[JAIF] プレスリリース -2004年4月8日 |
世界の原子力発電開発の動向
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日本原子力産業会議は毎年、世界の原子力発電所の現状を「世界の原子力発電開発の動向」としてとりまとめている。今回の調査は、当会議が世界33カ国・地域の81の電力会社等から得たアンケートの回答などに基づき、2003年末現在のデータを集計したものである。 |
2003年末現在、世界で運転中の原子力発電所は434基、合計出力は3億7,628万6,000kW(グロス電気出力、以下同)となった。2003年には中国で新規に2基が営業運転を開始。また、運転を休止していたカナダの2基も運転を再開したものの、日本(ふげん)、英国(コールダーホール4基)、ドイツ(シュターデ)で6基が閉鎖されたため、前回調査と比べると2基(前回調査436基)の減少。しかし、運転中の合計出力は、これまでの最高だった2002年の3億7、372万7,000kWを上回り、過去最高となった。建設中は36基・3,128万4,000kW(前回調査39基・3,469万6,000kW)、計画中は28基・2,792万3,000kW(同27基・2,536万kW)となった。
なおアジア地域では、運転中の原子力発電所の基数が初めて100基(合計出力7,613万2,000kW)に達した。建設中は20基(1,646万kW)、計画中は18基(1,957万8,000kW)となり、地域別にみると、それぞれ世界全体の53%、70%を占め、アジアが世界の原子力発電開発をリードしている現状が再確認された。
フィンランド、大型原子力発電所を新規発注―西欧で10年ぶり西欧での新規計画として注目されているフィンランド5基目の原子力発電所は、建設サイトや炉型、出力が正式決定し、建設に向けて大きく動き出した。同プロジェクトを手掛けるテオリスーデン・ボイマ社(TVO)は、建設サイトをオルキルオトに選定するとともに、炉型を単基出力としては世界最大となる170万kWの欧州加圧水型炉(EPR=PWR)に決定、正式契約を締結した。EPRは、フランスのフラマトムANP社とドイツのシーメンス社のコンソーシアムが入札した原子炉。今回の発注は、フランスのシボー2号機以来、西欧では約10年ぶり。TVOは2004年1月、オルキルオト3号機の建設認可を政府に申請。2月から掘削・土木工事が始まった。2005年初めに正式に着工し、2009年の運転開始をめざす。
中国の2基が営業運転開始2003年に新たに営業運転を開始した原子力発電所は、中国の2号機(PWR、99万kW)とV期2号機(CANDU、70万kW)の2基。これにより、中国で運転中の原子力発電所は8基・629万8,000kWとなり、台湾、ベルギーを抜き設備容量では前年の14位から12位に順位をあげた。なお建設中の3基のうち、U期2号機(PWR、65万kW)は、2004年2月25日の初臨界を経て、同3月11日に運転を開始した(本調査では「建設中」に分類)。
インド、日本で各1基が新規着工、インドで5基が計画入り2003年に新たに着工したのは、インドのラジャスタン6号機(PHWR、22万kW)と日本の泊3号機(PWR、91万2,000kW)の2基。インドでは、野心的な原子力発電開発が順調に進められている状況が改めて確認された。すなわち、今回新たに計画入りしたのは5基・370万kW。昨年計画入りした50万kWの高速増殖炉原型炉(PFBR)と建設中の8基・396万kWとあわせると設備容量が816万kWにのぼり、運転中を大きく上回る。PFBRについては、インド政府が2003年9月、南部のカルパッカム・サイトへの建設計画を正式に了承した。2009年の運転開始をめざし、近く着工の見通し。なお、パキスタンでも中国との協力により、チャシュマ2号機(PWR、30万kW)の建設計画が浮上してきた。同2号機は、2004年にも着工するとの見方が出ている。
北海道電力の泊3号機は、同社にとって3基目の原子力発電所。新規の着工は、1999年の北陸電力の志賀2号機(ABWR、135万8,000kW)以来で、PWRでは1987年の関西電力の大飯3、4号機(PWR、各118万kW)以来、およそ16年ぶり。
