[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年12月中旬〜2004年1月中旬)

[米 国]

TVAとドミニオン社、ブラウンズフェリーとミルストンの運転認可更新を申請

 テネシー峡谷開発公社(TVA)は1月8日、ブラウンズフェリー原子力発電所(BWR、1号機:109万8000kW、2、3号機:115万5000kW×2基)の3基のユニットの20年間の運転認可更新を米原子力規制委員会(NRC)に申請。また、1月22日にはドミニオン社がミルストン2号機(PWR、87万3000kW)と同3号機(PWR、114万8000kW)の運転認可更新をNRCに申請した。

TVA社のブラウンズフェリー1号機は、ケーブル火災のため、1985年3月以来、運転休止中だが、TVAは2002年5月、将来の電力需要増をにらみブラウンズフェリー1号機の運転再開を表明。難燃性ケーブルの採用、ケーブル貫通部への防火シールの施工、延焼防止塗料の塗布など一連の防火対策をはじめ、運転再開のため総額18億ドルを投資して2007年の運転再開をめざしている。

今回、申請された運転認可更新が認可されれば、ブラウンズフェリー1号機が2033年8月、2号機が2024年7月、3号機が2036年8月までの運転継続が可能になる。ブラウンズフェリー原子力発電所の運転認可更新の審査には2年半程度かかる見通しである。また、TVAはブラウンズフェリー原子力発電所の熱出力の増強(3基の出力を125万kWに増強)も検討している模様である。

 一方、ドミニオン社のミルストン1、2号機は、運転認可更新により、それぞれ2035年12月、2045年4月までの運転継続が可能となる。なお、ミルストン1号機(BWR、66万kW)は、経済性を理由に1998年7月に早期閉鎖されている。米原子力法では20年間の運転認可の更新(運転期間延長)が認められている。米国の原子力発電所は、40年間の運転期間を前提としているため、40年間を経過した時点ですでに減価償却が完了しており、運転認可更新によって経済性(競争力)が大幅に向上する。

 このため、米国では2000年3月のカルバートクリフス原子力発電所(PWR、88万kW×2基)を皮切りに運転認可更新が相次いでおり、2004年1月31日現在、全部で23基(合計出力: 2158万9000kW)に運転認可更新が認められており、17基(同: 1597万8000kW )の運転認可更新申請が審査中。さらに、18基(同:1681万7000kW)が運転認可更新の申請が見込まれている(参考資料1)

 なお、TVAは、正式な決定は下していないが、将来の電力需要増見越して、1995年と1988年に建設工事が中断されたベルフォンテ原子力発電所(PWR、126万kW×2基、建設工事進捗率は1号機が88%、2号機が58%)の建設再開を検討している。

ベルフォンテ・プロジェクトのパートナー企業としては、エクセロン社、エンタジー社およびドミニオン社の名前があがっているほか、ゼネラル・エレクトリック社(GE)も同サイトへの改良型沸騰水型炉(ABWR)の建設の可能性についてコスト評価を実施している模様である。TVAは、ベルフォンテ1、2号機について、それぞれ2011年10月、2014年10月までの建設認可の延長を申請(現行の認可は1号機が2001年10月、2号機が2004年10月が期限)。2003年1月には、NRCが同1、2号機の建設認可延長に伴う環境影響評価について、「建設認可の延長が重大な環境影響を及ぼすことはない」とする結果を公表している。(1月8日)

カトーバ1号機にMOX燃料を試験装荷へ

デューク・エナジー社はこのほど、MOX燃料の試験装荷をカトーバ1号機で実施することを明らかにした。核兵器の解体にともなって発生する余剰プルトニウムの処分プログラムの一環として行われる。

同社は当初、カトーバ発電所(PWR、120万5000kW2基)とマクガイア発電所(PWR、122万kW2基)にMOX燃料の試験集合体を装荷する意向を表明。昨年2月27日には原子力規制委員会(NRC)に対して、MOX燃料装荷のための運転認可変更を申請していた。しかし、その後、カトーバ1号機だけに試験装荷することを決め、9月23日にNRCに変更を申し入れた。NRCは12月2日に同社の要請を受けいれた。試験燃料集合体は、仏COGEMA社のカダラシュ工場で製造される。

デューク・エナジー社は、順調にいけば2004年末までには運転認可の変更を取得できるとみており、2005年春に予定されている燃料交換停止時に試験集合体4体を装荷したい考え。カトーバ発電所は1サイクル18ヵ月で運転が行われており、2〜3サイクルの期間にわたって照射を行い、各サイクルの最後でデータの収集などが行われる。

