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下記文章は、第146回国会衆議院科学技術委員会公聴会の議事録で、参考のため転載させて頂きました。この公聴会は、去る11月24日(水)午前9時30分から、原子力災害対策特別措置法案、並びに原子炉等規制法の一部改正案について開催されたのもで、公述人として4名が出席しました。当方、日本原子力産業会議の副会長・森 一久もその一人として出席し、意見を述べ、答弁いたしました。

第146回国会衆議院 科学技術委員会公聴会議録 第一号

平成11年11月24日(水曜日) 午前9時30分開議

出席委員
委員長 北側 一雄君
理事稲葉 大和君理事小野 晋也君理事河本 三郎君 理事山口 俊一君
理事辻 一彦君理事平野 博文君理事西 博義君 理事菅原 喜重郎君
岩下 栄一君江渡 聡徳君岡部 英男君木村 隆秀君
谷垣 禎一君三ツ林 弥太郎君望月 義夫君森 英介君
近藤 昭一君吉田 治君斉藤 鉄夫君吉井 英勝君
辻元 清美君中村 喜四郎君
科学技術政務次官 斉藤 鉄夫君
公述人
(財団法人高度情報科学技術研究機構顧問) 能澤 正雄君
公述人
(茨城県東海村村長) 村上 達也君
公述人
(社団法人日本原子力産業会議副会長) 森 一久君
公述人
(原子力問題情報センター常任理事) 角田 道生君
科学技術委員会専門員 宮武 太郎君


本日の公聴会で意見を聞いた案件

原子力災害対策特別措置法案(内閣提出第70号)

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第71号)


○北側委員長 これより会議を開きます。

内閣提出、原子力災害対策特別措置法案及び内閣提出、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案の両案について公聴会を開きます。

この際、公述人に一言ごあいさつを申し上げます。

本日は、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

次に、議事の順序について申し上げます。

まず能澤公述人、村上公述人、森公述人、角田公述人の順に、お一人15分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

なお、公述人から委員に対して質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

それでは、能澤公述人にお願いをいたします。

○能澤公述人

今回の法律改正に際しまして、一言、感想といいますか、意見を述べさせていただく機会を与えられたことを感謝いたします。

原子力防災の方では、昭和54年3月にアメリカでスリーマイル島の大事故が起こりまして、後で考えますと避難等は必要ではなかったのでございますが、いろいろな情報の流通が、とにかくワシントンのNRC本部から発電所までの電話線が8時間ジャムアップして通じなかったというようなことから避難の勧告が出た例がございます。いずれにしましても、この事故を契機といたしまして、世界的に、原子力発電所で起こった事故の場合の原子力防災を真剣に考えないといけないという機運が生まれてまいりました。

日本も例外ではございませんで、昭和54年7月に、その事故を教訓といたしまして、政府は中央防災会議で「原子力発電所等に係る防災対策上当面とるべき措置について」ということを決めております。その中では、事故が起こりました場合に、事故対策本部を政府につくる、緊急技術助言組織を組織して技術的、専門的な意見を求める、これは原子力安全委員会が当たることになっております、そのほか、専門家の現地への派遣、放射線の環境モニタリング等々について当面とるべき措置というのを決めております。

一方、原子力安全委員会は、約1年の審議を経まして、現在もそういう名前でございますが、原子力発電所等周辺防災対策専門部会というのを設けまして、技術的、専門的な意見を集約したわけであります。これが昭和55年の6月にまとめられまして、現在、通称防災指針と言っているものが出されたわけでございます。

ここでは、原子力防災の対象としましては主として原子力発電所を念頭に置きまして、原子力発電所から半径8キロないし10キロの間の区域を防災の重点区域とすることを提案しております。これは、実際にいろいろな計算をしまして、現在日本が扱っております軽水炉の場合に、TMIと同じような事故が起こったらどこまで放射性物質の放出が影響を及ぼすかということを計算すると同時に、ヨーロッパ諸国はどういう防災の重点区域をとっているか、例えばフランスは10キロ、ドイツは6キロから10キロというようなことがありまして、イギリスはどういうわけか2キロないし3キロでございますけれども、そういうものを参考にして決めたわけであります。

そのほかに、簡単に防災専門部会と申し上げますが、防災専門部会のモニタリングの指針とか、防護措置として、どういうときになったら屋内退避、どういうときになったら避難等々をと勧告しているわけであります。

