lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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原産協会メールマガジン7月号
2012年7月25日発行

アンケートご協力の御礼

  「原産協会メールマガジン」について読者の皆様にご感想並びにご意見をお伺いいたしたく、平成24年6月26日~平成24年7月20日、アンケートを実施させていただきました。

 短期間にもかかわらず、多くの大変貴重なご意見をお寄せいただき、誠にありがとうございました。
 アンケート結果およびこれらのご意見を今後のメールマガジン制作に反映させ、より多くの皆様に親しんでいただくことができる「原産協会メールマガジン」にしたいと存じますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。 


Index

■原子力政策推進活動

 □原子力を取り巻く課題について理事長コメントを発表
 □「2012世界原子力大学夏季研修」参加の若手技術者・研究者への助成
 □理事長コメント等に関してプレスブリーフィングを開催  

■会員との連携活動

 □第13回会員情報連絡協議会を開催

■ホームページの最新情報
■原産協会役員の最近の主な活動など
■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【39】
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

本文

■原子力政策推進活動

□原子力を取り巻く課題について理事長コメントを発表  

○「原子炉の運転期間について」

 わが国政府が表明した「脱原子力依存」の基本方針に基づき、エネルギー環境会議において2030年に向けてのエネルギーミックスの選択肢が取りまとめら れ、国民的議論が開始されました。その中で原子炉の運転制限を40年とするとの政治的な判断が、根拠が十分に示されないまま、なされることが懸念されてい ます。その原子炉の運転期間の制限や延長について20日、コメントを発表しました。

 全文はこちらをご覧ください。
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2012/President_colum_03%2820120720%29.pdf

○「福島の廃炉に向けた研究開発は国際プロジェクトで」  

 福島の廃炉に向けた中長期的課題に関する研究開発の進め方について、13日、 「福島の廃炉に向けた研究開発は国際プロジェクト で」と題し、(1)国際的な研究開発のプラットフォームの構築(2)国際廃炉研究セン ターの設立──のコメントを取りまとめ発表しました。

 全文はこちらをご覧ください。 http://www.jaif.or.jp/ja/news/2012/President_colum_02%2820120713%29.pdf

○「新しい原子力規制体制に望む」

 6月27日に「原子力規制委員会設置法」が公布されたことを受け、6日、 当協会の服部拓也理事長が「新しい原子力規制体制に望む」と題するコメント を発表しました。  この中で、今後行われる安全規制の具体的中身を定める関連政省令などの検討 が行われる際に、「これまでの我が国の規制制度の課題を抜本的に改善し、世界 標準と比肩できる規制制度に改革されることを期待したい」として、これまでに 指摘した(1)専門性(2)透明性と説明責任(3)国際性──の三点に加えて、(1)国民の信頼回復 (2)現場の状況を踏まえた実効的な規制(3)優秀な人材の確保と育成──の三点を要望し ました。  

全文はこちらをご覧ください。 http://www.jaif.or.jp/ja/news/2012/President_colum_01%2820120706%29.pdf


□「2012世界原子力大学夏季研修」参加の若手技術者・研究者への助成

  世界原子力大学(WNU)(本部:ロンドン)が主催する「2012世界原子力大学・夏季研修」が、英国オックスフォード大学で6週間(7/7~8/18)にわたり実施されます。日本からは、当協会の「向坊隆記念国際人育成事業」による参加支援を受けた5名に加え、(独)原子力安全基盤機構が独自に派遣する2名の方が今夏の研修に参加しています。

 毎年、本夏季研修には、原子力発電所を持つ国、持たない国、あわせて世界約30カ国・地域から30歳前後の若手の技術者、研究者を中心に約100名が参加します。原子力分野おいて活躍できる将来のリーダー育成を目的に、2005年より毎年開催され、国際機関や各国で現在の原子力を取り巻く分野のリーダーから「課題」を聴き、課題解決への道を参加者同士の議論により探ります。また、「原子力人生」で役立つ人的ネットワークを作る場ともなっています。

 当協会は、2009年から「向坊隆記念国際人育成事業」の一環で、参加支援(主に参加費助成)を開始し、今夏の参加者を含め16名の方の参加支援を行ってきました。これまでの参加者は6週間の国際的環境の研修に刺激を受け、触発され、時にリーダーシップの取り方や英語での議論で自信をなくすこともあったようですが、それらを乗越えて、一回り大きくなったことを自他共に実感しています。