同社は、試験照射が順調にいけば、MOX燃料の装荷量を大幅に増やす意向を示しており、最終的にはカトーバ2号機とマクガイア発電所まで装荷が拡大されるとみられている。デューク・エナジー社は、炉心に占めるMOX燃料の割合について、最初は取り替え燃料の20%程度に抑えたあと、最終的には40%程度まで増やす意向を示している。

実施主体であるエネルギー省(DOE)との契約にしたがい、デューク・エナジー、COGEMA、ストーン&ウェブスターで構成されたコンソーシアムが、MOX燃料加工施設の設計、建設、運転を、DOEのサバンナリバー・サイトで行うことになっている。

核兵器の解体にともなって発生した軍事用の余剰プルトニウムの処分については、ロシアのプーチン大統領と米国のクリントン大統領(当時)との間で2000年に合意が成立し、それぞれ34トンを処分することになった。ロシア側がプルトニウムをMOX燃料に加工して処分する方針を示す一方で、米国は当初、MOX燃料での処分とガラス固化して貯蔵する方法を並行して進める方針を打ち出した。しかし、2002年1月、エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は、MOX燃料オプションに一本化することを決定した。

米国では、1962年から72年にかけて運転されたサクストン炉(PWR、熱出力2万3500kW)にMOX燃料が装荷されたことがある。この原子炉は、発電・研究炉として、現在の原子力発電所に採用されている多くの技術を開発するために利用された。また、民間ベースで認可を取得した原子炉として、初めてMOX燃料を使用した。

[カナダ]

ブルースパワー社、5年ぶりにブルースA3号機を運転再開

カナダのブルースパワー社は1月8日、1998年4月から運転休止中だったブルース原子力発電所3号機(CANDU、79万kW)の運転を5年ぶりに再開したと発表した。ブルースA3号機が運転再開したことで、ブルースパワー社はオンタリオ州の電力の約20%を供給することになる。

 ブルース原子力発電所(CANDU、A1、2号機:84万8000kW×2基、A3、4号機:79万kW×2基、B5〜8号機:79万kW×4基)は、1990年代にパフォーマンス(設備利用率)が大幅に落込んだ。一方、オンタリオ州では1998年10月、電気事業再編をめざした「エネルギー競争法」が成立し、経済性の低い電源は厳しい対応を迫られた。このため、当時、ブルース原子力発電所を所有・運転していたオンタリオ・ハイドロ社(現オンタリオ・パワー・ジェネレーション社:OPG)は、1997年8月に同社の原子力発電パフォーマンス評価グループ(NPAG)がとりまとめた「原子力発電設備効率化計画」(NAOP)に基づき、比較的、パフォーマンスが良好だったブルースB5〜8号機を残し、ブルースA4号機を1998年3月、A3号機を1998年4月にそれぞれ運転休止した(ブルースA1号機は1996年10月、A2号機は1995年10月から運転休止中)。

 オンタリオ・パワー・ジェネレーション社とのリース契約によってブルース原子力発電所の運転を引き継いだブルースパワー社は、2001年からブルースA3、4号機の運転再開に向けた作業に着手。2002年9月にはカナダ原子力安全委員会(CNSC)に両ユニットの運転再開認可を申請した。その後、2003年4月には、作業員の訓練や大規模配管破断による冷却材喪失事故の解析など55項目に上る条件付ながら、両ユニットの運転再開を認める改定認可がカナダ原子力安全委員会から発給され、2003年10月にはブルースA4号機が5年ぶりに運転を再開していた。

 なお、現在、ブルースパワー社は運転休止中の残るブルースA1、2号機の今後の計画に関する日本原子力産業会議の照会に対して、「これまでブルースA3、4号機の運転再開に向けて全ての努力を注いできており、ブルースA1、A2号機の運転再開(あるいはデコミッショニング)といった将来計画については、何ら分析・評価を行っていない」と回答している。(1月8日)

[フィンランド]

テオリスーデン・ボイマ社、オルキルオト3号機の建設認可を申請

 テオリスーデン・ボイマ社(TVO)は1月8日、フィンランドで5基目となるオルキルオト3号機(PWR、160万kW)の建設認可を政府に申請。また、放射線・原子力安全機関(STUK)に対し、欧州加圧水型炉 (EPR)の詳細安全報告書を提出した。TVOは2003年10月、建設サイトにオルキルオトを選定、採用する炉型については同12月、EPRに決定し、フラマトムANP社とシーメンス社との間で正式な建設契約を締結していた。契約総額は約30億ユーロ。

 EPRは、安全性・経済性の一層の向上をはかりながら、運転サイクルの長期化(18ヶ月〜24ヶ月)や燃料交換期間(17日程度)の短縮化による設備利用率の大幅な向上(目標87%)をめざしている。熱効率についても、約37%を達成し、1、2号機(BWR、87万kW×2基)に比べ、約4%向上しているほか、プラント長寿命化により設計寿命が60年とされている。

