[第34回原産年次大会] 概要報告 セッション1

【セッション1「原子力−地球環境になぜ必要か」】
4月25日 (水) 14:50〜17:30

議長:秋元勇巳 三菱マテリアル (株) 会長

<基調講演>
「地球温暖化対策」
森嶌 昭夫 (財) 地球環境戦略研究機関理事長

<パネル講演>
宮本 一 関西電力 (株) 副社長
A.ハワード 米国原子力エネルギー協会 (NEI) 上級副理事長
李 東暉 中国国家原子能機構 (CAEA) 副主任
L.エチャバリ 経済協力開発機構・原子力機関 (OECD/NEA) 事務局長

<コメンテーター>
J.ブシャール 仏原子力庁 (CEA) 原子力開発局長

<パネル討論>

<共同声明の発信>

2000年11月にオランダのハーグで開催された COP6 (国連気候変動枠組み条約第6回締約国会議) では、地球温暖化問題解決策としての原子力の位置付けをめぐり、賛否が明確に分かれた。結局、会議は決裂し、京都メカニズムにおけるクリーン開発メカニズム (CDM) に原子力を適用しない方向で、議長案がまとめられたが、4月11日に出された新しい議長案では、原子力を共同実施 (JI) においても排除するとされている。

原子力をめぐる動向は、欧米を中心に複雑化を極めており、欧州では脱原子力の動きが加速する一方、米国では電力の規制緩和市場において、原子力の競争力が評価されてきている。一方、アジアでは、日本、中国、韓国等において、原子力は依然として環境保全ならびにエネルギー・セキュリティの観点上重要であり、今後も積極的な開発利用が期待されている。

先進国ならびに途上国が経済活動を維持・拡大しながら、温室効果ガスの排出を削減、抑制していく上で、効果的な発電技術として原子力を利用していくことの重要性は明白であるし、また、原子力技術が発電以外にも活用され、持続可能な社会発展に寄与する点も地球環境にとって有益なところである。

原子力の扱いをも含む京都議定書の細部は、来る7月に開催される COP6 再開会合の場で決定される予定であるが、議定書からの離脱を宣言した米国の対応も視野に、事態は極めて流動的である。議定書が仮に発効しても、日本では、当初の目標である新規原発20基建設が不可能である現状では、温室効果ガス6%削減を達成することは困難といわれている。

そこで、このセッションでは、地球環境を配慮した原子力の開発・利用をめぐる先進国、途上国の政策を紹介し、持続可能な発展のために、原子力の効果的活用を促進する方策を議論した。さらに、これを参考に、地球温暖化問題解決に向けた具体策の一環として、COP6 再開会合等の関連の国際交渉で活かすために、最後にパネリストの承認を得て共同声明を出した。

<基調講演>
「地球温暖化対策」
森嶌 昭夫 地球環境戦略研究機関理事長
(1) 京都議定書と日本の二酸化炭素 (CO2)削減

IPCC (気候変動に関する政府間パネル) によると、産業革命後、大気の CO2 濃度は30%近く増加し、地上気温の平年差も倍になっている。21世紀末には、さらに約2℃気温が上昇し、海面も50cm近く上がると予測されている。現在、すでに兆候が現れており、喫緊な対応が必要である。

日本の CO2 排出総量は、炭素換算で3億2,000万トンである。これは、世界全体 (62億トン) の4.9%で、世界で4位になる。

1997年に京都で開催されたCOP3では、日本の削減目標は、2010年までに1990年比の6%削減を割り当てられた。6%のうち約5%は、京都メカニズムおよび吸収源でまかなうことになるが、日本は、1973年のオイルショック後、すでに省エネを相当実施しており、この数値はたいへん厳しい。また、COP3後の CO2 排出量は、1998年時点ですでに1990年比の5.6%増加しているため、日本は10%以上の削減を行わなくてはならない。

(2) CO2 削減と原子力発電

ヨーロッパの最近の動向は、脱原子力発電と新エネルギー (風力) の開発傾向にある。さらに COP6 でも、欧州連合 (EU) は、京都議定書の削減対策として、CDM の対象としての原子力発電を認めないという結論になった。一方、米国のブッシュ政権は、温暖化対策として、京都議定書からの離脱を主張するとともに、途上国参加を求める声を強めている。

(3) 2010年から2020年に向けての日本の温暖化対策と原子力発電について

現在、日本の原子力発電は、1999年度で国内総発電電力量9,179億kWhの34.5%、一次エネルギー供給の13.7% (原油換算8,084万キロリットル) を賄っている。化石燃料で賄った場合に比べ、約20%の CO2 削減になる。