 本夏季研修は、原子力分野の国際人育成にとても有益ですので、当協会としては今後も参加支援事業を継続していきます。来夏の支援者の募集開始は、本年の10月頃を予定しており、英語力を有する若手原子力関係者の応募をお待ちしております。

今夏研修への参加支援対象者名簿 (敬称略):
  上原 寛貴   北海道電力(株)泊発電所機械保修課 原子炉主機グループ
  住川  隆    日立GEニュークリア・エナジー(株)原子力計画部 技師
  中瀬 正彦   東京工業大学 原子炉工学研究所 博士後期課程
  平杉  慎    日本エヌ・ユー・エス(株)エネルギー事業支援部門
             エネルギー技術ユニット
  八十田洋平   関西電力(株)原子力事業本部プラント・保全技術グループ

世界原子力大学(WNU)「夏季研修(Summer Institute)」の紹介。
 http://www.jaif.or.jp/ja/wnu_si_intro/index.html 


□理事長コメント等に関してプレスブリーフィングを開催 

 当協会は、5月に発行した「世界の原子力発電開発の動向2012年版」と、7月6日に発表した当協会服部理事長コメント「原子力規制の新しい取り組みについて」に関するプレスブリーフィングを7月12日に開催し、21社から35名のメディア関係者が参加しました。

 服部理事長は冒頭、「東日本大震災から16カ月が経過し、発電所の方は安定してきたもののまだまだ多くの課題が残っている。とりわけ厳しい避難生活を強いられている地域の皆さんがおられること、またこの事故によって多くの原子力発電所が止まることになり、電力供給について国民の皆さんに大変ご心配をおかけすることになったことを大きく受け止めている。この事故により、全ての原子力関係者の信頼が地に落ちたと言っても過言ではない。今後、信頼関係をどのように取り戻し、立ち上げてゆくかが我々に課せられた最大の課題だと思っている。」と挨拶しました。

 また、「世界の原子力発電開発の動向2012年版」の報告にもあるように、福島事故後も一部の国を除いて引き続き原子力を進めていこうという国々が多い。その中で、日本においては、国民によるエネルギーに関する議論が始まろうとしているが、原子力産業界としては、これからも日本のエネルギーバランスの中で、原子力技術を放棄することなく一定の役割を担っていくべきだと考えている。
 とりわけ日本の技術力に対する各国の期待感が大きい中、これに対し、しっかりと貢献し、福島の経験をいかに世界の原子力安全に活かしていくかが我々に課せられた使命であると考える。
 また、これから長く続くであろう廃炉の問題は、どの国もいずれ向き合うことになると思われるので、日本で培われた技術は、必ずや世界の原子炉のために役に立つと思われる。
 エネルギー環境会議で、3つの選択肢が示され、本格的な議論が始まる一方で、原子力の新しい安全規制の法律が施行された。この体制が原子力の信頼回復の出発点になる。その意味で、これを国民の信頼が得られるものにしてゆくことが、極めて重要な課題であると考える。

 以上のように服部理事長は、コメントについて発言し、その後出席者との活発な意見交換が行なわれました。


■会員との連携活動

□第13回会員情報連絡協議会を開催

 当協会は7月18日、「第13回会員情報連絡協議会」を東京・港区の航空会館で開催し(=写真)、電気事業連合会の月山事務局長が「『エネルギー・環境に関する選択肢』に対する基本的考えについて」と題して講演しました。

 現在政府で進められているエネルギー戦略の策定に関して、各選択肢について必要な視点、これまでの電力会社の取り組み、各エネルギー源のメリット・デメリットなどについて説明を行い、ゼロシナリオについては、エネルギーの多様性確保の観点から我が国では取り得ず、実現可能性や国民負担等の課題が解決されるといった条件が整えば、原子力の安全確保を大前提に、「20~25シナリオ」が選択肢になり得るとの考えをご説明いただくと共に、長期の見通しには不確実性があることから、再生可能エネルギーの導入や国民負担の状況、国際情勢等を定期的にチェック&レビューし、これを踏まえて適切に見直していくことが重要との認識が示されました。

