[JAIF] 「高温ガス炉の導入シナリオ及び研究開発ロードマップの検討」報告書サマリー

高温ガス炉の導入シナリオ及び研究開発ロードマップの検討

−高温ガス炉将来展開検討会WG2報告書−について〜

(社)日本原子力産業協会
政策本部

1.検討の趣旨

 エネルギー資源の乏しい我が国におけるエネルギーの安定供給及び地球環境問題の解決のためには、発電分野のみならず、多くの分野で原子力エネルギーの利用を進める必要がある。高温ガス炉は、950℃の高温域から低温域までの熱を効率的に利用することが可能であることから、熱化学法等を利用することにより高効率で環境負荷の小さなエネルギー資源として期待されている燃料電池への水素供給やその他の産業へのエネルギー供給用として、他型式の原子炉には無いポテンシャルを有している。
 このような高温ガス炉の持つ特性に着目した産業界を中心として、当協会は「高温ガス炉将来展開検討会(座長:関本博・東京工業大学教授)」を設置し、その下に設けられたワーキングループ1(WG1)及びワーキングループ2(WG2)において、高温ガス炉の普及・促進活動及び高温ガス炉の用途及び導入シナリオの検討を進めている。
 本報告書は、高温ガス炉の用途や将来展開の可能性について社会に広く知っていただくことを目的として、高温ガス炉の用途及び導入シナリオの検討成果をまとめたものである。

2.検討結果概要

(1)導入シナリオの検討
○燃料電池自動車向け導入シナリオ
 燃料電池自動車は2030年以降に普及が本格化しその後需要が急増するとの国の予測を踏まえ、2030年頃から高温ガス炉の運用を開始し、2100年までに30基の高温ガス炉(電力/水素併給)を導入する。本システム30基の高温ガス炉で約1,200万台の燃料電池自動車に水素を供給することが可能である。高温ガス炉による供給は、現行のオフサイト、オンサイト型水素製造に対して経済的にも十分競合可能であり、環境、エネルギーセキュリティーの面でも有利である。

○コンビナート向け導入シナリオ
 国内のコンビナートでは現行の自家発電設備が老朽化しており、更新に当たっては低コストで環境対応型の電源として原子力の利用も可能である。本シナリオでは、国内のコンビナートにおける自家発電設備をすべて発電用高温ガス炉に代替することを前提とし、設備の運営主体は新たなエネルギー供給会社を設立し効率的な運用を図る。本システムの高温ガス炉の導入基数は15基と予測され、年間約2000万dの炭酸ガスの削減、年間約1400万dの化石燃料の節減につながる。

○水素タウン向け導入シナリオ
 青森県が推進中の水素タウン構想に高温ガス炉を導入する場合のシナリオの方向性について検討を行った。高温ガス炉の導入時期は2030年ごろとし、水素の供給を中心に水素タウンのニーズに適合するようなエネルギーの供給を行う。導入シナリオの策定においては、青森県の新たな産業創出や地域活性化に繋がるような方向性が重要であり、今後、青森県と連携を図って取組むことを考えている。

(2)超長期燃料サイクルシナリオ
 高温ガス炉システムの実用化に関して、どのように日本の燃料サイクルに適合させるかを検討した結果、上記導入シナリオに従って高温ガス炉を導入する場合でも、我が国の燃料サイクル政策から逸脱しないことが確認された。

(3)研究開発のロードマップ
 上記シナリオのうち最も早い時期に導入が想定されるコンビナートでの利用を想定した場合、2020年代には実証炉の運用が想定される。高温ガス炉を早期に導入するためには、2015年程度までに、実証炉に必要な技術開発を終了し安全審査に対応する必要がある。
 また、国際的にも、我が国が引き続き高温ガス炉技術開発の分野で世界を主導するためには、2020年までに実証炉の技術開発を完成させるための高温ガス炉研究開発が必要である。

以 上

高温ガス炉の導入シナリオ及び研究開発ロードマップの検討 −高温ガス炉将来展開検討会WG2報告書− pdf(1,504KB)


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