それで、当面とるべき措置というのは、私個人としましては、当面というのは一体いつまで当面というのかという疑問を持っておりましたが、御承知のように、阪神・淡路大震災がありました後、国土庁が音頭をとりまして、防災全体についての見直しをしたわけでございます。原子力防災についても例外ではありませんで、その中で、人工物の災害対策、約10項目ほどあったと思います、鉄道とか船とかの大火災とか、そういったものに対する災害対策をどうするかという再検討を加えまして、それが原子力災害対策編として平成9年の6月にまとめられております。

したがいまして、当面とるべき措置というのは19年間の有効でありまして、この平成9年6月の原子力災害対策編ができましてそれに置きかわったというふうに認識しております。

その後、御承知のように、平成7年12月に高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の2次側のナトリウム漏えい事故が起こりました。当時それを所有し運転しておりました動燃の不手際もあり、社会的な問題となりました。平成9年3月には、今度は東海村のやはり動燃再処理工場で、低レベルの放射性廃液のアスファルト固化施設で火災がありまして、火災だけならよかったのですが、よかったというのは言い過ぎでございますが、10時間後に爆発が起こった。これは大変なことでございます。そういうことで、非常に不信感を皆さんに抱かせたということであります。

原子力安全委員会は、それを一応念頭に置きまして、防災専門部会に原子力防災の実効性についてもう一遍よく見てくれという依頼がありまして、これが平成10年の4月から本年の4月にかけて約1年間審議を尽くしたわけでございます。この場合、原子力発電所所在地の市町村協議会とか、それから道府県の代表者の方の御意見もよく伺いまして、ことしの4月にこの専門部会は「原子力防災対策の実効性向上を目指して」という報告書をまとめております。

その中で、実効性を高めるために、今までになかったようなことで特に私としては強く言ってほしかったのは、原子力事業者の防災の体制をしっかりつくってもらいたい。それまでの防災指針ないしは当面とるべき措置にしましても、国土庁がまとめました原子力災害対策編にしましても、これはどうも放射性物質の放出ないしは放射線が敷地外に影響を及ぼすらしいと事業者が判断して第一報を規制官庁に入れる、または市町村、県等に報告するというシステムになっておりまして、その第一報の中身についてはすべてが事業者に任されていて、事業者側でどういう体制を組んで対応するのかというのははっきりしませんでした。

そういう点でいつも問題になりますのは、報告がおくれるということであります。これは、ある点ではやむを得ないことがありまして、事業者側としましては、大きな事故が起こった場合に、それを鎮静するというか、何とか収拾したいと全力投球をしますので、どうしてもそちらに精力が行ってしまうという面もあります。しかし「一方、初めからといいますか、平常時から準備をしておけば報告も順調にいくのではないかということで、我々としては、もう少し事業者側と敷地外の防災を考える組織間の連携がうまくいくようにしてほしいという要望を持っていたわけであります。

今回、この法案ではその点が非常に詳しく決められておりまして、例えば、原子力事業者は防災業務計画を策定しないといけないとか、原子力防災組織を事業者側でつくるべきである、それで、それを報告することになっております。それから、事業者側は、原子力防災管理者という人間を指名し、副管理者も含めて、その人名を規制当局に報告しないといけない。しかも、何かあったときに通報義務を課しております。

今まで、例えば東京電力の福島発電所なんかでもそうですが、どうしても報告がおくれがちであるということが、こういう事業者側での防災体制を強化することでスムーズに報告が届くことになるのではないかというふうに思います。

あともう一つ。防災には、消防、警察、自衛隊、防災の関係行政庁それから機関等が活躍いたしますが、ばらばらになっては非常に困る。防災に必要な組織がお互いに連携を持って活動するということが非常に重要であります。イギリスの場合はそういう組織を持っておりまして、オフサイトセンターといいます。

オフサイトセンターといいますのは、敷地外の防災活動のセンターだという意味でございまして、今度の法案では、緊急事態応急対策拠点施設、大変長い名前でございますが、そういう形で常置することになっているようでございます。もちろん敷地外であればどこでもいいわけでありますが、できれば8キロ前後にそういうものをつくってもらえば、何があっても、避難もする必要もないでしょうし、全体がうまくいくのではないかという印象を持っております。そのほかに、今度の法案の中では防災訓練の実施ということもうたわれておりまして、国も含めて原子力防災全体の訓練を行うということであります。

ただ、そこで、原子力防災をやるときの訓練シナリオというものに言及されておりますけれども、訓練シナリオにつきましては、私、専門家としていつも大変迷いがあります。非常に難しいのでありますが、いずれにしましても、訓練に必要な範囲でいろいろなケースを考えて、現実的なといいますか、そういうシナリオをつくっていく必要があるのかなというふうに思っております。