 また、経済産業省原子力政策課より「原子力産業政策について」と題して、経済産業省の取り組みについて、ご説明をいただきました。


■ホームページの最新情報

□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。
・理事長コメント『原子炉の運転期間について』を掲載(7/20)
・理事長コメント『福島の廃炉に向けた研究開発は国際プロジェクトで』を掲
載(7/13)
・理事長コメント『新しい原子力規制体制に望む』を掲載(7/6)
・「平成24年度定時社員総会」における今井敬・原産協会会長挨拶を掲載(7/5)
・『ウクライナ・ベラルーシにおける原子力発電開発』を掲載(6/29)
・福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等の状況 (随時)
・福島原子力発電所に関する環境影響・放射線被ばく情報 (随時)
・福島地域・支援情報ページ (随時)
 地元自治体の動きやニュース、地元物産・製品等の情報を掲載中
・「日本の原子力発電所(福島事故前後の運転状況)」を掲載 (随時)


□JaifTv動画配信(http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive44.html
・「放射線についてのQ&A -基礎編-」(5/31公開)
http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive46.html

・「TOPICS - 第45回原産年次大会と日英原子力サミット」(5/28公開)
http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive45.html


□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/

・【日本の原子力発電所の運転実績】6月分データを掲載(7/9)

□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/
・Atoms in Japan:英文原子力ニュース(AIJ) (随時)
・Fukushima & Nuclear News (毎日更新)
・Status of the efforts towards the Decommissioning of Fukushima Daiichi
 Unit 1-4 (随時)
・Environmental effect caused by the nuclear power accident at Fukushima
 Daiichi nuclear power station (随時)

[Information]
*JAIF President's Comment on International R&D Project on Decommissioning in Fukushima (7/17)
*JAIF President's Commment on New Nuclear Regulatory System (7/13)
*Ohi No.3 reached full capacity: Stress Test and Restart Status (随時)
* JAIF Report: Moves Afoot to Restart Nuclear Power Plant Operation and
its Related Issues (6/18)
* Stress Test and Restart Status (随時)
* Current Status before and after the earthquake (随時)
* Operating Records of Nuclear Power Plants (随時)
* Developments in Energy and Nuclear Policies after Fukushima Accident
 in Japan (随時)
* Trend of Public Opinions on Nuclear Energy after Fukushima Accident  
in Japan (随時)

[福島事故情報専用ページ] 「Information on Fukushima Nuclear Accident」


■原産協会役員の最近の主な活動など

[服部理事長]
・7/18  第13回会員情報連絡協議会出席
・7/23~7/27  第27回日台原子力安全セミナー出席のため台湾出張

[佐藤常務理事]
・7/18  第13回会員情報連絡協議会出席
            

■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【39】

米国の原賠制度の仕組み
 今回は、世界最大の原子力発電設備容量をもつ米国の原賠制度についてQ&A方式でお話します。


Q1.(米国の原賠制度の仕組み)
連邦法と州法がある米国では、原子力損害の賠償責任はどのように決められていますか?

A1.
・ 米国では一般の不法行為に関する責任は州法に規定されていますが、原子力事業は連邦法の領域とされ、連邦法である原子力法によって規制されています。そのため、原賠制度は原子力法の一部としてプライスアンダーソン法(PA法)に規定されています。
・ 原子力施設や核物質の利用に関する許認可・規制権限はNRC(原子力規制委員会)が有しています。NRCは、その許認可の条件として原子力発電事業者と補償契約を締結しますが、その中に、原賠制度の仕組みが盛り込まれています。
・ また、ウラン濃縮や再処理等の事業を連邦政府のエネルギー省(DOE)から請負っている事業者は、DOEとの間で補償契約を締結します。この契約に基づき、事業者が負うべき賠償責任は、DOEが負担するものとされています。


【A1.の解説】
 米国の原賠制度は原子力法の修正法として制定されたプライスアンダーソン法(原子力法170条)により規定されており、原賠制度の基本的な原則である無過失責任、責任集中、損害賠償措置等を備えています。
 もともと米国では、連邦と州の権限分配の原則にしたがい、一般の不法行為責任は州法により規定されています。そのため、無過失責任や責任集中の仕組みを直接的に連邦法で規定することができません。そこで、NRCは原子力事業者と締結する補償契約において、事業者の抗弁権の放棄、経済的な責任の集中、損害賠償措置の処置及び賠償責任の免除の放棄、を盛り込むことによって、実質的に無過失責任、責任集中及び賠償措置を確保して、他国の原賠制度と同様の仕組みを作っています。
 大きな被害が見込まれる異常原子力事故(ENO)に関しては、NRC及びDOEは、州法の不法行為責任に係る被告の抗弁権の放棄を補償契約に盛り込むことにより、実質的な無過失責任を法律上において確保し、被害者保護が図られています。
 また、米国の損害賠償措置では一般的な民間保険による措置に加えて、原子力事業者の相互扶助制度(共済)による措置を上乗せしており、1原子炉あたりにつき1兆円以上の措置が行われています。これらの仕組みが米国の原賠制度の特徴的な点です。

