代の原子力発電所向けの規制手続きを作成する(3)原子力研究開発を担当するDOE内の原子力科学技術局を格上げする――などが盛り込まれている。 NRC、7基の原子力発電所の出力増強を承認米原子力規制委員会(NRC)は4月から5月にかけて、7基の原子力発電所の出力増強を承認した。詳細は以下の通り。 4月4日 ウォーターフォード3号機の1.5%出力増強 同日 クリントン原子力発電所の20%出力増強 4月22日 サウステキサス・プロジェクト1、2号機の各1.4%出力増強 5月1日 アーカンソー・ニュークリア・ワン2号機の7.5%出力増強 同日 セコヤー1、2号機の各1.3%出力増強 NRCは7基の原子力発電所について、原子炉蒸気発生設備(NSSS)や計装制御系統、電気系統、事故評価、放射線影響、運転・技術仕様の変更などに焦点をあてて検討を行ってきた。NRCは、@ウォーターフォード3号機、サウステキサス・プロジェクト1、2号機、セコヤー1、2号機の5基については測定誤差を修正すること、Aクリントン発電所とアーカンソー・ニュークリア・ワン2号機は高圧タービンや復水ポンプ、モーター、発電機、変圧器などのバランス・オブ・プラント(BOP)を大掛かりに改修すること――によって原子炉の出力を安全に増強(power uprate)することができると判断した。 なお、NRCは2001年だけでも22基の原子力発電所で111万1,000kW分の出力増強を承認しており、今後5年間に計46件(熱出力で487万kW、電気出力では160万kW)の出力増強の審査を行う見込み。 FPL、シーブルック1号機を買収へFPLグループは4月15日、シーブルック1号機(PWR、120万kW)の88.2%の株式を8億3,660万ドルで落札した。内訳は、廃炉措置基金を含めた原子炉本体が7億4,910万j、燃料費が6,190万j。建設途中でキャンセルされた同2号機の機器代金2,560万jも含まれている。 シーブルック1号機の買収が完了するまでには、米原子力規制委員会(NRC)をはじめとした関係当局の承認が必要。FPLグループは今年末までに買収を完了したいとしている。 シーブルック1号機は、ノースイースト・ユーティリティーズ(NU)社の子会社であるノース・アトランティック・エナジー社(株式の35.98%所有)とコネチカット・ライト&パワー社(同4.06%)をはじめとする計10社が共同出資している。 TVA、ブラウンズフェリー1号機の運転再開を決定テネシー峡谷開発公社(TVA)は5月16日に理事会を開き、ブラウンズフェリー1号機(BWR、109万8,000kW)の運転再開を承認した。また、同2、3号機(BWR、各115万5,000kW)も含めた全3基の運転認可の20年延長を米原子力規制委員会(NRC)に申請することも決定した。承認された場合、1号機は2033年、2号機は2034年、3号機は2036年まで運転することができる。 ブラウンズフェリー1号機の運転再開プロジェクトは、20%の出力増強も含めて17億〜18億jかかると見積もられており、2007年5月の運転開始を目標としている。なお、TVAは2004から2005年にかけて、9,900万jかけ同2、3号機の定格出力をそれぞれ12万kW増強する計画。 ブラウンズフェリー発電所は1984~1985年にかけて、管理や運転上の問題から全3基の運転を停止した。その後、同2号機は1991年、同3号機は1995年にそれぞれ運転を再開した。 [カナダ]オンタリオ州で電力市場の完全自由化がスタート オンタリオ州は、2002年5月1日午前1時、同州の電力市場(卸市場、小売市場)の自由化を開始した。開始時点の市場参加者数は配電事業者(LDC)93社、産業用需要家89社、発電事業者19社、卸売業者34社、送電事業者4社。 卸電力市場(スポット市場、運転余剰調達市場、送電権市場等がある)は独立電力市場運用機関(IMO)により運営され、スポット市場では5分毎に市場決済価格が決定される。自由化開始直後の決済価格は2.54カナダセント/kWhで、最初の1時間平均価格は2.3セント/kWh、1日平均では2.8セント/kWhであった。 需要家は今後、事業者を変更せずに今までの規制料金に代わってスポット価格に基づく料金を支払うか、固定価格を提供する事業者と長期契約を結び市場価格に影響されない料金を支払うかのどちらかを選択することになる。 同州では99年4月に発効したエネルギー競争法にしたがい州内電気事業の自由化が進められている。州政府は当初、電力市場の開放を2000年11月に予定していたが、新規独立電気事業者向けの小売システムの立上げ準備などに手間取り、1年半遅れの開始となった。 