あと、これは全原協、全国原子力発電所所在市町村協議会からも、国の方で防災を専門にする方が現地に常駐する必要があるという要望がありましたが、今回の法案では原子力防災専門官を置くということになっておりますので、そこのところは、平生からプラントの実情をよく知ってもらっていて、いざ何かあったときに対応するということが大事でありますので、現地に駐在してよくプラントの状況を見て、何かあったときに防災に関して国との間の連絡役を第三者的に果たしていただければ大変ありがたいというふうに思っております。

簡単でございますが、私の意見とさせていただきます。(拍手)

○北側委員長 ありがとうございました。次に、村上公述人にお願いいたします。

○村上公述人 東海村の村長をしております村上と申します。

本日は、衆議院の科学技術委員会の方にお招きいただきまして、私に公述の機会を与えていただきましたことに対しまして、御礼を申し上げます。

私の方からは、事故の現場でございましたので、事故全体を概括いたしまして、それをもって今回の新法と法の改正についての評価をいたし、また、現地の東海村としましてはさらに要求したいこともございますので、述べさせていただきたいと思います。

まず、今回の臨界事故で明らかになった問題点でございますが、きのうのテレビでも報道されておりましたが、最近気になる言葉として想定外という言葉が挙げられておりました。今回の事故の特徴と発生原因、事故対応、監督官庁の姿勢、法律の不備などの問題点、いろいろ挙げればたくさんございますが、この想定外という言葉に集約されるのではないかと私は思っております。

燃料の加工事業施設について、日本政府も科学技術者も臨界事故を想定していなかったのではないでしょうかと私は思っております。私自身も事故の後わかったことでございますが、1950年代あるいは60年代の早い時期でありますが、燃料加工施設においては、アメリカとかイギリスでは8件、それからソ連においては12件の臨界事故が起きていたということであります。当然、日本においても臨界を想定した万全の措置で対応すべきでなかったのかと思っております。日本の技術や国景の資質あるいは組織に対する過信、あるいは思考の怠慢、停止があったとしか私は思えないわけであります。政府と事業者を信じてまいりました東海村民はお人よしであったのかあるいはばかだったのか、私としてはふんまんやる方ない思いがしております。

それから、今回の初動対応のおくれということが問題になっておりますが、私はその原因を挙げれば3点ほどあろうかと思っております。

それは、第一には、やはり想定外の事故だったという思い込みから臨界という事態への認識に手間取ったということが一点あると思います。

今回、村が独自に350メーター範囲の住民の避難勧告をいたしました。それに対しましては評価される向きもございますが、果たして評価されるのか、私は、今になってみますと疑問に感ずる点もございます。

避難を開始したのは、事故発生後実に5時間が経過しておりました。空気中に放出される放射性物質は、1時間の間に、風速3メーターでは10.8キロメートル、5メーターでは19キロメートルの範囲に飛散すると言われております。6時間もたてば、東海村から東京近くに到達するとも言われております。それに対して、おのおのの対策本部が設置されたわけでありますが、その時間を見ますと、東海村は12時15分、県は16時、科学技術庁は本庁内に14時30分、現地には17時でございました。このような対応では、建屋が吹き飛ぶような事故であったらどうなったかと思いますと震えがとまらない思いがしております。

それで、なぜおくれたかは、要すれば想定外の事故だということであったわけでありますが、ジェー・シー・オーの臨界に備えた設備、測定器が、当然その関係で不備であったことも事実でありますし、現在の原子力防災計画で予知している加工施設での事故は、六弗化ウランの漏えい、二酸化ウラン粉末焼結炉の爆発等でありまして、臨界は想定されておりませんでした。

それから、第二の初動対応のおくれでは、原子カへの不安を抱かせないという理由から、原子力事故を想定した防災法を制定することに対しまして政府と事業者は憶病であったのではないかと私は思っております。原子力事故に対する法整備も組織体制整備も欠いておりました関係で、有効な処方せんを当初、初動態勢では持っていなかったという気がいたします。

第三は、現地、現場重視と住民保護の観点がどうも私どもとしましては薄かったのではないか。村は、科学的な解析よりも、状況判断により住民保護を優先したのは事実でございました。

それから、災対本部間の連携と意思決定、これもスムーズにいったとはなかなか思えません。科学技術庁の現地対策本部設置後の政府と村との情報伝達、意思疎通は、科学技術庁と原研の職員を介して比較的うまくいったところでありますが、後で聞いたところでは、県は科学技術庁からの情報が入ってこないと大変いらいらしておったそうでございます。東海村以外の他の市町村はさらにひどかったと聞いております。ただ、10キロメーター圏内屋内退避の決定や交通機関のストップの決定は、村では寝耳に水でありました。この点はちょっとびっくりした点でもございます。

