[原産声明] 10月8日 17時15分発表 top
English-site


民間原子力関係者の自己改革に向けて

平成11年10月8日
(社)日本原子力産業会議

去る9月30日に生じた茨城県東海村の(株)ジェー・シー・オー核燃料加工工場の中濃縮ウラン転換工程における事故は、原子力安全の基本にかかわる臨界事故であり、重度な放射線被ばく者を発生させ、また一般住民に避難等、直接大きな影響をもたらしたという点で、我が国が原子力平和利用を開始して以来初めての事態である。また、我が国では制度創設以来40年にわたって発動されなかった「原子力損害賠償法」が適用される初めてのケースとなった。

この事故により、とりわけ原子力利用の当初より一貫して平和利用の意義を理解し協力の手を差し伸べてこられた、東海村地域住民の方々の信頼を裏切ったことを深く反省する。民間原子力関係者は安全強化への行動を起こすことを通じて、地域住民の信頼回復に向けて最大の努力を行う所存である。

また、原子力発電の安全実績が評価され、国際的な貢献が期待されてきた我が国が、その原子力安全対策について世界の懸念を惹起したことを重く受け止める。

今回の事故は未だ調査中ではあるが、同施設の運転において重大な安全規則違反が行われたことが直接的原因と考えられ、当然ながらこのような規則違反に対する経営上の責任は厳しく糾弾されるべきところである。もともと、その活動において放射線のリスクを伴う原子力利用にあっては、いかなる些細な活動であっても十分な安全性チェックが行われるべきであり、この度の事故において、原子力安全防護の基本である多重なチェック機能が働かなかったことを特に留意する。

地球温暖化防止対策などにおいて原子力発電の役割が期待されているなかで、原子力の安全性についての社会の信頼を著しく損ねたことは、遺憾の極みであり、民間原子力関係者として、この事故のもたらした状況を重大に受け止め、早急にその要因を深層にわたって徹底的に突き止め、対応策を講じることとする。

今回の臨界事故を踏まえて、さらには近年来のいくつかの不祥事の根本要因をも念頭に置き、企業トップを含む組織をあげて原子力安全対策を格段と向上させ、社会の信頼を回復するため、健全な原子力開発体制の再構築に努める。

原子力施設の建設・運転では、安全確保はもとより緊急時措置についても当事者が自己責任を貫くことが基本であり、これを改めて肝に銘じ、民間においては例えば下記のような行動を早急に開始する。また、同時に原子力平和利用活動に関する情報の一層の公開に努める。

なお、さらに安全確保のための教訓を追求することを目的に、今回の事故等の原因を精査するため、当会議に調査グループを設置する。


  1. 原子力の安全確保は、経営トップの最大の課題であることを、今一度確認するとともに、安全を最大の価値とする経営方針を企業全体に徹底する。

  2. 企業の各組織の最高責任者は、このような企業経営に基づく「原子力安全文化」を浸透させるため、各組織の構成員の分担すべき業務の意義と責任、規則・基準の安全性の考え方の理解および遵守、ならびに安全意識の徹底をはかり、さらには異常事態の対応も含めた総点検を実施する。

  3. 各組織の経営において、担当部門の誤謬を防ぐため、監査の充実、あるいは部門外の役員や専門家などによるチェック機能の多層化をはかる。

  4. とくに今回、規則の遵守、規律の厳守という点に重大な欠陥がうかがわれることから、現場における技術レベルのみならず倫理・志気の向上について、経営層が率先して格段の関与を行う。

  5. 安全対策の一層の高度化のため、民間の原子力関係者間の情報の相互交流を促進し、施設運転等の経験と教訓を共有するよう必要な措置を講じる。

以上

Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. (JAIF) All rights Reserved.