[JAIF] プレスリリース -2003年4月10日 |
世界の原子力発電開発の動向
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日本原子力産業会議は毎年、世界の原子力発電所の現状を「世界の原子力発電開発の動向」としてとりまとめている。今回の調査は、当会議が世界28カ国・地域の65の電力会社等から得たアンケートの回答などに基づき、2002年末現在のデータを集計したものである。 |
2002年末現在、世界で運転中の原子力発電所は、新たに8基が営業運転を開始したものの、4基が閉鎖されたため前年より4基増の436基、合計出力は3億7,372万7,000kW(前回:432基・3億6,628万6,000kW)となった。建設中は39基・3,469万6,000kW(同43基・4,127万1,000kW)、計画中は27基・2,536万kW(同35基・2,660万4,000kW)となった。運転中の基数・合計出力はそれぞれ、これまでの最高だった96年の434基と2001年の3億6,628万6,000kWを上回り、過去最高となった。
4カ国で8基・820万kWが営業運転開始2002年に新たに営業運転を開始した原子力発電所は、日本の女川3号機(BWR、82万5,000kW)、フランスのシボー1、2号機(PWR、各151万6,000kW)、中国の秦山U期1号機(PWR、64万2,000kW)と同V期1号機(CANDU、70万kW)、嶺澳1号機(PWR、99万kW)、韓国の霊光5、6号機(PWR、各100万kW)の合計8基。営業運転開始基数は、過去10年では93年の10基には及ばなかったものの、2000年の8基と並んだ。また、発電所の大型化に伴い8基の合計出力は818万9,000kWに達した。
フランスのシボー1、2号機はすでに送電を行っていたが、安全当局の最終的な運転認可を受けて営業運転を開始した。これにより、西欧で建設・計画中の原子力発電所は1基もなくなった。一方で、北欧での新規計画として、フィンランド議会が2002年5月に建設を承認した同国5基目の発電所については、炉型と出力(100〜160万kW)が2003年中に決まるとみられている(本調査では、炉型と出力が決まり次第、正式に計画中に分類される)。
8基のうち、フランス(2基)以外は日本(1基)、中国(3基)、韓国(2基)とすべてアジアに集中しており、アジア地域における活発な原子力開発状況が改めて浮き彫りになった。中でも、中国は第9次5カ年計画(1996〜2000年)に盛り込まれた8基の建設が順調に進んでおり、2002年末までに3基が営業運転を開始した。これにより運転中の原子力発電所は基数・出力ともほぼ2倍の6基・460万kWとなり、設備容量別でみた順位が世界20位から一挙に14位へ上がった。また、建設中の5基のうち、嶺澳2号機は2003年1月に営業運転を開始(本調査では「建設中」に分類)、残り4基も2005年までにすべて完成する見通し。
韓国では、100万kWの国産PWRである韓国標準型炉(KSNP)の建設計画が順調に進んでいる。2002年には、KSNPとしてそれぞれ3、4基目にあたる霊光5、6号機が運転を開始した。計画中の4基のKSNP(新古里1、2号機と新月城1、2号機)も発注が行われた。また日本では、東北電力の女川3号機が営業運転を開始したほか、初の改良型PWRとなる日本原子力発電の敦賀3、4号機が計画入りを果たした。
インド−5基が着工、FBRも計画入りアジア地域では、インドが積極的な原子力開発を展開している状況が改めて確認された。2002年には、インド初の100万kW級原子力発電所となるクダンクラム1、2号機(VVER=ロシア型PWR、各100万kW)をはじめ、カイガ3、4号機(PHWR、各22万kW)とラジャスタン5号機(同)の5基が相次いで着工したため、建設中は7基となった。ラジャスタン6号機(同)も2003年1月に着工した(本調査では「計画中」に分類)。建設中の設備容量は400万kW近くにのぼり、運転中を大きく上回っている。
また、インド原子力省(DAE)は、傘下のインディラガンジー原子力研究センター(IGCAR)に50万kWの高速増殖炉(PFBR)を建設する計画に着手した。PFBRは、運転中の実験炉(FBTR、1万3,000kW)に続く原型炉と位置付けられており、すでに掘削・土木工事が始まっている。2009年の運開をめざし、近く着工の見通し。