それと、政府の意思決定は、組織が大きいせいもあったでありましょうが、お世辞にも早いとは言えない点がございました。それは、平常時と緊急時の組織区分ができていなかったのではないか、平常時の組織体制のまま事故対応に当たっていたのではないかという気がしております。現地対策本部を設ける場合は、即断即決、指揮命令ができるスタッフをそろえていただきたいという気がしております。

それから、原子力事故は痛くもかゆくもなく、目に見えない事故でありまして、それゆえに、見えない恐怖を広範囲な住民に与えます。被曝したのではないかとの肉体的、精神的健康不安は特に深刻であります。この問題は、時間をかけずに速やかに処理することが重要でありますし、時間をかければ不安を増幅しかねないと思っております。今回は、県が比較的早く取り組みましたが、事故現場から放出された放射線量の推計発表が、これ自体は私はやむを得なかったと思っておりますが、1カ月を過ぎた後になったために、また新たな不安を呼び覚ましました。また、今後、長期的な健康管理問題もまだはっきりしないところがあります。そのような現状でございます。

損害賠償問題も、損害の基準や賠償の範囲、事業者と国の責任がまだはっきりしておりません。その関係で、農業者、商工業者は大変心配しております。去る11月18日、東海村と農商工業の代表者がジェー・シー・オーと親会社の住友金属鉱山に対し、合計13億円余の賠償請求をしてまいりましたが、具体的な考えは何ら示されなかったわけであります。

東海村は、汚染された地域あるいは危険な地域との深刻な風評に現在さらされております。県内にあっても東海村だけは特別な地域とされつつありまして、村と村民は一体となって風評払拭に取り組んでおりますが、とても一地方だけでは限度がございます。原子力を国策として推進してきた政府にもこの風評払拭、風評解消の責任があると私は思っておりますので、積極的な取り組みをお願いしたいと思っております。今までのところ、政府自体として積極的に取り組んだという形跡は、ほとんど私は感じておりません。

これらの被曝・健康問題、損害賠償問題、風評被害と風評対策などの住民生活に関する分野の国の責任、政府の方針は、今、何ら想定されない中で今回の臨界事故は起こったと思います。原子力損害賠償法にとらわれて住民補償問題をうやむやにされてしまうようなことがあれば、私は、原子力の未来はないのではないかという危倶をいたしております。事故に責任のある企業はもちろん、関係のある企業グループの存続をかけての補償履行を政府からも要求していただきたいとお願いいたします。

これが前段で、これから原子力災害特別措置法と炉規法の改正について、私の考えを述べます。原子力事故は自然災害と異質な性格を有する災害として、かねてより全国原子力発電所所在市町村協議会は、災害対策基本法の特別措置法の制定を求めてきました。それが、我が村で大きな犠牲を払った上でではありましたが、このたび政府案が国会に上程されました。やっと一里塚を越える思いであります。ぜひ今国会で成立をさせていただきたいと思います。石油コンビナート法におくれること実に四半世紀でございます。

今回、政府が案をまとめるに当たっては、今回の事故の経験と私どもの意見を十分に取り入れ、参考にしたものと私は見ております。評価点を並べれば、国の責任体制が明確になりました。それと、国、県、市町村の統一的体制づくりの指針ができたこと。それから、事業者の義務と責任が明記されました。事業者への市町村の関与権も入れられました。それと、これは私どもが要求したわけでありますが、事後対策の重要性と国、県の義務が明記されました。ざらに、能澤先生がおっしゃいましたが、緊急対策センターの位置づけもされたということで、私は評価しております。

ただし、気になる点は、この法案で初期対応の迅速化ができるかどうか。国が原子力災害に一義的責任を負うとの法理論は歓迎するところでありますが、今回もそうでありましたが、国が対策本部を立ち上げるには相当な時間を要するのは明らかでございます。対策本部は現場に近いところから立ち上がるというのが常識ではないでしょうか。事故現場では、国の対策本部ができないからと手をこまねいているわけにはいきません。国の対策本部ができるまでの緊急対応をどうするか。この場合、オフサイトセンター、それと現地合同協議会、現地対策本部など現地の権限と運用で補てんできるかどうか、検討が欲しいところであります。

同時に、現地での緊急対応の実効性を上げるため、防護、医療などの面での専門家によるレスキュー隊の創設も必要であろうと考えております。これは登録制度で結構ですので、緊急時招集するという形でいいと思っております。