○ 無過失責任と同様の仕組みを構成するプライスアンダーソン法の規定

1条j.項(「異常原子力事故(ENO)」の定義)
・ 施設外に多量の放射性物質が流出・拡散する原因となった事故または施設外の放射線レベルを原因として、身体傷害または財産損害を引き起こしたものあるいは将来引き起こすであろうとNRC(原子力規制委員会)もしくはDOE(エネルギー省)が決定したもの。
※1979年に発生したスリーマイルアイランド(TMI)原発事故は異常原子力事故ではなかった。

170条n.項(1)(抗弁権の放棄)
 NRCまたはDOEは、原子力事業者と結ぶ補償契約の中に、異常原子力事故に関して原子力事業者の抗弁権を放棄する旨の規定を盛り込むことができる。


 これらの規定により、米国では不法行為の責任はそれぞれの州の州法によって裁かれますが、異常原子力事故と認定された事故に関しては原子力事業者の過失に関する抗弁権が放棄されることとなり、過失の有無に関わらず原子力事業者が賠償責任を負うことになります。

○ 責任集中と同様の仕組みを構成するプライスアンダーソン法の規定

11条w.項(「公的責任」の定義)
・ 原子力事故又は予防的避難から生じる一切の法的責任をいう。
・ ただし、労働者災害補償法に基づく請求、戦争行為に基づく請求、サイト内の原子炉の運転等に関連して使用される財産の損害に対する請求にかかるものを除く。
※1979年に発生したスリーマイルアイランド原発事故の賠償責任は公的責任。

170条a.項(原子力事業者の損害賠償措置要件)
 第103条(営業免許)または第104条(医療と研究開発)に基づく許認可及び第185条(設置許可とオペレーションライセンス)に基づく建設許可、第53条(核燃料物質の国内輸送)、第63条(核原料物質の国内輸送)、第81条(国内輸送)による許可には、NRCが許可にあたり、原子力事業者が公的責任の請求を填補するための損害賠償措置を行うことを当該許可の条件とすることができる。
 さらに、NRCは、原子力事業者が連邦法や州法で認められた公的責任の免除を放棄することを当該許可の条件とすることができる。

170条n.項(2)(裁判手続き)
 原子力事故から生じる公的責任訴訟に関しては、当該事故が発生した地方の連邦地方裁判所、または合衆国領域外で発生した原子力事故の場合はコロンビア特別区連邦地方裁判所が第一審管轄権を有する。


 これらの規定により原子力事業者は、裁判で公的責任を免除されたとしてもそれを放棄し、損害賠償措置をもって賠償に充てることとなり、賠償責任が集中されなくとも賠償のための経済的な責任が集中される仕組みになっています。
 また、1979年に発生したTMI原発事故は異常原子力事故と認定されなかったため複数の連邦裁判所や州裁判所に管轄権があり、訴訟の取り扱いについて紛糾した経験を踏まえ、現在は原子力事故から生じる公的責任訴訟の第一審管轄権は連邦裁判所に限定されています。


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Q2.(事業者間相互扶助制度の仕組み)
米国では事故の際に、事故を起こしていない原子力事業者からも賠償資金を集めるそうですが、どのような仕組みになっているのですか?


A2.
・ 10万kW以上の原子力発電所には、第一次損害賠償措置として3億7500万ドルの民間責任保険の締結と、第二次損害賠償措置として原子力事業者の相互扶助制度(共済:遡及保険料システム)による措置をしなければなりません。
・ 第二次損害賠償措置は、一つの原子炉あたり最大1億1190万ドルの遡及保険料とその5%に相当する争訟費用の104基分を合計した122億1948万ドルが最大額となります。
・ 第一次措置の3億7500万ドルと第二次措置の122億1948万ドルを合計した125億9448万ドルが最大の賠償措置額となり、この額をもって原子力事業者の賠償責任(公的責任)は制限されます。
・ 責任額が制限額を超える場合は、大統領が議会に対して損害額の推定や賠償履行ファンドの創設などについて補償計画を提出し、議会が必要な行動を取ることになっています。