経済性が劣る初期炉6基が閉鎖今回の調査で閉鎖を確認したのは、日本のふげん発電所(1979年営業運転開始)、英国のコールダーホール1、2、3、4号機(1号機1956年、2号機1957年、3号機1958年、4号機1959年営業運転開始)、ドイツのシュターデ発電所(1972年営業運転開始)の6基・107万7,000kW。このうち英国の4基は、原子燃料会社(BNFL)が2000年5月に決定したマグノックス炉(GCR)の閉鎖計画に基づいて閉鎖されたもの。GCRは1950〜60年代にかけて運転を開始した初期のガス炉で、出力が小さく経済性が劣ると判断された。BNFLは運転中の残りの12基も順次閉鎖していく方針。
ドイツのシュターデ発電所の閉鎖については、2001年に成立した脱原子力法の施行後の初めてのケースとなったが、実際にはワンサイト・シングルユニットで経済性が劣るとの判断から、同法施行前に電力会社が自主的に決めていた閉鎖時期が当初予定より約1年前倒しされたもの。
なお、東北電力が建設を計画していた巻発電所(BWR、82万5,000kW)は、建設予定地内の町有地売却をめぐる住民訴訟が敗訴したことを受け、事実上用地取得が不可能な事態となったことから計画を断念した。今回の計画中止は、電源開発基本計画に組み込まれた原子力発電所として初めてのケース。
1基が全出力運転、1基が初臨界、2基が運転再開2003年に全出力運転を達成したのは、チェコのテメリン2号機(PWR、98万1,000kW)の1基。テメリン2号機は、2002年12月末の送電開始を経て、2003年3月3日に全出力運転を達成。現在は、2002年1月に全出力運転を達成した同1号機(同)とともに、試運転段階にあるが、両機ともに2004年に営業運転を開始する予定。なお、両機は最新のVVER-1000型炉が採用されており、西側の原子炉と同等の安全レベルにあるという。
臨界を達成したのは、韓国の5号機(PWR、100万kW)。同機は、2003年10月に燃料を装荷し、同12月に初臨界に達した。2004年6月に営業運転を開始する見通し。そのほか、日本の浜岡5号機(ABWR、138万kW=2004年3月23日初臨界)、中国の1号機(PWR、106万kW)、6号機(PWR、100万kW)でも、2004年内の初臨界が予定されている。
運転を再開したのは、カナダのピッカリングA4号機(CANDU、54万2,000kW)とブルースA4号機(CANDU、80万5,000kW)。いずれも、経済性の悪化などの理由から休止していたもの。ピッカリングA発電所を所有・運転する公営のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、残りの3基については2007年までに運転を再開させる意向を示している。ブルース・パワー社も、ブルースA発電所の残りの2基の運転再開に加えて、新規原子力発電所建設の実行可能性を探る調査に着手しており、2004年半ばまでには結論を出すとしている。(ブルースA3号機は2004年1月8日に運転再開。本調査では「休止中」に分類。)
営業運転開始 | 中国 | 嶺澳2号機 | (BWR,82万5,000kW) | 1月8日 |
秦山V期2号機 | (CANDU=カナダ型重水炉,70万kW) | 7月24日 | ||
全出力運転 | チェコ | テメリン2号機 | (PWR,98万1,000kW) | 3月3日 |
初臨界 | 韓国 | 蔚珍5号機 | (PWR,100万kW) | 12月 |
着工 | インド | ラジャスタン6号機 | (PHWR=加圧重水炉,22万kW) | 1月20日 |
日本 | 泊3号機 | (PWR,91万2,000kW) | 11月21日 | |
発注 | フィンランド | オルキルオト3号機 | (PWR,170万kW) | 12月18日 |
計画入り | インド | PHWR | (70万kW×2基) | |
インド | LWR(軽水炉) | (100万kW×2基) | ||
インド | AHWR(改良型重水炉) | (30万kW) | ||
営業運転再開 | カナダ | ピッカリング-4(A) | (CANDU,54万2,000kW) | 9月25日 |
カナダ | ブルース-4(A) | (CANDU,80万5,000kW) | 11月28日 | |
閉鎖 | 日本 | ふげん | (ATR=新型転換炉,16万5,000kW) | 3月29日 |
英国 | コールダーホール1,2,3,4号機 | (GCR=ガス冷却炉,各6万kW) | 3月31日 | |
ドイツ | シュターデ | (PWR,67万2,000kW) | 11月14日 | |
建設計画断念 | 日本 | 巻 | (BWR,82万5,000kW) | 12月24日 |
運転中 | 建設中 | 計画中 | 合計 | ||||||
