[JAIF] プレスリリース

世界の原子力発電開発の動向

- 2004年12月31日現在 -

2005年4月8日
(社)日本原子力産業会議

世界の原子力発電開発の動向当会議は毎年,世界の原子力発電所の現状を「世界の原子力発電開発の動向」としてとりまとめている。今回の調査は,世界36カ国・地域の77の電力会社等から得たアンケートの回答などに基づき,2004年末現在のデータを集計したものである。

世界の原子力発電開発の現状

2004年の主な動き



― 中国とインドの台頭が顕著に ―

3ヵ国で4基(361万2,000kW)が営業運転開始

 2004年末現在,世界で運転中の原子力発電所は434基,合計出力は3億7,920万7,000kW(前回:434基・3億7,628万6,000kW)となり,運転中の合計出力は,前年を上回り過去最高となった。建設中は33基・2,805万2,000kW(前回調査36基・3,128万4,000kW),計画中は38基・3,972万3,000kW(同28基・2,792万3,000kW)となった。「計画中」がこの1年間で10基も増加したことも注目される。

 2004年に新たに営業運転を開始した原子力発電所は,中国のU期2号機(PWR,65万kW)と韓国の5号機(PWR,100万kW),チェコのテメリン1,2号機(PWR,各98万1,000kW)の4基。

 中国では,2002年に3基(秦山U期1号機,1号機,秦山V期1号機),2003年に2基(嶺澳2号機,秦山V期2号機)が相次いで営業運転を開始しており,この3年間で6基・468万kWの原子力発電所が営業運転を開始したことになる。これによって中国の原子力発電設備容量は,9基・695万8,000kWとなった。建設中の2基(1・2号機,各100万kW)も,2005年内の運転開始をめざしている。

 韓国の蔚珍5号機は,100万kWの国産PWRである韓国標準型炉(KSNP)としては5基目。またチェコのテメリン1,2号機は,それぞれ2002年,2003年に全出力運転を達成した後,試運転段階を経て,2004年10月11日に営業運転を開始した。両機の運転開始により,チェコの原子力発電設備容量は372万2,000kWとなり,前年の24位から15位へ一気に順位を上げた。

インドが50万kW・FBR原型炉に着工

 アジア地域の原子力発電開発がますます勢いを増してきている。その中でも,今後,電力需要の大幅な増加が予測されている中国とインドが,一貫した政策のもと野心的とも言える原子力発電開発を進めている状況が改めて浮き彫りになった。

アジア地域で新たに着工が確認されたのは,インドの高速増殖炉(FBR)原型炉「PFBR」(50万kW)の1基。南部のカルパッカム・サイトで2004年10月23日に行われた起工式には,M.シン首相が臨席。国を挙げて,FBR開発に取り組む姿勢がアピールされた。PFBRの実施主体である新会社BHAVINIも2003年10月に設立されており,2011年の完成をめざす。

インドは,従来の重水炉路線に続く第2段階としてFBRの開発を進めている。インド原子力省によると,さらに4基の同型FBRを建設する計画や,将来的には100万kW級のFBRを複数基建設する構想もある。さらにインドは,FBRに続く第3段階として,国内で豊富なトリウム資源の利用を視野に入れており,AHWR(新型重水炉)の研究開発にも力を入れている。また現在建設中の原子力発電所9基のうち,進捗率が最も高いタラプール4号機(PHWR=加圧重水炉,54万kW)は2005年3月6日,初臨界を達成し,同8月には営業運転を開始する予定。PFBRを除く残りの7基についても2008年までには運転を開始する見込みで,原子力発電設備容量は現在の277万kWから673万kWに拡大する。インドでは,2020年までに原子力発電設備容量を2,000万kWに拡大する方針が打ち出されている。

 なお,インドは未だ核不拡散条約(NPT)に加盟していない国の1つである。(他の主な非締約国はパキスタン,イスラエル。締約国は2004年末現在,189カ国。)

中国(8基・730万kW)を含めて15基・1,440万kWがアジアで新たに計画入り

 アジアで新たに計画入りしたのは,中国の三門1,2号機(PWR,各100万kW級),嶺澳U期1,2号機(PWR,各100万kW),陽江1,2号機(PWR,各100万kW級),秦山U期3,4号機(PWR,各65万kW)の8基,韓国の140万kW改良型加圧水型炉(APWR)の2基,インドネシアの100万kW級PWRの4基,パキスタンのチャシュマ2号機(PWR,30万kW)の合計15基。

このうち,中国の三門1,2号機(浙江省),陽江1,2号機(広東省)については,国際入札が2005年2月末に締め切られ,フランスのAREVA社(欧州加圧水型炉=EPR),米国のウェスチングハウス社(AP-1000),ロシアのアトムストロイエクスポルト社(VVER-1000またはVVER-1500)の3社が応札した。2005年内にも落札者が決まる見通し。

 中国では電力需要が急増していることから,中国沿岸部を中心に原子力発電所の建設計画が相次ぎ浮上しており,2020年までに原子力発電設備容量を3,600万kWに拡大する方針が打ち出されている。(注:三門,陽江両発電所については,出力が正式に決まっていないが,100万kW級を対象に入札が行われているため,100万kWとして計算した。)

 韓国で計画入りした2基の建設サイトは未定だが,100万kWのKSNPにさらに改良を加えて開発したAPR1400と呼ばれる次世代炉が採用される。APR1400は,近く着工予定の新古里3,4号機に初号機として採用される。