エネルギー競争法は、州営電力会社の旧オンタリオ・ハイドロ(OH)社から発電部門を引き継いだオンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社に対して、2010年までに市場占有率を州内全需要量の35%以下に減らすことを求めている。このため、OPG社は2001年5月、同社のブルース発電所(A:1〜4号機 各CANDU、90.4万kW:休止中/B:5〜8号機 各CANDU、84.0万kW:運転中)をブルース・パワー(BP)社に対してリースする契約を締結した。リース期間は2018年まで(オプションで更に25年間延長可能)で、総額はおよそ32億カナダドル。BP社はブルース発電所で発電した電力を、市場開放までの移行措置としてOPG社に供給する仮契約を結んでいるが、今後は州内電力市場で販売する。 電力市場の完全自由化に先立ち、BP社の最高経営責任者(CEO)のハウソーネ氏は、4月30日に行われたオンタリオ州電力再構築会議での講演の中で、電力市場の完全自由化により同州の電気料金は値下がりすることが予測されるが、同社は今後も積極的に投資を進め、市場での競争力を確保することを明らかにしている。具体的には、今後2〜3年間で、4億カナダドルを投入してブルースB発電所のアップグレードを行うほか、発電の安全性と信頼性の向上のためのタービン交換に4億カナダドル、そしてブルースA発電所の原子炉2基(3、4号機)の2003年夏の運転再開に向けて4億カナダドルを投資するとしている。OPG社との発電所リース契約の初期費用と期間中のリース料金の合計6億2,500万カナダドルを含めると、同社が営業開始から4年間に行う投資は約18億カナダドルに達する。 [英 国]政府、エネルギー政策作成に着手 英国政府は5月14日、原子力発電の将来も含めたエネルギー政策の作成に着手した。内閣府のパフォーマンス&イノベーション部(PIU)の提言をタタキ台に、関係省庁からのメンバーで構成されるチームが年内にエネルギー白書をまとめる。PIUは2月14日に報告書を発表し、再生可能エネルギーと省エネの拡大の重要性を強調する一方で、原子力発電オプションの堅持を指摘していた。 ベケット環境・食糧・農村相は、持続可能な発展とエネルギー・セキュリティを柱に、原子力も含めて脱CO2社会に移行しなければならないとしている。 王立学会WG、放射性廃棄物対策で政府の迅速な対応を提言王立学会の放射性廃棄物管理に関するワーキング・グループ(WG)は4月、あらゆる種類の放射性廃棄物に関する措置を早急に講じるよう政府に求める報告書を発表した。"Developing UK policy for the management of radioactive waste"と題する報告書は、環境・食糧・農村省(DEFRA)の諮問に対して提出されたもの。 同WGの主査であるJ.ボールトン教授は、「既存の放射性廃棄物の妥当な長期管理方式が見つかるまで、新規原子力発電所の建設に関する決定を待つ必要はない。しかしながら、新規原子力発電所の建設にあたっては、例外なく、そこから発生する廃棄物の短・長期処分のための適切な方策を講じておく必要がある」と述べ、放射性廃棄物対策が緊急の課題であるとの認識を示した。 同報告書は、原子力産業界と政府は原子力に対する反対運動への対応に忙殺されており、廃棄物管理技術向上の基礎となる継続的な技術開発は不十分だったと指摘。また、放射性廃棄物管理についての協議・議論を運営し、政策を策定する機関に対する信頼が構築されない限り国民の信頼を得ることはできないとの見解を示している。 また、DEFRAがまとめた報告書("Managing Radioactive Waste Safety")の中で言及されている第三者的なピアレビューを行う独立した放射性廃棄物管理委員会の設立を支持している。さらに放射性廃棄物管理政策を実施するため、委員会とは別の廃棄物管理実施機関の設立を勧告している。そして、現在のスケジュールでは2007年に廃棄物管理政策を具体化することになっているが、選挙結果によって中断されないようにしなければならないとしている。 [フランス]シラク大統領が再選 4月21日と5月5日の2回にわたり行われた大統領選挙の結果、現職のシラク大統領(共和国連合:RPR)が対立候補である極右政党の国民戦線(FN)のルペン党首を破り、再選を果たした。当初の予想では、シラク大統領とジョスパン首相(社会党)が2回目の決選投票で対決するものと見られていた。しかし、治安悪化や移民問題が争点に浮上したことから、移民対策強化などを訴えるルペン氏の支持が急上昇し、同氏がジョスパン氏を破り、決選投票に進むという予想外の展開となった。