[第34回原産年次大会] 概要報告 開会セッション

【開会セッション(前半)】
4月25日 (水) 9:10〜10:15

議長:太田 宏次 電気事業連合会会長
年次大会準備委員長挨拶
吉田 豊 年次大会準備委員長、弘前大学学長

原産会長所信表明
西澤 潤一 (社)日本原子力産業会議 会長

原子力委員会委員長所感
藤家 洋一 原子力委員会委員長

町村文部科学大臣所感 (代読)
青江 茂 文部科学省文部科学審議官

経済産業省資源エネルギー庁長官挨拶
河野 博文 経済産業省資源エネルギー庁長官

吉田 豊 年次大会準備委員長

21世紀最大の課題は、人類の福祉や経済の発展を図りつつ、地球温暖化ガスの排出を削減して、気候変動を食い止めることであると考えられる。このような考えから本年次大会は、「21世紀の原子力----地球、エネルギー、環境の保全のために」を基調テーマとして、原子燃料サイクル施設があり、日本における原子力平和利用を支える重要な地域の青森県で開催し、国内外の多くの原子力関係者などや地元の方々の参加を得て、活発な意見交換ができるよう計画した。

本大会の構成としては、1日目の特別講演には、木村知事、海外よりエルバラダイ国際原子力機関事務局長他2名の方に文明とエネルギーとの関係などの見解を、午後の「原子力----地球環境になぜ必要か」では、今世紀における原子力の役割について、広い立場からの議論を行う。また、夜には恒例となった「市民の意見交換会」を行う。

2日目の「原子燃料サイクル施設のある日英仏3地域から、世界へ」では、民間再処理工場を持つ3地域の代表者による地域の持つ特徴や地域振興などのお話を、その後、六ヶ所村に移動して、六ヶ所村村民の方々の参加による原子燃料サイクル施設をめぐる技術と共生の問題について議論する。

その後青森市に戻り、3日目は、「電力自由化の中で再評価される原子力」、「高レベル放射性廃棄物処分へのステップとその推進方策」の2つのセッションを予定している。これらは、当面最も重要な課題であるので活発な議論を期待している。

西澤 潤一 日本原子力産業会議会長

化石燃料によるエネルギー利用は、技術の発達を促し、人間と情報を陸・海・空にまたがって自由に駆け巡らせて、世界を一つに結びつける役割をしている。その他、医学の発展、電気の発達など20世紀は科学技術が飛躍的に発展し、多くのプラスの遺産を残した。しかし、その発展の裏には、技術に伴う倫理問題、地球環境問題などマイナスの遺産も背負うことになった。21世紀は、このようなマイナス面に取組んで、真の幸福が何であるかを見極め、科学と自然が共存できる社会を創り出すことであると考える。高度な科学技術を取扱うには、高度な危険の中を通り抜けることが多いために、当事者はより強い対社会的責任感を持つことを忘れてはならない。このことを本大会の機会に改めて強く申し上げる。我々の生活に欠かせないエネルギーにおいて、原子力は地球環境を持続的に保全させるだけでなく、その技術をさらに向上させることで、炉内で発生するプルトニウムを燃料として利用して、エネルギーの利用可能量を飛躍的に増大させ、資源からの制約を断ち切る役割を果たすことができる。これは、資源の乏しい我が国では、原子力開発の使命であると、皆様と共に再認識したい。

本大会では、青森市だけでなく六ヶ所村の方々にも原子力開発での最新の情報をお届けするのと合わせて、率直な意見交換の場になることを期待する。

藤家 洋一 原子力委員会委員長

原子力委員会は、今般の中央省庁等改革により、1月23日の所信発表で明らかにしたように、内閣府に移行し新たに出発した。その所信表明では、「原子力長期計画」を誠実に、また積極的に具体化し、着実に進めていくこと、国民の皆さんや各地域の方々と常に接し、さまざまな意見を十分に反映していく努力を行うことと謳っている。このような役割を果たすために、これまでに寄せられた意見などを大切に取り扱うこと、具体的な活動の内容や組織については、原子力政策の主要な分野ごとに専門部会を設置することなどの検討をしている。また、国民の意見を取り入れるための懇談会の設置についても検討している。また、国際社会の理解と支援が得られるような努力も考えている。原子力委員会は、こうしたことを十分念頭において、国内外を問わず「いつでも、どこでも、だれとでも」対話することを心がけたいと考えている。