原子炉等規制法の改正には異存はないことで、賛成であります。しかし、加工工場の審査基準の見直しは必要ではないでしょうか。また、臨界防止装置は、今のままでは不十分ではないかと危倶しております。また、現行の検査体制や人員で実効性は担保できるかどうか、見直しが必要でないかどうか検討していただきたいと思います。

それと、東海村としてこれから要求したいことがございます。

11月11日に、原子力安全委員会の中立性の確保と機能強化について政府の考え方が示されました。事務局の強化、内閣席への移行など、今の体制よりは前進が見られます。また、科学技術庁が省庁再編成の制約の中で努力しているのも、私は痛いほど理解しておるわけであります。しかしながら、わずか36平方キロメートルの狭い土地の中で14の原子力事業所と共存していかなければならない東海村としましては、今回の改革案でオーケーとはとても言えない気持ちであります。

原子力との共存の前提は、言うまでもございませんが、安全と安心であります。今回の事故で東海村民は原子力に不安と恐怖を感じたのは事実であります。村への要望も、金や発展よりも、安心して住める村にしてくれと言ってきております。今までは空気のような存在であった原子力施設が、その危険性とともに、村民に意識される存在に変わったということであります。安全と安心を担保するのは、村の施策にも責任がございますが、政府の安全に対する保障措置にまたねばならないと思っております。このことをしかと御理解していただきたいとお願いいたします。

全原協においても、かねてから、国民の代理人となる安全規制委員会の創設、アメリカのNRCのような機関の創設を求めてきております。規制行政独立の原則に立ち、推進組織から分離し、規制機関の二元化を図り、執行権限を全面的に付与すべきではないでしょうか。

要は、今回の臨界事故の重大性をどう考えるかにあろうと思っております。ひとり東海村、あるいは不心得なジェー・シー・オーに限った事故とするのか、それとも、事故の影響が全国に波及し、日本の原子力政策の根幹を揺るがしたものなのか、果ては世界の信認まで累を及ぼした大事故なのか、考える必要があろうかと思っております。

今回ほど原子力安全委員会の信と存在が問われたことはないと私は思います。省庁再編成の思惑にとらわれず、原子力行政の威信をかけ、ゼロベースからの構築を切に望みたいと思います。この場合、国家行政組織法第三条に基づく委員会のほかはないと私は思っております。

終わりに、総額1,297億円の原子力安全対策補正予算については速やかにお認め願いたいと思います。その上、早期の整備をしていただきたいと思います。また、今後、自治体独自で整備するものもふえてくると思いますが、それにつきましても、政府補助金や交付金の拡充にて御援助をお願いしたいと思います。

一小さな村の村長としては言い過ぎたこと、出過ぎた発言があったかもしれませんが、東海村は原子力とともに歩み、原子力の発展に寄与してきたとの自負がございました。しかし、それが今ではみじんにも打ち砕かれ、威信が落ちたばかりか、危機にさえ瀕している状況でございます。それでも東海村は原子力施設との共存の道を探っていかなければなりません。これも宿命でございます。そのような村の住民の心情に思いをいたしたぎりぎりの発言と御解釈いただければとお願いいたします。

本日は貴重な時間をいただき感謝いたします。ありがとうございました。どうか真意を酌み取っていただきたいと思います。(拍手)

○北側委員長 ありがとうございました。次に、森公述人にお願いいたします。

○森公述人

森でございます。発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

私は、この委員会に出てまいりますのは「むつ」の事件以来25年ぶりでございまして、中曽根さんや、お父さんですけれども、岡良一先生のお手伝いをして、原子力開発に40数年携わった者として、特に原子力関係者の一員が今回のような事故を起こして皆様に大変、村の皆様はもちろんでございますが、御迷惑をおかけしたこと、大変遺憾に思っております。その結果、本日御提案のような、規制の強化あるいは定員の増加を伴うような、この世の中に全く逆行した措置をとっていただかざるを得なくなったということは、本当にじくじたる思いがいたします。

私ども原子力産業会議では、この原子力産業会議は産業界ももちろん入っておりますけれども、原子力関係者の800機関ほどの社団法人でございますが、3日目に緊急の理事会を開きまして、今回の事故をどう考えるか真剣な討論をいたしました。その結果、とにかくやはり民間の原子力関係者が自覚をすることがまず大前提であると。

最近、確かに軽水炉、原子力発電所は大変順調な運転を続けておりましたけれども、余りにも不祥事とかデータ改ざんとか多過ぎるとかねて私も思っておりましたので、この機会に厳しい意識改革を実行しようじゃないかということを提案いたしまして、こういう時期でもございましたので、全員に賛成してもらいまして、「民間原子力関係者の自己改革に向けて」という提言をいたしました。提言と申しましても、自分たちに自分で言っているものでございますけれども。

