東京都市大学学生主催 福島見学会開催に協力


8月28日(木)、29日(金)の二日間、東京都市大学原子力安全工学科の学生(学部生20名および院生5名)が、東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から3年半近く経過した「福島の今」を学ぶために、富岡町、川内村等を訪れました。原産協会は本見学会開催にあたり訪問先のアレンジ、調整等で協力をしました。

今回の訪問については、福島原発事故直後に福島を訪れ、地元の人との出会いが原子力を学ぶ意味について考えるきっかけとなったという、一人の原子力安全工学科学生(犬飼健一朗さん)の発案により計画がスタートしました。

犬飼さんには、自分が卒業する前に、後輩たちにも「福島を自分の目で実際に見て感じ、原子力について自分なりに何か答えをだしてほしい」と自分と同じように福島と向き合う機会を作ってあげたいと強い想いがありました。その想いを大学側に伝え、本見学会は、東京都市大学の支援を受けて、富岡町、川内村訪問の他、東京電力福島第二原子力発電所の見学、いわき市にある東日本国際大学学生との交流会の開催等、様々な内容を盛り込み一泊二日で開催されました。

一日目は、帰宅困難地域と居住制限区域、避難指示解除準備区域の3つの区域に分かれる富岡町を訪れ、役場職員の方の説明を聞きながら、津波により破壊された富岡駅や電車が走ることもなくなり、草木で覆われたJRの線路、傾きかけた住宅、除染作業中の建物、除染廃棄物をいれた大量のフレコンバッグ、帰宅困難区域の前に設置されたバリケードなどを実際に目の当たりにしました。震災直後とほとんど変わらぬ風景に言葉を失った学生も多かったと思います。

その後は、川内村へ移動し、役場の会議室で遠藤雄幸村長より「川内村の現状や復興に対する想い」などのお話を伺いました。「自立が大事」との前向きな言葉からは、福島事故後、様々な困難に立ち向かい、村民を守ってきた村長の想いが十分に伝わってきました。また、村長からは「将来、技術者になるであろう皆さんには、客観的な事実を示し、判断の根拠を提示できるような技術者になってほしい」との激励の言葉が学生たちに贈られました。

遠藤村長からお話を伺った後には、東京都市大学の卒業生で、現在、川内村内にある福島大学うつくしまふくしま未来支援センターサテライトで復興支援にあたっている西川珠美さんのお話を伺うことも出来ました。「福島の地でしか出来ないこと、わからない事がたくさんある。また福島に来てほしい」と力強く語る姿はとても印象的でした。

夜は村内にある「いわなの郷」というコテージに宿泊し、学生全員でバーベキューをしました。調理場に置かれた大量の川内村産の野菜を切ったり、バーベキューの火を調整したり、お肉を焼いたりと、普段はあまり接することがない他の学年の学生や院生との共同作業も楽しいひとときだったのではないでしょうか。

翌日は東京電力福島第二原子力発電所を見学しました。震災当日の状況でのシュミレータ訓練を見せていただき、原子炉建屋内のオペレーションフロア、原子炉格納容器内、防潮堤、海水熱交換器建屋等を見学しました。見学後、何名かの学生から「今までは考えていなかったが今回、見学をしたことによって発電所で働きたいと思った」という声があがりました。

見学後はいわき市へ移動し、文系の大学である「東日本国際大学」を訪問し、地元出身の学生と韓国からの留学生との交流会を開催しました。

東京都市大学の学生から東日本国際大学学生に対して、「原子力についてどう思いますか」と質問したところ、「あまり考えた事がなかった」という答えがかえってきたり、また、「これからも福島に住み続けますか」という質問には、「受け取る側にとっては複雑な思いが生じる質問である」とのやりとりがあったりと、短時間での意見交換では充分なコミュニケーションがとれず、意識の違いがはっきりと出てしまいましたが、今回の交流会開催を快く引き受けてくださった東日本国際大学の先生からは「双方にはギャップがあるという事を感じてくれたらいい」とのお言葉をいただいきました。

今回の福島訪問については、東京都市大学の学生が将来、原子力産業界に進む者として、自らのモチベーションに繋げ、技術者として成長するステップとする事を目的としましたが、参加した学生それぞれが、「原子力を学ぶ」意味を今まで以上に真摯に受止め、強いモチベーションに繋げることができたのではないでしょうか。

富岡町内帰還困難区域前のバリケード
川内村 遠藤村長の講演
「いわなの郷」で夕食(バーべキュー)の準備をする学生たち
東日本国際大学での交流会

以上

お問い合わせは、人材育成部(03-6812-7101)まで