旧世代炉が閉鎖へ今回の調査で閉鎖を確認したのは、英国のブラッドウェル1、2号機(GCR、各12万9,000kW)とブルガリアのコズロドイ1、2号機(PWR、各44万kW)の4基で、いずれも第1世代から第2世代初期に属する原子炉。英国の両機は、英原子燃料会社(BNFL)が2000年5月に決定したマグノックス炉(GCR)の閉鎖計画に基づき閉鎖されたもの。GCRは1950年代〜60年代にかけて運転を開始した初期のガス炉で、BNFLは運転中の残り16基も順次閉鎖していく方針。
一方、ブルガリアのコズロドイ1、2号機は、同国の欧州連合(EU)加盟条件として両者の合意のもと閉鎖された。両機は、旧ソ連製軽水炉(PWR)のなかでも第1世代にあたるVVER-440(V230)型で、EU側は安全面での問題を理由に両機の閉鎖を求めていた。現在15カ国からなるEUは、中東欧諸国の市場経済化を受けて加盟国を拡大する方針を固めており、2004年に第1陣の10カ国が新規に加盟する予定。こうした動きに伴い、コズドロイ1、2号機以外にも、両機と同じ型の同3、4号機(同)やスロバキアのボフニチェ1、2号機(同)、チェルノブイリ発電所と同じ黒鉛減速炉(LWGR、ロシアの略称はRBMK)であるリトアニアのイグナリナ1、2号機(各150万kW)の早期閉鎖がEU加盟の条件にのぼっている。ただ、いずれも各国の主力となっている電力供給源であるため、代替電力の確保や経済的影響、廃炉資金などの問題を抱え、最終的な詰めが残されている。
なお、このほかロシアのオブニンスク発電所(LWGR、6,000kW)が2002年4月、48年近い運転を終え閉鎖された。同炉は1954年6月27日に営業運転を開始して以来、電力を供給する一方、後続炉の開発にあたってパイオニア的役割を果たした。サイトは、原子力開発の歴史博物館として生まれ変わる予定(同炉は出力が本調査の基準以下であるため、集計に含まれていない)。
チェコ2基が試運転段階に2002年に全出力運転を達成したのは、チェコのテメリン1号機(PWR、98万1,000kW)と中国の嶺澳2号機(PWR、99万kW)の2基。テメリン1号機は、2000年末の送電開始を経て、2002年1月に全出力運転を達成。同6月から1年半の予定で試運転に入った。同じく建設中の同2号機(同)も2002年5月の初臨界を経て同12月に送電を開始し、現在は試運転段階にある。最新式のVVER(ロシア型PWR)-1000型を採用した両機の起動にあたり、近隣諸国から反対の圧力があったが、EUの仲裁により安全性が保証された。両機は早ければそれぞれ2003年、2004年に営業運転を開始する予定。
営業運転開始 | 日本 | 女川3号機 (BWR、82万5,000kW) | 1月30日 |
フランス | シボー1号機(PWR、151万6,000kW) | 1月29日 | |
フランス | シボー2号機(同) | 4月23日 | |
中国 | 秦山II期1号機(PWR、64万2,000kW) | 4月15日 | |
中国 | 嶺澳1号機(PWR、99万kW) | 5月28日 | |
中国 | 秦山III期1号機(CANDU、70万kW) | 12月31日 | |
韓国 | 霊光5号機(PWR、100万kW) | 5月21日 | |
韓国 | 霊光6号機(同) | 12月24日 | |
全出力運転 | チェコ | テメリン1号機(PWR、98万1,000kW) | 1月11日 |
中国 | 嶺澳2号機(PWR、99万kW) | 10月24日 | |
送電開始 | チェコ | テメリン2号機(PWR、98万1,000kW) | 12月29日 |
着工 | インド | クダンクラム1号機(PWR、100万kW) | 3月31日 |
インド | クダンクラム2号機(同) | 7月4日 | |
インド | カイガ3号機(PHWR、22万kW) | 3月30日 | |
インド | カイガ4号機(同) | 5月10日 | |
インド | ラジャスタン5号機(PHWR、22万kW) | 9月18日 | |
発注 | インド | ラジャスタン6号機(PHWR、22万kW) | 4月12日 |
韓国 | 新古里1、2号機(PWR、各100万kW) | 8月 | |
韓国 | 新月城1、2号機(PWR、各100万kW) | 8月 | |
計画入り | 日本 | 敦賀3、4号機(APWR、各153万8,000kW) | 8月2日 |
インド | PFBR(FBR、50万kW) | ||
閉鎖 | 英国 | ブラッドウェル1、2号機(GCR、各12万9,000kW) | 3月31日 |
ブルガリア | コズロドイ1、2号機(PWR、各44万kW) | 12月31日 | |
ロシア | オブニンスク(LWGR、6,000kW)* | 4月30日 |
*)3万kW未満のため、集計外
運転中 | 建設中 | 計画中 | 合計 | ||||||