その内容は御紹介する時間がございませんけれども、中核は、やはりトップの人が安全の重視を最優先するという責任感、それを具現することが一番大事なことである。これはいろいろ書いてございますが、さらに、同じ仕事をしておる者が、安全情報、むしろ失敗情報と言った方がいいかもしれませんが、そういうものを、競争関係とかそういった垣根を乗り越えて共有することが必要だということを申し合わせたわけでございます。

早速、電力が中心になっておりますニュークリアセーフティーネットワークというものも近々立ち上がるようでございますし、特に、今回の事故の燃料加工部門、これは大変大事でございますので、たまたまその中の社長さんが明くる日外国へ行かれる機会もあったものですから、外国にも呼びかけまして、核燃料加工の世界の安全ネットワーク、これはむしろ早く立ち上がる、ごく最近立ち上がると思いますが、そういったものをつくることになっております。

そういった努力をお互いに監視し合いながら、心を締め直していかなければいけない、こういうことをして初めて国民の信頼が取り戻せると考えております。

今回の二つの立法に関連いたしますこととしては、最初に二つのことを申し上げておきたいと思います。

まず一つは、先ほど村上さんからもお話がございました、事故の性質が未曾有のものであったとはいえ、余りにもその対応のおくれがあったために、これは少し詳しくお話ししたいので、後で御質問があればぜひ話したいのでございますけれども、村民の皆さんを初め、大変大きな影響を招いてしまったという点、まことに残念でございます。私ども原産といたしましても、私自身が、そんな柄でもないんですけれども、座長になりまして、今回の事故を深層にわたりまして、本当の教訓を引っ張り出すために執念深くと申しますか、調査を続けておるところでございます。

次に、やはり何と申しましても大きな問題は、放射線の影響についてでございます。

先ほど村長さんからもいろいろお話がございましたとおりで、この混乱が大変大きくて、一層迷惑を拡大しておるわけでございます。これはよく言われることですけれども、新聞が悪いようなことを言いますけれども、新聞あるいはマスコミの前に、原子力関係者の放射線安全についての理解の不足と言っては書い過ぎかもしれませんが、不足を反省しなければならない。

例えば、ICRPの線量限度というものがございます。ICRP、国際放射線防護委員会は、大変権威のある、非常に厳しい委員会でございまして、ここでは、放射線はどんなに量が少なくても必ず少ない量に比例した影響があるという、まあ仮定ですけれども、そういう仮定に基づいて基準をつくっておるわけでございますが、そこで、一般大衆の基準というのが1ミリシーベルト/年というものがございます。これの説明等がなっていないというか、ちゃんとされていないということ。

例えば50ミリシーベルト浴びた人は50年分浴びた、こういうふうに言われておりますけれども、これは全く間違いで、毎年50年間事故があれば、それは50年分浴びることになりますが、その人一生にわたってこの1ミリシーベルト/年。1ミリシーベルト/年というのはつまり、東京と関西で自然放射線の量が違いますが、その差も2倍かそれくらいの違いでございますけれども、そういうことぐらいまでは、もちろん進んでやることじゃありませんけれども、進んで関西へ移住する人もいますけれども別にそういう意味で移住するわけじゃありませんから、やむを得ないというか、いいと言っておるわけでございます。

つまり、普通に言いますと、これは、ICRPなどで計算するときは、平均寿命を70歳と考えれば35、つまり、これ掛ける35年間程度は、じりじりと少しずつですよ、、これは、一遍にというか、今度の3人みたいに瞬時に浴びると影響は大きいのですけれども、影響はないだろうというふうな基準なんでございます。

また、本当に放射線のどのくらいのところから影響が出るかということは、広島・長崎の何十万人の調査、とうとい犠牲の上に成り立った調査でございますが、もう50年以上にわたって行われておりまして、がん等も含めて、200ミリシーベルト、瞬時に浴びた場合ですが、それ以下の人には影響はどう調査しても出ていないということがはっきりしておるわけでこざいます。

そういう状況のもとで、療養中の3人の方は、これは瞬時に大量に浴びたわけですから、全く別でございますけれども、そのほかの人も加えて、一般の人も加えて、いわゆる被曝した人65人というような発表を政府というか体制側の方がするわけでございます。そういうものを十把一からげにいたしますので、動揺も大きくなりますし、第一、一般の人に対して、もちろんこれは安全側に考えなけれぱいけませんけれども、自然放射能の何倍かを浴びたかもしれない方を被曝したとかいうふうに言うことは、全く失礼でもございますし、非科学的な言葉であります。