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国・地域 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | |
1 | 米国 | 10,242.7 | 103 | 10,242.7 | 103 | ||||
2 | フランス | 6,613.0 | 59 | 6,613.0 | 59 | ||||
3 | 日本 | 4,574.2 | 52 | 503.0 | 5 | 857.8 | 6 | 5,935.0 | 63 |
4 | ロシア | 2,255.6 | 30 | 300.0 | 3 | 2,555.6 | 33 | ||
5 | ドイツ | 2,169.3 | 18 | 2,169.3 | 18 | ||||
6 | 韓国 | 1,571.6 | 18 | 200.0 | 2 | 680.0 | 6 | 2,451.6 | 26 |
7 | 英国 | 1,303.3 | 27 | 1303.3 | 27 | ||||
8 | カナダ | 1,193.2 | 16 | 1193.2 | 16 | ||||
9 | ウクライナ | 1,183.6 | 13 | 400.0 | 4 | 1,583.6 | 18 | ||
10 | スウェーデン | 982.6 | 11 | 982.6 | 11 | ||||
11 | スペイン | 788.0 | 9 | 788.0 | 9 | ||||
12 | 中国 | 629.8 | 8 | 277.0 | 3 | 906.8 | 11 | ||
13 | ベルギー | 599.5 | 7 | 599.5 | 7 | ||||
14 | 台湾 | 514.4 | 6 | 270.0 | 2 | 784.4 | 8 | ||
15 | スイス | 337.2 | 5 | 337.2 | 5 | ||||
16 | リトアニア | 300.0 | 2 | 300.0 | 2 | ||||
17 | ブルガリア | 288.0 | 4 | 288.0 | 4 | ||||
18 | インド | 277.0 | 14 | 396.0 | 8 | 420.0 | 6 | 1093.0 | 28 |
19 | フィンランド | 276.0 | 4 | 170.0 | 1 | 446.0 | 5 | ||
20 | スロバキア | 264.0 | 6 | 264.0 | 6 | ||||
21 | ブラジル | 200.7 | 2 | 130.9 | 1 | 331.6 | 3 | ||
22 | 南アフリカ | 189.0 | 2 | 189.0 | 2 | ||||
23 | ハンガリー | 186.6 | 4 | 186.6 | 4 | ||||
24 | チェコ | 176.0 | 4 | 196.2 | 2 | 372.2 | 6 | ||
25 | メキシコ | 136.4 | 2 | 136.4 | 2 | ||||
26 | アルゼンチン | 100.5 | 2 | 74.5 | 1 | 175.0 | 3 | ||
27 | スロベニア | 70.7 | 1 | 70.7 | 1 | ||||
28 | ルーマニア | 70.6 | 1 | 282.4 | 4 | 353.0 | 5 | ||
29 | オランダ | 48.1 | 1 | 48.1 | 1 | ||||
30 | パキスタン | 46.2 | 2 | 46.2 | 2 | ||||
31 | アルメニア | 40.8 | 1 | 40.8 | 1 | ||||
32 | イラン | 229.3 | 2 | 88.0 | 2 | 317.3 | 4 | ||
33 | カザフスタン | 192.0 | 3 | 192.0 | 3 | ||||
34 | エジプト | 187.2 | 2 | 187.2 | 2 | ||||
35 | イスラエル | 66.4 | 1 | 66.4 | 1 | ||||
合 計 ( )内は前年値 | 37,628.6 (37,372.7) | 434 (436) | 3,128.4 (3,469.6) | 36 (39) | 2,792.3 (2,536.0) | 28 (27) | 43,549.3 (43,378.3) | 498 (502) |
本件問合せ先: | (社)日本原子力産業会議 情報調査本部 第1グループ [佐々木、窪田] |
電話: 03-5777-0754 (直通) | |
FAX: 03-5777-0758 |