21世紀の原子力政策については、この数年の不祥事を念頭において考える必要がある。原子力委員会は、委員会そのものはもちろんのこと、原子力政策円卓会議をはじめ各専門部会や懇談会の公開や地方開催など、国民合意の形成や情報公開に関して努力を重ね、その総仕上げとして「原子力長期計画の策定」を位置付けた。

原子力長期計画の策定会議および6分科会は、専門家だけでなく社会の多くの分野の方々に委員をお願いして、議論を展開した。途中発生したJCO臨界事故に対しては、議論を中断してこの問題に取組み、最終的には、少数意見の併記の必要もなく最終報告がまとめられた。

「原子力長期計画」に沿った21世紀の原子力政策は、@原子力発電を引続き基幹電源とする、A核燃料サイクルは、我が国の原子力政策の基本とする、B放射性廃棄物の処理・処分を着実に推進する、C高速増殖炉サイクル技術は、将来のエネルギーの有効な選択肢とする、D原子力開発は、将来のエネルギー選択肢を支えるものにとどまらず様々な科学技術分野の発展を支える研究開発を推進する、E放射線利用は、国民の理解を得ながら、その普及を図る、F国際社会と原子力の調和は、我が国の原子力平和利用の立場を世界に明らかにし、プルトニウムの利用については国際社会の理解と信頼を得て、その利用を図る、ことなどと考えている。

核燃料サイクル確立の大切さについては、今回の「原子力長期計画」においてもあらためて謳っている。我が国では、資源の有効利用と環境負荷低減、さらに余剰プルトニウムを持たない国際約束などを満足させる方策として、現段階では、日本でもMOX燃料の軽水炉利用による早期実現が強く望まれる。他方、原子力政策を実行するためには、地方の協力が不可欠である。そして、その関連の動きは、すぐさま世界に情報として伝達され、この青森で行われる議論はそのまま世界に発信される。このように世界は今非常に近くなっていることに気付く必要がある。

核燃料サイクルに関連して、青森県の重要性は増している。その青森の木村知事をはじめ県民・村民がその意義を十分理解して積極的に受け止めてもらっていることに感謝している。青森や六ヶ所という名が原子力のブランドネームとして世界に広く知られることを望んでいる。

最後に原子力も他の科学技術同様、光と陰が存在する。マイナスを克服し、プラスを伸ばしていくことで、21世紀文明の求めに応えられる研究開発や利用の姿を見つけることができる。近未来から将来に向けてのエネルギーとしての原子力、放射線利用、さらに先端科学としての原子力の位置付けと研究開発の課題や方向性がそこに示されていると指摘したい。

青江 茂 文部科学省文部科学審議官

我が国における21世紀の原子力政策の方向性については、原子力委員会で策定された「原子力長期計画」に示されており、文部科学省としても、今後この方向性に沿って原子力の研究開発利用を着実に進めていく。

我が国の原子力政策の基本である核燃料サイクルの確立は、長期的に、また全地球的に重要な意義を有するものであり、今後ともその確立に向けて努力を継続していくことが必要である。この核燃料サイクルの要は、青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場と、高速増殖炉である。再処理工場においては、スケジュールに沿って着実に建設・運転が行われるよう最善の努力を傾注すべきと考える。また、将来の高速増殖炉による核燃料サイクルの実現に向けた研究開発についても着実に取組むことが重要である。