この際、そういった被曝という表現も含めて、どういうふうな場合に被曝したという表現をするかといったことを注意深く定義をし直す必要があみと思います。そうでございませんと、例えばジェット飛行機に乗った人は被曝者であるとか、銀座四丁目に3時間座っていた人は被曝者であるとか、温泉に行った人は被曝者だとか、みんな被曝者で登録しなきゃいけなくなるわけでございまして、そういう妙なことになってくるわけでございます。

これは、原子力の開発が未曾有の技術であるから、慎重の上にも慎重にというまじめな態度から由来したものではございますけれども、余りにも形式主義に陥ってい過ぎると思います。この点は、この法律の直接の適用に関係があるかどうかは別といたしまして、今後混乱を必要以上に広げないためにも、関係者は真剣に考えなければいけないことであろうと思います。

この法律二法につきましては、やはり運用が総花的になりましたら意味が薄いものになるおそれがあります。したがって、後で御質問があればお答えしたいのですが、よほど運用面で心しなければいけないということ。

もう一つは、アメリカなどの場合は、風水害とかハリケーンとか、そういった災害に対する対策と一緒につくっておるわけでございますね。先ほど能澤さんからお話がございましたスリーマイルアイランドの事故が起きたとき以降、義務づけられた災害対策体制があるのでございます。電話帳などにも随分出ておる。しかし、これが原子力災害で役立ったことは一度もない。しかし、在来の災害で大変役立っておるという皮肉な、皮肉というよりも褒められておるというか、やはり原子力地域というのは近代的な体制ができておるという意味の評価を得ておるわけでございまして、今回のは、ちょっと拝見するところ、そういったものとは全く別につくっておるということに若干問題があろうと思います。

こんな事故がもう絶対ないなんて私は言いませんけれども、関係者が努力すればまずないと思います。やはり一生仕事がないような職場というものはモラルは維持できないと思います。一度も火事がない消防署なんというのはモラルが維持できないのです。ですから、組織をつくれぱつくるほどその点は留意しないと、総花的に、やっておればいいというところに落ち込んでしまって、余り役立たないというおそれがあるわけでございます。

それから、先ほど村長さんが言及になりました補償の問題でございますが、原子力損害賠償法は、皆さん御承知のとおり、原子力による損害はもう一元的に、操業しておる者、運営者に無過失無限の、今回のように過失があればもちろんですが、過失がなくても無制限に責任を課するということがまず基本でございます。そのための一つの支払いの準備として保険があり、また、当事者が払い切れない場合に、国が、国会の認める範囲内において、一人の泣き寝入りもないように措置するということでございます。

一人の泣き寝入りもないようにというのは、私も、もう40年前でよく覚えておりませんけれども、損害賠償法のときに参考人に出たときに、質疑応答をしておられたときに、担当大臣だったか有沢原子力委員長代理だったか忘れましたけれども、要するにその意味は一人の泣き寝入りもないように運用するということでありますという答弁が恐らく当時の国会の議事録に載っておると思いますが、そういう趣旨のものでございます。

したがいまして、現在検討しております保険でどういうふうに払っていくかということは、その入り口でございます。それにしても時間がかかり過ぎる、私もそう思います。恐らく村長さんも本当にじりじりしておられると思いますが、入り口でございまして、一人も泣き寝入りがないようにするということが基本でございます。そのために私どもがなすべきことは、法律の厳守も含めて、何でもやらなければいけないと思っております。

ただ、先ほどおっしゃっておりました風評被害が大変難しい。風評被害も、相当因果関係がはっきり認められる、はっきりわかる範囲は問題ない。問題ないという意味は、つまり賠償の対象になるわけでありますが、その辺の線引きが大事でございますし、またその風評を広げないための努力ということは、これは皆で努力しなければいけないところでございます。

以上、時間も参りましたので、私の所見の一端を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

○北側委員長 ありがとうございました。次に、角田公述人にお願いいたします。

○角田公述人 角田でございます。

私は、定年退職するまで約30年間、東海村の日本原子力研究所で放射能の環境移行の研究に従事してまいりました。今は原子力問題情報センターというところの編集委員長をやっております。

今回の法改正及び新立法に関連して、三点、意見を申し述べたいと思います。

まず、今回の立法の契機となった臨界事故について、第三者による事故調査委員会を設ける必要についてであります。

既に、原子力安全委員会が設置して、事務局を科学技術庁とする事故調査委員会の中間報告と緊急提言も発表されております。しかし、これと並んで、スリーマイル島原発事故の後にアメリカで大統領が特設した事故調査委員会のような活動が日本でも必要であると痛感します。