COP3前の日本の CO2 削減目標は、1990年の基準の安定化を目指し、 CO2 排出の少ない原子力発電20基増設 (現存51基) を織り込んでいた。しかし、高速増殖炉「もんじゅ」やJCO事故後、原子力発電の増設計画および立地が厳しくなった。

現在、中央環境審議会および産業構造審議会での議論では、CO2 削減対策として税制の取り込みや、当初の20基増設から原子力発電7基ないし13基の増設計画などの対策が検討された。

一方、 CO2 を排出しない発電源としての新エネルギー開発は、太陽光発電、風力発電、太陽熱利用、温度差エネルギー、廃棄物発電、廃棄物熱利用、黒液・廃材などの利用が考えられるが、1999年の1次エネルギー総供給で1.2%から、2010年には3.1%へと向上できる。しかし、多大の投資を必要とする (新エネルギー開発政府予算2001年度1,105億円)。

(4) 温暖化対策としても原子力発電は不可欠

日本は、天然ガスの供給制約やヨーロッパのように国外の電力の供給システム構築も難しい。今後、2050年頃までは、教育に対する投資を行い、原子力を含めたベストミックスで共存させていくのが妥当である。

<パネル講演>
「原子力−地球環境になぜ必要か」
宮本 一 関西電力 (株) 副社長
(1) 地球温暖化問題と原子力発電の必要性

地球温暖化問題には、3つのE (「経済発展 (Economy)」、「エネルギー供給 (Energy)」、「環境保全 (Environment)」のトリレンマの同時解決が重要である。しかし、特に途上国の急激な人口増加により、将来、 CO2 の排出は大幅な増加が予測されている。

京都議定書では、国別の温室効果ガス削減目標が設定され、日本は2008年〜2012年の間に1990年比の CO2 の6%削減が必要である。この目標を達成するために、日本は、省エネルギー、新エネルギー、原子力発電の推進が前提となっている。しかし、新エネルギーと省エネ法の強化によるオイルショック2回分の省エネルギー達成は非常に厳しい。また、削減内訳も、具体的ルールが未定である吸収源により3.7%、京都メカニズムにより1.8%を見込んでいるなど不確定で厳しいものと認識されている。

日本の目標達成に向けた基本的事項として、1999年4月に「地球温暖化対策に関する基本方針」が閣議決定され、省エネルギー、新エネルギー、原子力発電の推進、ライフスタイルの見直しの合わせ技による地球温暖化対策が必要である。また、2010年は地球温暖化問題を解決するための一里塚にすぎないことを認識すべきである。さらに、地球温暖化対策には、経済発展による投資も必要である。

現在、総合資源エネルギー調査会では、新たな長期エネルギー需給見通しの策定に向けた審議が進められているが、昨今の地球温暖化対策の進捗状況と経済情勢を踏まえれば、さらなる CO2 削減の達成は大変困難である。

(2) 原子力発電による CO2 排出抑制効果

電気事業からの CO2 排出量と CO2 排出抑制効果をみると、原子力発電による抑制効果が、1999年度で約2.3億t− CO2 と最も大きく、日本の CO2 排出量 (1997年度で12.3億t- CO2) の約20%に相当する。また、電気事業の CO2 排出原単位の国際比較によれば、日本は原子力発電比率の高いフランス、水力発電比率の高いカナダに次いで欧米主要国に比べ低い水準である。さらに、日本の電源別 CO2 排出原単位の比較によれば、建設から運用・廃棄までの全過程の環境への負荷を予測する評価方法 (LCA)、で見ても原子力発電が優位となっている。

(3) 国民的合意に基づく安全性の確保を大前提とした原子力発電の一層の推進

原子力発電の一層の推進には、安全性の確保を大前提として、国民的合意を得ることが不可欠である。中央環境審議会の基本方針では、「安全性の確保を前提として、国民的議論を行い、国民の理解を得つつ進める」と明記されている。さらに「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」では、「原子力への国民の理解促進のため、国民の視点に立った情報提供と様々な形での国民との対話」が明記されている。

一方、国民的合意を得るには、市民レベルでの草の根的な議論を「地道に息長く」、「共生、共感を求めて」行う対話活動の推進が必要である。例えば、円卓会議のような開かれた会議の場で、国民にわかりやすく、同じ土俵で議論すべきであり、また、電気の供給県 (立地住民) と消費県 (消費者) との間での負担と利益の共有による対話も重要である。さらに、世界の原子力開発・利用の推進を図るためには、原子力関係者の国際的連携が必要となる。