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国・地域 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | |
1 | 米国 | 10,199.8 | 103 | 10,199.8 | 103 | ||||
2 | フランス | 6,595.2 | 59 | 6,595.2 | 59 | ||||
3 | 日本 | 4,590.7 | 53 | 411.8 | 4 | 1031.5 | 8 | 6,034.0 | 65 |
4 | ロシア | 2,255.6 | 30 | 300.0 | 3 | 2,555.6 | 33 | ||
5 | ドイツ | 2,236.5 | 19 | 2,236.5 | 19 | ||||
6 | 韓国 | 1,571.6 | 18 | 200.0 | 2 | 680.0 | 6 | 2,451.6 | 26 |
7 | 英国 | 1,327.3 | 31 | 1,327.3 | 31 | ||||
8 | ウクライナ | 1,183.6 | 13 | 500.0 | 5 | 1,683.6 | 18 | ||
9 | カナダ | 1,061.5 | 14 | 1,061.5 | 14 | ||||
10 | スウェーデン | 982.6 | 11 | 982.6 | 11 | ||||
11 | スペイン | 787.6 | 9 | 787.6 | 9 | ||||
12 | ベルギー | 599.5 | 7 | 599.5 | 7 | ||||
13 | 台湾 | 514.4 | 6 | 270.0 | 2 | 784.4 | 8 | ||
14 | 中国 | 460.0 | 6 | 445.2 | 5 | 905.2 | 11 | ||
15 | スイス | 337.2 | 5 | 337.2 | 5 | ||||
16 | リトアニア | 300.0 | 2 | 300.0 | 2 | ||||
17 | ブルガリア | 288.0 | 4 | 288.0 | 4 | ||||
18 | フィンランド | 276.0 | 4 | 276.0 | 4 | ||||
19 | インド | 272.0 | 14 | 374.0 | 7 | 72.0 | 2 | 718.0 | 23 |
20 | スロバキア | 264.0 | 6 | 88.0 | 2 | 352.0 | 8 | ||
21 | ブラジル | 200.7 | 2 | 130.9 | 1 | 331.6 | 3 | ||
22 | 南アフリカ | 193.0 | 2 | 193.0 | 2 | ||||
23 | ハンガリー | 186.6 | 4 | 186.6 | 4 | ||||
24 | チェコ | 176.0 | 4 | 196.2 | 2 | 372.2 | 6 | ||
25 | メキシコ | 136.4 | 2 | 136.4 | 2 | ||||
26 | アルゼンチン | 100.5 | 2 | 74.5 | 1 | 175.0 | 3 | ||
27 | スロベニア | 70.7 | 1 | 70.7 | 1 | ||||
28 | ルーマニア | 70.6 | 1 | 268.6 | 4 | 339.2 | 5 | ||
29 | オランダ | 48.1 | 1 | 48.1 | 1 | ||||
30 | パキスタン | 46.2 | 2 | 46.2 | 2 | ||||
31 | アルメニア | 40.8 | 1 | 40.8 | 1 | ||||
32 | イラン | 229.3 | 2 | 88.0 | 2 | 317.3 | 4 | ||
33 | 北朝鮮 | 200.0 | 2 | 200.0 | 2 | ||||
34 | カザフスタン | 192.0 | 3 | 192.0 | 3 | ||||
35 | エジプト | 187.2 | 2 | 187.2 | 2 | ||||
36 | イスラエル | 66.4 | 1 | 66.4 | 1 | ||||
合 計 ( )内は前年値 | 37,372.7 (36,628.6) | 436 (432) | 3,469.6 (4,127.1) | 39 (43) | 2,536.0 (2,660.4) | 27 (35) | 43,378.3 (43,416.1) | 502 (510) |
本件問合せ先: | (社)日本原子力産業会議 情報調査本部 第1グループ [花光 (はなみつ)、窪田] |
電話: 03-5777-0754 (直通) | |
FAX: 03-5777-0758 |