【A2.の解説】
  米国の原子力事業者は大きく2種類に分けられます。一つはNRCの許認可により事業を行う者(被許可者)、もう一つはDOEとの契約により事業を行う者(契約者)です。NRCの被許可者とDOEの契約者にかかる損害賠償措置と責任制限は、原子力法170条(PA法)に以下のように規定されています。

○ NRCの許認可を受けた原子力事業者に関する損害賠償措置の額及び方式

170条b.項(1)
 必要な第一次損害賠償措置の額は、民間の責任保険による額とする。10万kW以上の電気出力をもつ施設に対して要求される第一次損害賠償措置の額は、妥当な条件で利用できる民間保険の最大額でなければならない。第一次損害賠償に利用する民間保険等は、NRCが定める諸条件に基づくものでなければならない。(注:NRCの規定によりこの賠償措置額は3億7500万ドルと決められており、米国原子力保険プール(ANI)が原子力損害賠償責任保険を引き受けている。)
 第一次損害賠償措置に加えて、公的責任額が第一次損害賠償措置を越えるまで保険料支払いを延期できる(事後払い)と規定する原子力事業者による遡及保険料システムを構築・維持する。
 一つの原子力事業者の延払保険料の最大額は、1施設につき1億1190万ドル、また1年当たり支払保険料は1750万ドルを超えてはならない。

170条o.項(1)
(E)原子力事故から生じる公的責任請求及び争訟費用の総額が賠償措置額の最大額を超える場合、原子力事業者は延払保険料に加えて延払保険料の最大5%を超えない額が課される。

○ DOEとの契約により原子力事業を行う者の賠償措置
170条d.項(1)
(A)DOEはDOEとの契約により事業を行う者すべてと補償契約を締結しなければならない。
170条d.項(2)
 上記(1)に基づき締結される補償契約において、DOE長官が決定する方式及び額の損害賠償措置を要求することができる。また、長官は、要求される損害賠償措置額を超える請求に対して、公的責任総額まで被補償者を補償しなければならない。
170条d.項(3)
 補償額は、契約者に要求される賠償措置と合わせて、常時170条b.項で要求されるNRCの被許可者に要求される賠償措置額の最大額以上でなければならない。

 また、公的責任の総額は下記の規定により上記①~③の合計額をもって制限されています。
 制限額を越える恐れがある場合にはNRC又はDOEが事故に関する調査をまとめ、議会や裁判所等に報告書を提出し、連邦裁判所が制限額を超えると決定した後90日以内に、大統領が議会に対して損害額の推定や賠償履行ファンドの創設等について補償計画を提出することになっています。その補償計画に基づき議会が必要な行動を取ることになっています。
 なお、連邦裁判所が制限額を超えると決定した場合、裁判所の事前承認なしに責任制限額の15%を超える支払いを行ってはいけないことになっています。

○ 公的責任総額の制限
70条e.項(1)
 1つの原子力事故に対する被補償者の公的責任総額(争訟費用を含む)は、次の額を超えてはならない。
(A) 10万kW以上の電気出力をもつ施設の場合は、第一次損害賠償措置と原子力事業者遡及保険料システムによる措置の最大額(争訟費用を含む)
(B)DOE長官が補償契約を締結している契約者の場合は、170条b.項(1)の損害賠償措置の最大額または170条d.項(3)に基づく補償及び損害賠償措置のいずれか大きい額

○ 公的責任総額の制限を越える損害賠償を伴う原子力事故が生じた場合
170条i.項(1)
 公的責任総額を超える恐れのある損害賠償を伴う原子力事故が発生した場合は、NRC委員長もしくはDOE長官が、損害の原因と規模を調査し、かつ、議会、公衆、関係当事者及び裁判所に、調査報告書を迅速に提出しなければならない。

170条i.項(2)
 裁判所が単一の原子力事故から生じる公的責任が公的責任総額を超えると決定した90日以内に、大統領は議会に対して以下のものを提出しなければならない。
(A)公的責任を超える人身損害、財産損害の総額の見積額。
(B)公的責任総額を超える請求を支払うための追加の資金源に関する勧告。
(C)一つ以上の損失補償方法。
(D)損失補償方法を実施するために必要な追加的な法律

170条e.項(2)
 公的責任総額を超える損害賠償を伴う原子力事故の場合は、議会は当該事故を十分に調査し、かつすべての公的責任請求に対して公衆に十分かつ迅速な補償を行うために必要であると決定される一切の行為を行うものとする。

