[原子力産業新聞] 2006年3月16日 第2323号 <2面>

[経済産業省] 地層処分フォーラム開く 約600名が参加

 経済産業省は10日、イイノホール(東京・千代田区)で放射性廃棄物地層処分フォーラムを開催した(=写真)。高レベル放射性廃棄物地層処分の必要性、安全性と研究開発について説明、ディスカッションにより処分地選定に向けた理解の促進を目的としており、約600名が参加した。

 冒頭、小平信因・資源エネルギー庁長官は、高レベル廃棄物処分の責務は原子力発電の恩恵に浴した現世代が未来世代に対して負っているとして、その必要性を強調。処分事業が一歩でも前進するよう、広報活動に重点的に取り組むとともに、地域振興に際しても厚みのある支援措置を用意している国の姿勢を示した。

 処分の安全性と研究開発について、コメンテーターとして参加した中林美恵子イリス経済研究所研究員が、地殻変動、地下水の影響の他、10万年レベルの長期間を理由に、地層処分に対し不安を持っている人が半数にも及ぶことをまず指摘した。これに対して、梅木博之・日本原子力研究開発機構地層処分研究開発部門研究主席は、地下水移行シナリオの評価など、安全研究の現状を、杤山修東北大学多元物質科学研究所教授は、13億年前に形成されたカナダのシガーレイク・ウラン鉱を例に、粘土層の隔離機能効果を説明した。

 また、処分施設の立地と地域共生については、実施主体として、竹内舜哉・原子力発電環境整備機構専務理事が、@地域の自主性尊重A段階的な事業展開B透明性の重視――により、地元との安心と信頼を獲得していくという基本理念で、処分地選定の公募活動に努めている現状を紹介した。

 パネルディスカッションは、女優の萩尾みどり氏、西川正純・前柏崎市長、松田美夜子・富士常葉大学環境防災学部教授も参加、萩尾氏が東京在住者として、「ゴミ処理についてもっとしっかり考えるべき。電気をジャブジャブ使うが、どこで作られ、どこに廃棄物を処分するのか考えていない」と切り出した。松田教授も放射性廃棄物処分を「電気を使った後の後始末」としてゴミ問題の1つととらえた。

 また、西川氏は立地地域として、「柏崎刈羽原子力発電所もあと5年で使用済み燃料が満杯」とし、地層処分を真剣に考える時期だと述べた。これに対し、杤山教授は、メディアの力により放射能・原子力への恐怖心・嫌悪感が人々に植え付けられてしまっていることを危惧したほか、竹内専務理事も、一般の人には処分の必要性に関して非常に体系的な説明が要るという難しさを指摘し、国、関係機関一体となった取組を訴えた。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.