 TVOの社長・最高経営責任者のパーボラ氏は、3号機増設は、電力需要の増加に対応する追加電源としての役目に加え、2008年〜2012年に二酸化炭素排出量を1990年レベルまで削減するとした京都議定書の目標達成に不可欠であるとの考えを示している。TVOは今後、2005年初めにも建設認可を取得して着工し、2009年の運転開始をめざす。(1月8日)

[スウェーデン]

水力発電の低迷で電力輸入が急増

 温暖な気候が続くスウェーデンでは、近年水力発電電力量が激減し、電力輸入が増加傾向にある。2001年に過去最高の約786億kWhを発電したものの、2002年は約660億kWh、2003年は約530億kWhまで減少した。こうした影響でスウェーデンの2003年の電力輸入量は約250億kWh(2002年は約202億kWh)へ増加。一方、電力輸出量は約110億kWh(2002年は約148億kWh)へ減少し、2003年は過去最高の約140億kWhの輸入超過(2002年は約54億kWh)となった。

 これに対し、2003年の原子力発電電力量は約650億kWhで、総発電電力量に占める原子力の割合は49.2%だった。政府は現在、バーセベック1号機(1999年閉鎖)に続き、2号機も2004年末に閉鎖することを計画しているが、年間約40億kWhを発電している2号機の閉鎖を懸念する声があがっている。

 スウェーデン議会は2002年6月、原子力発電所の段階的廃止に期限を設定せず、ドイツと同様に原子力産業界との合意を模索する内容を盛り込んだエネルギー政策法案を可決。これに従い政府は同年夏、スウェーデンの国営鉄道当局のトップを務めるB.ビュールント氏を調整役に任命し、同氏が電気事業者と原子力発電所閉鎖の具体的なスケジュールの交渉を行っている。

 ビュールント氏はこのほど、1月22日付『ダーゲンス・ニーヘーテル』紙に寄稿。その中で、「原子力発電所の段階的廃止は可能かもしれないが、政府が計画するように省エネ/風力/バイオマス/電力輸入などで、原子力発電を代替することは到底不可能」との見解を示した。そして脱原子力政策が、スウェーデンの主力産業である鉄鋼・紙・パルプなどの電力集約型産業に与える影響に懸念を表明。脱原子力政策を推進して失われる原子力発電電力量を代替するには、政府の温暖化防止対策を見直し、大規模ガス火力を導入するしかないと指摘した。

 スウェーデンの世論調査機関TEMOが2003年11月に、スウェーデン原子力安全訓練センター(KSU)の委託で1000人を対象に実施した調査によると、環境対策での最重要課題について、74%が「二酸化炭素排出量の削減」、15%が「河川環境の維持」と回答している。ちなみに「原子力発電所の段階的閉鎖が環境面で貢献する」と回答した人の割合はわずか7%だった。

 また今後の原子力政策について、「11基の原子力発電所の段階的閉鎖を支持する」と回答した人は14%にとどまった。これに対し、33%が「運転を継続し、必要とあれば新規炉で代替する」、33%が「安全性および経済性に問題がない限り運転を継続する」、18%が「原子力発電開発を推進する」と回答。8割以上が原子力発電を支持している現状が浮き彫りになった。

 ビュールント氏は、4月末に正式な報告書を政府に提出することになっている。(1月)

スウェーデンの発電電力量の推移

(x億kWh)

93年94年95年96年97年98年99年00年01年02年03年
総発電電力量14121385144113661453154715101419157814341320
水 力736583673512682738709778786660530
原子力588701670714669705702548692656650
火 力8810198140100101958896112不明
風 力0000234456不明
電力消費量14061387142414271426144014351466150514871460
電力輸入量
(送電端)
-63-1761-27-107-7547-7354140

*マイナスは電力輸出量(送電端)
**2003年は暫定値

日本原子力産業会議調べ


[ロ シ ア]

原子力発電電力量が過去最高を記録

 ロシアの2003年の原子力発電電力量は1486億kWhで、前年の1412億kWhを上回る過去最高を記録した。総発電電力量に占める原子力の割合は16.5%(2002年は15.7%)だった。また、平均設備利用率は76.3%で、前年の71.7%より4.6ポイント上昇した。

 ロシアの原子力発電事業者であるロスエネルゴアトム社は、発電効率の向上により120万kW級の発電所1基分に相当する電力が発電できたと指摘している。

 またロスエネルゴアトム社は2003年に、レニングラード1号機、ビリビノ1号機、コラ2号機など、第一世代のVVER-440型炉のバックフィット作業にも着手。すでに着手していたコラ1号機は作業を完了し、5年の運転期間延長が認められている。