 インドネシアでは,ムリア半島に4基の100万kW級PWRを建設する計画が再浮上してきた。同国原子力庁は,当会議のアンケート調査に対して,2008年にも1号機の国際入札を実施し,2010年着工,2016年の運転開始をめざすと回答した。2020年までに最終的に4基を建設する予定。(本調査では,出力が正式に決まっていないため,100万kWとして計算した。)

 パキスタン原子力委員会のP.ブット委員長と中国国家原子能機構(CAEA)の張華祝主任(国防科学技術工業委員会副主任)は2004年5月,中国がパキスタンにチャシュマ2号機(PWR,30万kW)を供給する契約に調印した。2000年9月に営業運転を開始した同1号機(PWR,32万5,000kW)に隣接して建設される。送電開始は,2011年が見込まれている。

 なお,ベトナムが2002年から2003年にかけて実施した予備的実行可能性調査(PFS)によると,「2017年から2020年に,同国南部ニン・トゥアン県,またはフーエン県に120万〜400万kW程度の原子力発電所を建設する」という計画が浮上してきた。今後,実行可能性調査(FS)を2006年から約3年程度かけて実施する見通し。

フランス,EPR初号機が計画入り

 フランス初のEPR(欧州加圧水型炉)となるフラマンビル3号機(EPR=欧州加圧水型炉,160万kW)が正式に計画入りした。フランス電力公社(EDF)が2004年10月に発表したもので,EPRとしては,近く着工予定のフィンランドのオルキルオト3号機(170万kW)に続く2基目。2007年の着工,2012年の運転開始をめざしており,計画が順調に進めば,2002年に運転を開始したシボー2号機(PWR,156万1,000kW)に続き,フランスとしては10年ぶりの新規原子力発電所となる。

英国,リトアニアで5基が閉鎖へ

 今回の調査で閉鎖を確認したのは,英国のチャペルクロス1,2,3,4号機(GCR,各6万kW)とリトアニアのイグナリナ1号機(軽水冷却黒鉛減速炉:LWGR,150万kW)の5基。

 英国のチャペルクロス1,2,3,4号機は,原子燃料会社(BNFL)が2000年5月に打ち出したマグノックス(ガス)炉閉鎖計画に基づき閉鎖された。BNFLは残りの8基のマグノックス炉も順次閉鎖していく方針。

 リトアニアのイグナリナ1号機は,同国の欧州連合(EU)への加盟条件として両者合意のもとで閉鎖された。同機は,チェルノブイリ原子力発電所と同じ黒鉛減速炉(LWGR,ロシアの略称はRBMK)を採用していることから,EU側は安全面での問題を理由に同機の閉鎖を求めていた。なお1号機と同じ型の同2号機(同)についても,2009年に閉鎖される予定。

 2004年5月1日に新たにEUに加盟した10カ国のうち5カ国で18基の原子力発電所が運転中。このうち,旧ソ連型の軽水炉(PWR)の中でも第1世代にあたるVVER-440(V230)型を採用しているスロバキアのボフニチェ1,2号機(各44万kW)や2007年のEU加盟入りをめざすブルガリアのコズロドイ3,4号機(同)の早期閉鎖問題が焦点となっている(コズロドイ1,2号機は,2002年12月31日に閉鎖済み)。ただ,原子力発電所は各国の主力電源であるため,閉鎖に伴う代替電源の確保や経済的影響,廃炉問題などが懸念されている。

4基が送電開始,初臨界,燃料装荷,運転再開が各1基

 2004年に送電を開始したのは,日本の浜岡5号機(ABWR,138万kW),ウクライナのフメルニツキ2号機(PWR,100万kW)とロブノ4号機(PWR,100万kW),ロシアのカリーニン3号機(PWR,100万kW)の4基。このうち,浜岡5号機は2005年1月18日に営業運転を開始しており(本集計では「建設中」に分類),国内では2002年に運転を開始した東北電力の女川3号機に続く53基目の商業用原子力発電所となった。ABWR(改良型沸騰水型炉)としては中部電力初,国内では3基目となり,運転中の単機容量では国内最大。

 臨界を達成したのは,韓国の6号機(PWR,100万kW)。同機は,2004年12月16日の初臨界を経て,2005年1月7日に送電を開始した。2005年6月に営業運転を開始する見通し。(本調査では「建設中」に分類)

 燃料装荷を行なったのは,東北電力が建設中の東通1号機(BWR,110万kW)。同機は,2004年12月24日に燃料装荷を開始し,2005年1月24日に初臨界を達成した。同3月9日の発電開始を経て,2005年10月の営業運転開始をめざす。

運転を再開したのは,経済性の悪化などの理由から休止していたカナダのブルースA3号機(CANDU,80万5,000kW)。同発電所を運転するブルース・パワー社とオンタリオ州政府は2005年3月21日,ブルースA発電所の残りの1,2号機(同)の運転再開についても合意している。同じく休止中のピッカリングA1号機(CANDU,54万2,000kW)については,2005年秋にも運転を再開する見通しとなった。同発電所を所有・運転するオンタリオ・パワー・ジェネレーション社が2005年1月12日に明らかにしたもので,同社は,残りの同2,3号機(同)の運転再開については,1号機の運転再開に要する費用と工期をみて判断すると説明している。


以上

本件問合せ先:(社)日本原子力産業会議
情報調査本部 第1グループ (大野)
電話: 03-6812-7103 (本部直通)
FAX: 03-6812-7110(代表)

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