「原子力、環境、そして持続可能な発展への道」
A.S.ハワード 米国原子力エネルギー協会 (NEI) 上級副理事長

国連の発した「環境と開発に関する1992年リオデジャネイロ宣言」に込められた最も重要なメッセージは、世界全体が、将来の経済や環境、社会のニーズのバランスを、確実かつ持続可能な形で図っていかなければならない、というものであったが、アメリカでは、この持続可能性という目標に原子力発電が著しい貢献を成し得ることが日々明らかになっている。

原子力技術は、持続可能な発展のために必要不可欠なニーズに応えるものである。疾病予防と治療、食糧の調達と保全、真水の供給と発電などが、その例である。

こういうきわめて重要な技術の中で最も重要なのが、発電としての利用である。原子力は、世界の電力供給量の17%を発電している。今後、燃料供給が確保されれば、先進国及び発展途上国の双方で、原子力発電は、持続可能な発展に貢献する。

また、原子力は、温室効果ガスの排出やその他の大気汚染を生じさせない唯一の大規模な電源である。1999年、アメリカのエネルギー省エネルギー情報局の調査によると、原子力発電所の発電量が増えると、温室効果ガスの全体の増加率が比較的小さくなることがわかった。

アメリカでは、連邦法の大気浄化法により、さまざまな大気汚染物質に関して濃度制限値を設定している。原子力なしには、こういう大気浄化基準を達成できない。どの州も同法を遵守できなければ、新規の火力発電所や、大気汚染物質を排出するその他の産業・製造施設の建設を厳しく制限せざるを得ないが、これでは、かえって経済発展を抑制してしまう。

しかし、依然として地球全体の問題が残っている。それは、今後、次世代を担う世代が、自らのニーズを満たしていく能力を損なわずに、どうしたら増え続けるエネルギー需要を充足していけるのかということである。

例えば、市場のインセンティブは、有益な持続的変化を成し遂げる方法のひとつである。そのようなインセンティブは、多くの先進国で運用されており、より現実的な市場メカニズムに依存している。

また、クリーン開発メカニズム (CDM) プロジェクトは、環境に有益なテクノロジーの利用の増加を促す。世界で増え続ける都市在住の住民向けに基盤的電源が利用されなければ、持続可能な成長はできない。この種の基盤的電源で最もクリーンなのが、原子力発電である。クリーンで、持続可能な開発を効果的に促進し支援していくCDMを充実させるためにも、再生可能なエネルギー源や水力、クリーン石炭など、炭素ゼロあるいは低排出の技術に、原子力発電も加えていく必要がある。

さらに、原子力発電は、大規模な都市地域のニーズをすでに満たす電源であり、温室効果ガスや大気汚染物質の排出に寄与しない形で発電できる。原子力発電は、エネルギーや経済上の目標やリオデジャネイロ宣言の掲げる原則を達成するために、地球のエネルギー問題の解決にますます大きな貢献を行っている。

「中国のエネルギー開発と環境保護における原子力の役割」
李 東暉 (リー・トンフィ) 中国国家原子能機構 (CAEA) 副主任
(1) 中国の原子力開発

中国は、人口・資源・環境の調和ある発展達成のための持続可能な開発戦略を優先的政策としている。 中国は、石炭中心のエネルギー供給構造を見直し、水力や原子力、その他の新たなエネルギーを発電に利用していくことは、中国が電力産業・資源・環境の調和した持続的な発展をしていくために必要な解決策である。

その政策のひとつとして中国は、4つのサイトに加えて、以下の8基の原子炉が建設を開始した。

−秦山原子力発電所第2期建設 (加圧水型、60万kW 2基)
−広東嶺澳原子力発電所 (加圧水型、100万kW 2基)
−秦山原子力発電所第3期 (CANDU-6 加圧重水炉、70万kW 2基)
−田湾原子力発電所 (VVER-1000 加圧水型、100万kW 2基)

原子力開発においては、中国は引き続き「品質と安全第一」および「国際協力を通して、技術導入と自力設計および自力建設の推進」をしている。

また、原子力開発の技術的方針として、将来の標準モデルとして、30万kWの加圧水型炉に集中し、発電能力を小型、中型、大型のそれぞれの需要にあわせて、ユーザーが選択できるようにしていく。

