ロシアの原子力技術開発の動向に関する懇談会
〜ロシア クルチャトフ研究所 革新エネルギー研究所のクズネツォフ第一副所長を招き〜
当協会と協力協定を有するロシア研究センター「クルチャトフ研究所」の革新エネルギー研究所のV.クズネツォフ第一副所長が来日したのを機に、12月17日、当協会にて「ロシアの原子力技術開発の動向に関する懇談会」を開催しました。
クズネツォフ氏は、その一例として、ロシア極北の石油・ガス資源開発に原子力技術を活用したプロジェクトについて紹介しました。
まずは、北極海航路・船団における原子力利用の一例である原子力砕氷船について、北極海という特殊な環境の中でも長期間の燃料交換なしで航行が可能で、経済性にもすぐれ(ディーゼル船の1/2の燃料コスト)、どんな出力にも調整ができるとして、その開発の歴史と各砕氷船の特性、貨物運搬の実績について紹介しました。
2007年就航、原子力砕氷船「戦勝50周年号」
現在運航中の6隻の原子力砕氷船は連続航行3年可能なKLT40炉を搭載していますが、建造中の最新式砕氷船は7年連続航行が可能な原子炉RITM-2000を搭載し、2015年までに就航予定、同タイプの砕氷船が2020年までに3隻就航予定であるとのことです。これとは別に、世界で唯一航行するコンテナ輸送のための商業用の原子力砕氷船もあり、ロシア領海内での航行に何の問題も発生しておらず、国際航路での活用について提案していると述べました。
さらに、極北の大陸棚の資源開発について、その水深や氷面下という特異の条件下での掘削、ガスの液化に必要な電力の安定的供給やメキシコ湾の原油流出事故のような環境負荷を考えると原子力潜水艦を使った海中での作業に頼らざるを得ないと指摘し、現在、そのプロジェクトを関係者と協議中であると述べました。ガス液化に伴う費用は、原子力利用(300MW炉の2基)の場合、天然ガス利用と比較して1/3となり、経済性にすぐれていること、またテロ攻撃回避の観点から、原子力潜水艦を液化ガス輸送タンカー(容量15万m3)として利用し、海水中を北極海経由で米国や日本に輸送することを外国の研究者とともに検討していることを紹介しました。
クズネツォフ氏は、講演の後半で、事前に会場参加者から寄せられた関心項目、質問項目に答える形で、最新のロシアの原子力開発状況について紹介しました。
2010年の原子力発電電力量は1690億kWh、稼働率は約81%を予測しており、順調な伸びをみせていること、発電所周辺への放射能影響も極めて少数か皆無であると述べました。なお、連邦プログラムに従い、原子力発電のシェアを現況の16%から25〜30%拡大することとしていますが、軽水炉の開発については、既存のV-320(VVER1000)をより進化させた炉、NPP2006(VVER1200)を開発し、現在建設中であることに言及しました。NPP2006の改良された各技術特性の他、安全性確保のコンセプトについて紹介し、欧米の原子炉には劣らない品質であると述べました。
高速炉の開発については、現在、建設中のベロヤルスク原子力発電所4号機(高速炉BN800、ナトリウム冷却炉)は、建設作業員不足で若干の遅れが出ているもののほぼ計画どおりであり、建設に必要な資金の40%が既に投下、臨界は2013年、商業運転は2014年の予定であると述べました(フルMOXによる運転は2016年を予定)。鉛ビスマス炉については、ロスアトムと民間企業の合同出資により、商業用プロトタイプ100MW炉を作る計画であること、また、鉛炉BRESTの研究チームは、この先10年以内にプロトタイプ製造を目指していることに言及しました。
最後に、米ロの原子力協定が12月9日に米国議会で採択され、この動きが日ロ原子力協定の早期発効を後押しし、具体的な協力が進むことへの期待を表明しました。
懇談会の光景
お問い合わせは、国際部(03-6812-7109)まで
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