原子力に関する安全確保については、JCO臨界事故の教訓を踏まえ、損害賠償など地元の方々への対応には万全を期すべく努力している。原子炉等規制法の改正及び原子力災害対策特別措置法の制定により、安全規制及び防災対策の抜本的強化に取組んでいる。原子力に対する国民の信頼を得るための国民の安全と安心の確保のために、関係者の理解と任務の遂行をお願いしたい。

本年4月から情報公開法が施行され、国民に分かり易い形で情報が提供されるよう工夫をしつつ情報公開を徹底し、さらに国民との対話を絶やさないように努力をする。また、教育の場においても、放射線や原子力に関する正確な知識を提供し、生徒自らが考えられるような環境整備に向けた取り組みを行う。

放射線利用は、国民生活の向上に大きな役割を果たしてきており、今後とも幅広い分野での利用と普及を図ると共に研究開発を進めることが重要である。また、原子力科学技術は、核融合をはじめとする新たなエネルギー技術発展の基盤であるとともにレーザー、加速器、原子炉等は未踏の領域へ挑戦するための有効なツールの役割を提供している。「大強度陽子加速器計画」は加速器による広範な研究分野の新展開を目指しており、また核融合研究開発として、国際熱核融合実験炉(ITER)計画についても主体的に取組んでいる。

我が国は、原子力基本法に則り、平和利用に限って原子力の研究開発利用を進めている。核兵器の廃絶は我が国民の悲願であり、今後とも国際的な核不拡散体制の維持・強化に積極的に貢献する決意である。これまで培ってきた平和利用技術を最大限生かして余剰プルトニウムの処分等に協力していく。

原子力を巡る現在の国内的、国際的な動向は、決して明るいものばかりではない。しかしながら、21世紀において、地球社会が持続可能な発展を目指すには、エネルギーの安定確保と地球環境保全を両立させることのできる原子力を抜きにしては考えられない。原子力がこのような人類社会の期待に応えられるよう皆様とともに全力を挙げて取組む。

河野 博文 経済産業省資源エネルギー庁長官

JCOウラン加工施設事故等により、原子力に対しては厳しい情勢にあるが、最近の島根3号機等々の原子力発電の計画の進展に勇気づけられている。現在、最大の関心事であるプルサーマルを含む核燃料サイクルについては、青森県に大部分が集まっており、着々と核燃料サイクルの確立に向けて準備が進められている。このような中、プルサーマル計画の進展が遅れていることは、産業界のみならず青森県に心配をかけている。しかし、原子力発電所の使用済み燃料を再処理して得られるプルトニウム等を有用資源として回収・利用するという核燃料サイクルの考え方は、国の方針として揺るぎないものであり、プルサーマルを推進していくことに変更はない。経済産業省としても全力を挙げて取組んでいく。

地球環境問題については、京都議定書が成立するか否かにより、人類が地球温暖化問題に対して有効な対策を取れるかどうかが問われている。このことは、原子力産業の将来にも影響がある問題である。米国の離脱宣言に対して、我が国としては、温暖化ガスの最大の排出国である米国参加の下で合意させることが必要である。経済産業省は、京都議定書のコミットメントを満たすためにエネルギー需給のあり方について検討している。その中で、原子力の基幹電源としての重要性は疑うところがない。

原子力産業は日本と世界の将来にとって欠かせない重要な役割を担っている。原子力産業発展のための理念を共有し、社会的な信頼を勝ち取るために粘り強く安全のためのエネルギーを注ぎ続けることが必要である。たった一人の緊張感の欠如によっても信頼を失うことになりかねないために、原子力安全確保のためには緊張感を持ってあたる努力を続けて、社会的信頼を得てもらいたい。これが、原子力産業発展の道である。

青森県は、当初からの皆様の理解により、誘致活動が展開され、今では青森県は、核燃料サイクル施設の大部分が立地する、我が国原子力産業にとって最重要の拠点に成長した。青森県の皆様の理解と協力に対して、深甚なる感謝の意を表明したい。今回の年次大会を機会に、青森県の皆様と関係者が原子力産業の将来展望とその使命を共有されることを祈念したい。