[JAIF] 第34回原産年次大会を終えて

第34回年次大会を終えて
平成13年4月27日
(社)日本原子力産業会議

当会議は、4月24日から同27日まで青森市および六ヶ所村において第34回原産年次大会を開催した。今回の大会には海外から11カ国・地域および3国際機関を含む過去最高レベルの1,470名が参加した。また、この機会に若い世代が開催したフォーラムには国内外の約250名が集まり、ここでも活発な意見交換が行われた。また大会に先立って、六ヶ所村原子燃料サイクル施設、東通原子力発電建設所、大間原子力発電所予定地、竜飛ウインドパーク等への施設訪問が行われた。

今回の大会における発表・討論を通じ、原子力関係者は、安全を基本として真摯に研究・開発・利用の努力を積み重ねるとともに、一層積極的な情報公開による信頼の確保が必要であり、同時に原子力を中核として地球環境の保全への努力を続ける諸外国との協力を促進することが肝要であるとの認識を改めて固めた。参加者は、六ヶ所村で試運転に向けて順調に建設されている再処理施設の現状を目の当たりにし、またこれに引き続いてセッションでの地元の方々の意見をもとにした討論を通じて、ウラン資源のリサイクルを目指す原子燃料サイクルの大切なステップとしての「プルサーマル計画」が原子力発電所立地地域の理解を得つつ着実に実施に移されることが緊要であることを痛感した。

  • 開会セッションにおいては、国内外の政府および国際機関の代表者から、地球温暖化を抑制しつつ人類の持続的発展をはかるためにも原子力発電の利用を推進することが必要であるとの共通認識が表明・確認された。

  • セッション1「原子力─地球環境になぜ必要か」では、地球温暖化防止枠組条約の京都決議が、米国・開発途上国の共同認識を得て実行に移され、それに伴うクリーン開発メカニズム等の方策の中で原子力発電が適切に活用されるよう、世界の原子力関係者が今後の国際環境会議の場においてさらに積極的に発言するなどの共同活動を行うことが宣言された。

  • セッション2「原子燃料サイクル施設のある日・英・仏3地域から世界へ」では、知事等3地域の代表者がはじめて一堂に会し、それぞれの経験・見解を披露した。3地域は風土・経済の背景を異にしながら実は共通の特色を有していることが明らかになり、今後一層の人的交流をすすめ経験を分かち合うことが提案され、意見の一致をみた。

  • 25日夜に開催された「市民の意見交換会」(第8回目)では、参加者から提起されたコメントに基づき、安全確保の基本、情報公開のあり方、高レベル放射性廃棄物の地層処分計画などについて、内外のコメンテーターを交えて意見交換が行われた。情報公開については、発信側に対し、正確・迅速かつ理解されやすいものでなくてはならないという困難な命題に取り組む必要性が強調され、同時に情報の受け手である市民側においても、これを咀嚼する能力を身につけることの必要性が指摘された。高レベル放射性廃棄物の地層処分については、諸外国の進捗状況とわが国の研究開発の成果が紹介されるとともに、日本の科学者が解明した南アフリカにおける数億年前の天然原子炉の事例を引用し、放射性物質が超長期にわたって地層中に捕捉され、ほとんど移動しないことなどが説明された。

  • 六ヶ所村に移って開催されたセッション3「使用済み燃料再処理技術はいかに確立したか」では、商業再処理の先進国であるフランスとイギリスのプラントおよびわが国の東海再処理工場におけるトラブルの発生と対応を含めた成果・経験が紹介され、試運転をステップ・バイ・ステップで慎重に行うことの大切さとその段階で不具合を徹底的にえぐり出すこと、これによって日本原燃の六ヶ所再処理工場について事故発生を未然に防ぐことはもちろん、起こりうる事象を率直にあらかじめ説明することの必要性が指摘された。

  • セッション4の「サイクル事業と地域の共生を考える」では、六ヶ所村、東海村ならびに柏崎市の首長を中心に村民代表や学識者を交えて、活発な意見交換が行われた。経済の高度成長の破綻によって地方の意識が大きく変化しつつある中で、事業者は地域のニーズに適合した新たな地域づくりへの参画が要請されていることが認識された。事業者は地域の持続的で自発的な発展に向けて従来の意識を変革して協力するとともに、地域も国や事業者に具体的で明示的な共生の方策を働きかける必要のあることも指摘された。

    セッションの後半に行われた村民との意見交換では、原子力施設のある地域と電力消費地とでは、エネルギー生産への貢献に対する認識のずれがあることの意見が出され、さらなる情報交換の必要性が指摘された。また、日本原燃の本社が六ヶ所村に移転される計画があることが明らかにされ、その地域への波及効果について関心が示された。

  • セッション5の「電力自由化の中で再評価される原子力」では、欧米諸国における電力自由化政策によって大きく変貌する原子力発電産業の最新情報が明らかにされた。特に、米国においては、電力事業等の規制緩和策によって激しく展開される市場競争の中で原子力発電がベース・ロード電源として重要な地位を占めていることが解説された。また、フィンランド電力会社の代表から新たな原子力発電所と使用済燃料最終処分場の建設について、すでに政府への申請が行われていることなどが説明された。

  • セッション6の「高レベル放射性廃棄物処分へのステップとその推進方策」では、スイスおよび米国において、さまざまな曲折を経つつも着実に地層処分の実施に向けて進んでいる状況が紹介され、わが国の最終処分の法律制定や事業主体等体制の確立の経緯が報告された。

    海外諸国の経験では、処分事業に係る地元の当局と住民が、早い時点から立地と地域開発のプロセスに参画することや、事業計画などに関する情報の透明性を確保することが重要であるとの指摘がなされた。
以上