(2) 環境汚染対策としての原子力

中国は、石炭によって深刻な大気汚染が引き起こされている。しかし、原子力発電は、火力発電のように排煙、煤塵や硫黄酸化物、重金属などの有毒物質を放出しない。

また、気候変動に影響する二酸化炭素の排出規制のためにも、原子力発電の開発は有効である。

京都議定書では、締約国が先進国であろうと発展途上国であろうと、地球温暖化やそれに伴う気候変動への対策をとる「共通であるが、区分された責任」を有していること、先進国は、過去および現在の気候変動に対し、より大きな責任があるため、より多くの義務を負うことが明確にされた。中国は、この原則に従う。そして、中国は、第10次五ヵ年計画で「原子力発電開発を適切に行う」と明確にし、化石燃料の利用効率を改善し、クリーンなエネルギーの割合を増やしていくことで、漸次エネルギー構造を変化させていく。

「持続可能な発展のために原子力を」
L.エチャバリ 経済協力開発機構・原子力機関 (OECD/NEA) 事務局長
(1) 原子力の現状

世界で今日、435基の原発が運転されており、総電力の16%をまかなっている。一方、OECD 諸国では350基が動いており、24%の電力を占めている。原子力は次のように定義することができる。成熟した技術、OECD 諸国では安全性が確立済み、既存の原発は規制緩和市場においても競争力を保有、大規模な電力の安定供給が可能、HLWの最終処分が未解決、社会的に危険視される。また、原子力は電源の多様化、エネルギー安全保障、環境保全に貢献している。

(2) OECD 諸国内における原子力の昨今の傾向

経済性が高まるにつれ、以下のことが顕著となっている。規制緩和市場における原子力による電力供給安定性、原発保有をめぐる流動性、90%に近い稼働率達成、許認可の運転期間60年への延長。2020年までの世界の発電源では、原子力がほぼ現状の比率を維持することが予測される。OECD 諸国内では、天然ガスの比率が飛躍的に拡大する一方、原子力の比率は縮小する。

(3) 原子力は持続可能なエネルギーか?

OECD 諸国の持続可能な発展には、3つの側面:社会、経済、環境が密に絡んでいる。原子力を持続可能な発展の観点から、NEA は OECD 諸国の政策如何にかかわらず、関連事業に協力してきた。経済的側面では、原子力の競争力を高めるために第四世代炉の開発、政府補助金の撤廃が重要であるが、外部コストはすでに内包済みという利点もある。環境面では原子力利用における二酸化炭素の排出ゼロ、天然資源の有効活用、高い放射能管理、安全規制、国家・国際レベルにおける第三者責任制度の徹底があげられるが、一方、放射性廃棄物管理のためには市民参加による政策決定が重要である。社会面からは、高い資質を備えた労働力と組織、また核不拡散のための国際的枠組みを確保しているが、高い大衆の関心と政治性ゆえに大衆の懸念を払拭する努力ならびに国際協力の推進が行われている。

政府の役割ならびに OECD の協力分野としては、加盟諸国の様々なエネルギー源間の比較ならびに調整、協力枠組み支援、社会的リスク低減、負担の公正化、第四世代炉等の技術促進がある。さらに、高レベル放射性廃棄物 (HLW) の最終処分、デコミッショニング、核不拡散体制の維持、非加盟国との技術協力、大衆の政策決定参画への協力も含まれる。

<コメント>

J.ブシャール フランス原子力庁 (CEA) 原子力開発局長

CEAは、地球温暖化防止策として原子力の積極的な開発利用を実施しているが、その一環として、プルトニウムのマルチリサイクルを推進しており、技術開発を推進している。一方、将来型炉に必要な条件としては、経済的競争力、高い安全性、廃棄物の最小限化、燃料の最大限利用、核拡散性の最小化があり、これらは、原子力の持続可能な発展とPAに不可欠である。将来型炉は、国によって関心が異なるが、CEAは技術として以下のものを重視している。高温ガス炉技術、受動的安全性の高度化、高温抵抗性、高速炉技術、ワンス・スルーもしくは再処理関連技術、電力や水素といった様々な応用技術である。

<パネル討論・質疑応答>

まず、議長より以下の3つの論点が指摘され、それらについて逐次パネリストが答えた。それらは、1) 地球温暖化防止対策としての原子力の開発利用促進に向けての各国の努力について、2) COP 対策として具体的に原子力産業界が行うべきこと、3) 原子力利用において日本にとっても不可分な要素であるプルトニウム利用の推進はいかに進められるべきか、である。