第1回目の主な得票率は、シラク氏が19.88%、ルペン氏が16.86%、ジョスパン氏が16.18%、フランス民主連合(UDF)のバイル氏が6.84%、労働者の戦いのラギエ氏が5.72%、市民運動のシュベヌマン氏が5.33%、共産党のマメール氏が5.25%だった。投票率は過去最低の72%だった。ジョスパン氏は初回の投票後、大統領選後の辞任を表明し、政界を引退する意向を示した。 決選投票では、主な政党が極右勢力の阻止を目的にシラク陣営を支持したため、シラク大統領が得票率82%の大差で再選を決めた。投票率は80%。シラク大統領は5月6日、ジョスパン首相の辞任を受理し、新首相に上院議員で自由民主党(DL)の副党首であるラファラン氏を指名した。翌7日には、大統領側近や民間人を主体とする27人の新閣僚が発表された。環境大臣には、共和国連合(RPR)のバシュロ氏が就任した。同氏はロワール地域のアンジェル選出の国民議会議員で、薬剤師の資格をもつ原子力推進派。 新政権は今後、大統領選の一大争点となった治安問題に取り組むとともに、6月9、16両日に実施される国民議会(下院)選挙にむけ、体制固めに入った。原子力問題は選挙の争点に含まれていないが、開発中の欧州加圧水型炉(EPR)の発注は次期政権次第と見られている。選挙は5月20日に告示された。 [ドイツ]改正原子力法が施行 段階的な原子力発電所の閉鎖などを盛り込んだ改正原子力法案は4月26日、連邦官報に公布され、翌27日に施行された。この法案は、昨年6月の連立政府と大手電力との正式署名を受けて作成され、同12月14日に連邦議会(下院)、今年2月1日に連邦参議院(上院)を通過した。法案は、原子力発電所の運転期間を32年とし総発電電力量に上限を設けること、2005年7月以降は使用済み燃料の再処理を禁止し直接処分に限ること、各発電所サイト内での放射性廃棄物の中間貯蔵を義務付けることなどを盛り込んでいる。 緑の党のトリッティン環境大臣は、脱原子力法がチェルノブイリ事故16周年の日に成立したのは象徴的とも言えるとのコメントを発表し、今年9月の総選挙をひかえ脱原子力政策が前進したことを評価した。一方の産業界は、同法はあくまで政府の介入から原子力発電所の運転継続を守るための妥協であり、経済性や地球温暖化防止の観点からは誤った政策であるとの姿勢を崩していない。 次回の総選挙で、再選をめざすシュレーダー首相(社会民主党)に対抗するキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のシュトイバー候補(CSU、バイエルン州首相)は、同法が及ぼす長期的な影響について懸念を示し、政権奪回の際は再度、法改正を行う意向を表明している。 [イタリア]産業大臣、原子力の再検討を明示 2001年5月の総選挙で誕生した中道右派のベルルスコーニ(「自由の家」党首)政権が、原子力発電所の凍結を再検討する動きを見せている。マルツァノ産業大臣によると、策定中の新しいエネルギー法の中に、同国での原子力利用を再検討する必要性が盛り込まれる見通し。この法案のベースとなる政府委員会による報告書はすでに4月、議会でも承認されており、法案策定は現在、最終段階にある。 同報告書は、議会の経済活動等委員会がとりまとめたもので、同委員会の委員長を務めるタバッキ氏は、隣国のフランスから原子力による電力を輸入しているイタリアが、原子力凍結を再検討することは驚くことではないとしている。同国の経済紙が報じるところによると、当面は国内関係企業に対して原子力の研究開発や国外での原子力事業――とくにスロベニアやクロアチア、チェコ市場への進出を促進する内容となる見込み。マルツァノ大臣は、エネルギー源としての原子力発電の重要性を再認識するのが先決で、政府が原子力発電所の建設を提案する段階ではないと慎重な姿勢を示している。 イタリアでは、原子力反対運動やチェルノブイリ事故の影響を受け、87年に原子力凍結が決まり、90年までに全4基が閉鎖されたため、現在運転中の原子力発電所はない。92年には新規原子力発電所建設の凍結期間が終わり、政府やイタリア電力公社(ENEL)が原子力発電計画を検討する動きもあったが、いままでのところ具体化には至らなかった。 [ロシア]海上浮揚式原子力発電所が着工 共産党機関紙プラウダによれば、セベロドビンスクで5月20日、海上浮揚式原子力発電所の建設作業が開始された。セベロドビンスクはロシア北部白海沿岸アルハンゲリ州の中心都市アルハンゲリスク市の西約50kmに位置する軍港で、原子力潜水艦の建造に携わっている「北部機械製造企業」の造船所が立地している。 ロシア原子力省(MINATOM)によれは、海上浮揚式発電所は電気出力6万kW級の熱電併給炉で、北部機械製造企業のドックで建設される。