170条o.項(1)(資金の配分計画)
 原子力事故が発生した地域の連邦地方裁判所が、原子力事故に係る公的責任額が責任制限額を超えると決定する場合、支払われる総額は裁判所の事前承認なしに責任制限額の15%を超えてはならず、かかる支払いが裁判所によって承認されている配分計画に従わない限り支払いを許可してはならない。

米国の原子力法(原賠制度については主に170条に規定)はこちら

                      
◇    ◇    ◇


○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2011年10月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」を冊子にまとめました。

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 シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。
                    

 
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

          

ガスパチョはこの夏の救世主となり得るか?



 スペイン料理のひとつにガスパチョという冷製スープがある。休日のある日、いただきものの山のようなトマトを前に突然思い立ち作ってみた。とりあえず、ネットで検索し、気になるレシピにさらにアレンジを加え、それらしきものを作りあげた。味見をしてみた限りでは、われながら上出来とも思えるできばえにほくそ笑みつつ、さりげなく朝食のテーブルに、おしゃれな器に盛り付け供してみる。

 「これ、なに?」得体の知れないものには箸をつけたがらないわが同居人が、そういう反応を示すであろうことはあらかじめ予想済みだ。さっそく、ネットで仕入れたばかりの知識を臆面もなく披露する。「スペインの南のほうの家庭料理で、トマトとかきゅうりとか玉ねぎとかピーマンとかにんにくとか、いろんな野菜が生で入ってるんだよ。健康に良さそうだし、涼しげで夏にぴったりでしょ。」

 どうやら、ガスパチョという単語とそれが赤い食べ物だという、うっすらとしたイメージは持っていたらしい同居人は、おそるおそる冷たく赤い液体を口に運んだ。「うん、おいしい、ような気がする。でも、ちょっと濃いんじゃない。」「そうかな、飲むサラダとか食べるスープとか言われてるらしいから、これくらいでもいいと思うけど。」と答えてはみたものの、食材の分量については、かなり適当にアレンジし、たくさんあるものはありったけの量を使ったので、そうとうに濃いのは事実だ。そして、このアレンジの弊害はすぐにやってきた。なぜか、徐々に胃が痛み出したのだ。思い当たるふしはある、にんにく一片のところ小さめとはいえまるごと一個使ってしまっている、確かに胃には良くないだろう、変な汗まで出てきた。「まだ、たくさんあるし。明日はもう少し薄くして飲んでみようか。少し置いたほうが味もなじむだろうし。」と、そそくさと冷蔵庫へしまう、これ以上飲んだら、胃痛で病院行きの可能性さえある。

 翌日の朝食に、今度は水で薄めて出してみた。薄い、というより全体の味のバランスが崩れ、微妙な味に。しかも昨日痛めた胃がさらに疼く、にんにくの量はこれでも多すぎるくらいなのだ。どうにも持て余した感のあるそれをやっとのことでたいらげた。

 それからしばらくして、知り合いの家で件のガスパチョをご馳走になる機会があった。胃の痛みを覚悟して食べたそれは、夏の日の高原を思わせるような爽やかな清涼感を運んだ。私が以前作った食べ物とは、まるで別のものだった。使っている材料も調理法もほぼ同じなのに、なぜ? 驚愕する私にその人は言った。「今日は暑いでしょう。さっぱりさせたかったから、にんにくとオリーブオイルをひかえてみたの。」 これが、“あんばい”とか“さじかげん”とかいうものなのか、料理にオールオアナッシングは禁物なのね、と妙に納得しその家をあとにした。

 私はなんでも両極端なほうで、ほどほどというのが苦手だ。昔、高校の倫理社会の授業で出会った「中庸」という言葉が心に浮かぶ。過ぎることも及ばぬこともなくちょうど良い感じ、それは必ずしも真ん中というわけでもない。料理に限らず、生きていくにはこのテクニックが重要だ。料理の腕を磨く前に、生きぬくためのテクニックを磨いたほうがいいかもしれない。などと考えつつ、必ずもう一度、夏の日の休日の朝の食卓に、ちょうどよい感じのガスパチョを登場させることを心に誓った。 (R・S)


◎「原産協会メールマガジン」2012年7月号(2012.7.25発行)
発行:一般社団法人 日本原子力産業協会 情報・コミュニケーション部(担当:木下、八十島)
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