1) 各国の努力について

宮本氏:原子力の開発利用において考慮すべきことは4つある。まず、一般国民の関心は原子力の安全性にある。経済性については、原子力は化石燃料と十分競合できる状態にあり、稼働率も高くなっている。廃棄物管理では、着実な努力がいまだ求められている。また、特に重要な点として、原子力政策について国民全体のコンセンサスを得ることが不可欠である。

ハワード氏:政府も議会も、炭酸ガスを削減、しかも低いコストで削減することの重要性を認識している。そこで、世界経済の発展を減速させることのないように、エネルギー対策を施す必要がある。二酸化炭素のもたらす問題ならびに原子力における環境的価値を意識した結果、世論調査において65%が原子力を好意的に評価している。

李氏:政府は、地球温暖化問題と資源配分の調整を今後10年間行う予定であり、その中で原子力開発利用の促進は重要と位置付けられている。特に、東部沿岸部において必要となる。一方、石炭火力を縮小化すると同時に、クリーンコールや水力利用を推進することも重要とされる。資本投資が今後、環境保護に向けられることになる。

エチャバリ氏:OECD/NEA が最近出版した、OECD 諸国における持続可能な発展のための今後のエネルギー利用評価・予測では、原子力の他に風力、太陽エネルギーなども含めており、新エネルギーも公平に評価している。すべてのエネルギー源は、持続可能性に直結している。

ブシャール氏:原子力は欧州では逆境にたたされており、地球温暖化対策にマイナスの効果を及ぼしているのではという点について、欧州では実際に、二酸化炭素の問題は拡大しており、大衆の意識も高い。フランスは、その中でも特異な状況にあり、石炭も天然ガス資源もないので、原子力に依存せざるをえない。国民に、原子力の重要性ならびに他のエネルギー源を利用する際のコストを納得させる必要がある。

2) COP への対策として

森嶌氏:京都議定書をめぐる動きとして米国の対応に留意する必要がある。しかし、途上国が参加しないことは周知の事実であって、その参加を促すことは、先進国が積極的に地球温暖化問題に取り組む姿勢なくしては、極めて困難である。また、米国政府は経済への悪影響を懸念しているが、これも京都メカニズムを効率よく利用することで解決可能である。米国政府はただ、議定書を批准しないですむように口実を掲げているにすぎず、国益を守る重要性は、EU も同じである。各国それぞれ、国益を損ねないように効果的な方策を有しており、重要なことはそれを他の国に押し付けないことである。従って、EU も日本の立場を十分理解し、対米国については、日本政府も手段をもって交渉に臨むべきである。これは、力による政治であり、戦術を用いない限り相手の政策を変えることはできない。

COP6 再開会合は、楽観視していない、というのも複雑な問題を交渉するには、期間が短すぎる。交渉を焦り、受け入れがたい結果を招くよりも、じっくりと COP7、COP8 までかける用意で対応していくことが望ましいといえる。

3)プルトニウム利用

時間切れとなり、扱うことができなかった。

最後にパネリスト全員による共同声明が議長より紹介され、セッションを終了した。

共同声明
第34回原産年次大会セッション1
(2001年4月25日、青森)

世界で430基の原発が運転されており、年間18億トンの二酸化炭素の排出を防いでいる。原子力による電力は世界で16%を占めており、原子力の安全性ならびに経済性は顕著である。

人口増加と経済拡大に伴い、世界における電力需要は増大し続けることが予想される。原子力は、環境を保全しつつ、増大する電力需要を満たす重要な役割を果たす。原子力は、ライフ・サイクル・アナリシスが示すように、すべてのエネルギー技術のうち、二酸化炭素の排出が最も少ないエネルギー源のうちの1つである。

原子力産業界は、他の産業界と比べ、高度かつ洗練された技術により廃棄物管理を行っている。原子力は、電力生産のみならず、医療、農業の分野においても、人類に不可欠とされる、持続可能な社会のための技術を提供している。

従って、世界の原子力界の代表は次の点を提案する:

  • 高い安全性を確保しながら、気候変動の問題を解決するために、原子力の効果的利用の促進ならびにその貢献の認識を求める。

  • 京都メカニズムに適用されるよう、原子力が現在ならびに将来の二酸化炭素排出削減技術であることの確認を求める。

  • クリーン開発メカニズムならびに共同実施が原子力開発において、個々の国の選択として活用されることを促進する。

  • 世界の原子力産業界は、世界の環境会議において協力ならびに結束を行う。

以 上