建設費は1億〜1億2,000万米ドルの見込みで、資金調達次第だが、概ね着工から40カ月で完成の予定。完成後は北部機械製造企業のほか、セベロドビンスク市全体に電力と熱を供給する。 MINATOMのアダモフ大臣(当時)は2001年3月13日、アルハンゲリ州政府代表との会合の場で、海上浮揚式原子力発電所を建造する計画を発表。同年12月18日にはMINATOMが、原子力関係投資事業の実施財源から、発電所建設のための予算として、2002年に同州へ1億3,000万ルーブルを割り当てることを決定している。 (原産マンスリー2001年4/5月号参照) 原子力砕氷船、極地に電力供給原子力砕氷船「ソビエツキー・ソユーズ(ソビエト・ユニオン)」が4月上旬、バレンツ海沿岸のムルマンスクで海上発電所として電力供給を開始した。これは、ロシアが進めている海上浮揚式原子力発電所建設計画へのデータ提供を目的として実験的に行われたもので、発電した電力は同地域で原子力砕氷船の修理や放射性廃棄物の処理などを手がけている国営企業「アトムフロート」の保守・技術施設に供給される。 実験に使われた「ソビエツキー・ソユーズ」は1992年9月に就航したロシアで6隻目の原子力砕氷船で、排水量は2万3,700トン、熱出力17万1,000kWの舶用炉(KLT-40)を2基搭載している。ロシアでは8隻の原子力砕氷船と1隻の原子力貨物(ラッシュコンテナ)船が建造されているが、1959年に就航した最初の原子力砕氷船「レーニン」は1989年に退役。現在は7隻の原子力砕氷船が就航している。(4月上旬) [ウクライナ]チェルノブイリ発電所の廃止措置認可 2000年12月に閉鎖されたチェルノブイリ発電所(各 RBMK-1000、100万kW 4基:閉鎖)に対して、廃止措置の認可が発給された。廃止措置認可は1〜3号機と使用済み燃料貯蔵施設をはじめとした関連施設に対するもので、ウクライナ国家原子力規制委員会(SNRCU)とチェルノブイリ発電所自身によって準備された。 SNRCUは2000年12月にチェルノブイリ発電所閉鎖に伴い、国家原子力発電検査本部と環境・天然資源省原子力規制局を統合して発足した、他の政府機関から独立した原子力規制機関。チェルノブイリ発電所は2001年12月、ウクライナ国内の原子力発電所の運転・管理を行っている国営原子力発電会社エネルゴアトムから分離され、同発電所内の全ての原子力関連施設の管理に責任を持つ独立法人となっている。(4月上旬) チェルノブイリ発電所のシェルター計画が順調燃料エネルギー省のステインベルグ次官は4月25日の記者会見で、チェルノブイリ発電所(各 RBMK-1000、100万kW 4基、閉鎖)のシェルター実施計画(SIP)が、作業計画に僅かな遅延があるものの、ほぼ計画通りに進んでいると語った。 計画では現在、事故を起した4号機を隔離している既存の石棺を覆う新しいシェルターの建設が焦点になっているが、同次官によれば、作業内容については既に技術開発が進められており、新シェルターのフィージビリティスタディが完了し次第、建設が開始できる状態になっている。SIPの完了は2007年の予定。 ウクライナとG7は97年4月、86年に事故を起こしたチェルノブイリ4号機を覆っている石棺の安定化と石棺内部の燃料含有物質(FCM)の除去を進めることに合意し、SIPを取りまとめた。資金については総額で7億6,800万ドルが必要であると試算されており、G7やEUを中心とした各国からの拠出によりチェルノブイリ石棺基金(CSF)が設立され、欧州復興開発銀行(EBRD)が管理している。 [ベラルーシ−ロシア]ロシアとベラルーシ、共同で原子力発電所建設を計画 ベラルーシのルカシェンコ大統領は5月中旬、ロシアでの原子力発電所建設に参加する意向であることを明らかにした。自国内での原子力発電所建設の第一歩とする考え。 ルカシェンコ大統領はこの共同建設計画について、既存のスモレンスク発電所(RBMK-1000、100万kW 3基)サイトでの建設が有力であるとし、現在、経済やエネルギー産業関係の政府の省庁で詳細についての検討が進められているとしている。 共同建設した発電所から得られる電力は、資金分担比率に応じた分がベラルーシ側に供給されることになる。ベラルーシ政府では、スモレンスク発電所、クルスク発電所(RBMK-1000、100万kW 4基)、カリーニン発電所(VVER-1000、100万kW 2基)の3つのサイト候補から、どこに新設するかを決めるための予備的な調査を行っている。 ベラルーシ政府はまた、自国内への新規原子力発電所建設の可能性についても、積極的に検討を行っている。同国での原子力発電所建設は、1991年のソ連からの独立の際に検討されたが、その後、財政と行政両面の問題から決定が延期されている。 |