 2003年12月末には、すでに閉鎖されているノボボロネジ1,2号機の使用済み燃料が回収されマヤクにある再処理施設に搬入された。1号機(出力21万kW)は1988年に、2号機(出力36万5000kW)は1990年に閉鎖されている。

 なお原子力省(MINATOM)は1月初め、レニングラード発電所の増設計画を発表した。採用されるのは最新型のVVER-1500型炉(出力150万kW)で、ロスエネルゴアトム社は2007年までに設計作業を終え、2012年までに着工したい意向を示している。(1月)

[ハンガリー]

パクシュ2号機の運転停止の影響で発電電力量が減少

 パクシュ原子力発電所の2003年の原子力発電電力量は110億1300万kWh。定期検査中に発生した燃料損傷事故により、2号機が長期に渡って運転を停止している影響で、前年の発電量である139億5300万kWhを大幅に下回った。総発電電力量に占める原子力の割合は32.7%と、前年の39.4%から下がったが、原子力は依然としてハンガリーの電力の3分の1を供給する基幹電源である。

 パクシュ発電所はPWR4基(いずれもVVER-440)で構成されたハンガリー唯一の原子力発電所。2003年の設備利用率は、1号機:80.4%、2号機:23.6%、3号機:74.8%、4号機:90.7%で、4基全体の設備利用率は67.4%(2002年は85.4%)だった。

 2号機の燃料損傷事故は、定期検査中の2003年4月10日に発生。洗浄のために炉心から取り出した燃料集合体が洗浄タンク内で過熱し、放射性物質が漏洩するとともに、燃料集合体が損傷した。冷却槽での燃料集合体の冷却が不十分だったのが原因と考えられており、INESで『レベル3』と評価されている。

 2号機の運転再開の見通しは立っていない。パクシュ発電所は2003年9月に、損傷した燃料集合体の撤去作業でロシアの燃料製造会社TVELと契約。同12月にはTVEL社が具体的な作業実施計画をパクシュ発電所に提出した。今後パクシュ発電所とTVEL社は、2004年内の撤去作業実施を目指し、ハンガリー原子力庁(HAEA)に工事認可を申請する予定である。

[米国−ロシア]

「メガトンからメガワット計画」が10周年

 米国とロシアが進めているロシアの余剰核弾頭(8000基)の高濃縮ウラン(HEU)を低濃縮ウラン(LEU)に希釈・加工して原子力発電の核燃料として利用する「メガトンからメガワット計画」が1月14日に10周年を迎えた。

 「メガトンからメガワット計画」は、1993年の米国、ロシア両国の政府間で取交わされた核弾頭解体(高濃縮ウランで500トン相当)に関する合意に基づき、1994年1月、米国のUSEC社がロシアのテクスナブエクスポルト社(TENEX)から低濃縮ウランを商業ベースで購入する契約(総額120億ドル、80億ドルが濃縮役務費、40億ドルが天然ウラン代金)が取交わされた。その後、1995年6月にロシアから最初の低濃縮ウランが米国に送られ、2004年1月現在、201.5トン(8059基の核弾頭に相当、30億ドル相当)の高濃縮ウランが5932.7トンの低濃縮ウランに希釈されており、2013年の計画完了までに合計2万基の核弾頭が解体・希釈・核燃料加工される予定である。

なお、現在、USEC社の濃縮ウラン販売量の約50%が同計画によるもので、米国で運転中の103基の原子力発電所のうち100基に高濃縮ウランを希釈・加工された核燃料が装荷されている。

 「メガトンからメガワット計画」では、まず、ロシアの戦略核・戦術核の余剰核弾頭が解体され、その高濃縮ウラン(金属ウラン塊)がセベルスクのシベリア化学コンビナート(SChE、旧トムスク7)とオゼルスク近郊のマヤク生産合同(MPA)で金属削屑に加工され、高濃縮ウラン酸化物に転換される。

 高濃縮ウラン酸化物は、シベリア化学コンビナートとクラスノヤルスク電気化学工場(ECP)で高濃縮ウラン六フッ化ウランに転換される。

 その後、両施設とエカテリンベルク近郊のウラル電気化学工場(UEIP)で低濃縮ウランと混合され、濃縮度5%未満の低濃縮ウランに希釈される。

 希釈された低濃縮ウランは、これら3つの施設で2.5トン・シリンダーに封入され、サンクトペテルブルクからUSEC社のパデューカ濃縮工場とポーツマス濃縮工場(現在はポーツマスのみ)に向けて出荷される。

 USEC社では、納品された低濃縮ウランに再調整を行い、燃料加工メーカー(グローバル・ニュークリア社、フラマトムANP社およびウェスチングハウス社)に出荷。ここで最終的に核燃料に成型加工される。(1月14日)

【終わり】


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