以下、スリーマイル島をTMIというふうに略しますけれども、このTMI事故調査委員会の委員は、大統領が直接任命したのが12名でしたが、メンバーは、弁護士とか立地地域の主婦とか州知事、労組役員などを含み、ほかの学識経験者も、委員長のケメニーが応用数学者というように、広い分野から選んで、原子力の専門家は一人だけです。事故炉のメーカーや電力会社からの独立だけではなくて、政府規制当局からの独立、第三者性を強く意識した構成になっております。

また、これは大事だと思うのですが、事務局も原子力規制委員会、NRCとせずに、委員が選んだ60名を超す専門家と事務局員が、これはパートタイムではなくて常勤で調査に当たっています。

大統領委員会の調査権限はNRCの調査権限よりも大きく、何より、NRCも含めて、連邦及び州の原子力政策、規制行政、産業界全般の活動を調査対象とし、大統領権限を代行する調査活動が保障されておりました。

こうした調査に基づいて、大統領委員会は、ケメニー報告という名前でしばしば引用される報告書を大統領に提出しましたが、そこでは、事故の技術的検討結果だけでなく、原子力に対する政府と産業界の姿勢を根本的に転換する必要があるということを冒頭に記しまして、1.NRCの組織と運営、2.事業者とメーカー、3.公衆の知る権利など7項目の勧告がなされております。さらに、行政機関はこの委員会勧告のフォローアップ義務があるとされまして、NRCは、10年後に、合計76項目の全勧告内容について詳細なその実施状況報告書を公表しております。

「もんじゅ」事故の後、日本弁護士連合会は会長声明を出して、科学技術庁や通産省は事故に責任のある当事者であり、独立した第三者機関が実施しなければ公正な事故調査にならないと強調していました。私は、今からでも遅くないから、日本版のケメニー委員会のような事故調査を実施し、この事故の教訓を全面的に引き出すことを希望します。

きょう、皆様のお手元にお配りしました「第三者機関による事故調査とは」という私のペーパーの後半に、素人の意見でございますが、私なりに考えた調査委員会のイメージを記しましたので、後に御検討いただければ幸いです。二番目に、原子炉等規制法の一部改正案について一点だけ意見を申します。

第66条に、従業員による会社の不安全行為の申告及びそれを理由とする従業員への不利益処遇の禁止が規定されました。私は、昨年4月、参議院の文教・科学委員会に参考人として出席いたしましたが、そのとき、アメリカの法律及び連邦規則を引きながら、従業員による不安全行為通報に対する保護制度に触れ、日本でもこのような制度が欲しいと申しました。その意味で、今回の法改正を大変うれしく思っております。

アメリカでは、内部告発者、向こうではホイッスルブロア、警笛を鳴らす人と呼んでいますが、その保護が原子力分野で立法化されましたのは1974年のエネルギー再編法でした。この制度の目的は、従業員が、報復のおそれなしに、安全に関する問題を自由に提起できる雰囲気を醸成するためとされています。私は、自分が長く原子力事業所の従業員でしたので、この制度の重要性を実感しています。

私の勤務した日本原子力研究所で、昭和44年に、研究用原子炉の運転員が原研理事会から、停職3カ月という、就業規定上解雇に次ぐ処分を受けた例があります。これは、その運転員が職場新聞に、その原子炉の燃料に破損が相次いていると書いたのが問題にされたものです。原因調査中の事項を不用意に報じだというのが処分理由でした。この原子炉は、その破損が原因で次第に汚染が広がり、後に運転の停止となりました。そういう事件も相次ぎましたので、この停職処分事件はマスメディアで大きく報じられ、国会の議論にまでなりました。しかし、停職処分の取り消しにはなりませんでした。

このとき、処分された本人も労働組合も、原研の監督官庁である科学技術庁に申告するという発想は全く生まれませんでした。新聞で大きく報じられたのですが、科学技術庁は、この事件の前の年に、佐世保で原子力潜水艦放出の放射能汚染をモニタリングボートで検出していながら、本日は波が荒くてモニタリングが行われなかったと事故隠しをしたことの記憶が生々しいからです。科学技術庁に申告したら、理事会と一緒になって圧力が加えられるとすら感じられたのです。

この意味で、今度の法改正も、申告する主務官庁が、推進官庁でなくて、それから独立した規制機関でないとせっかくのこの法改正の趣旨が生きてこないのではないかと懸念します。

アメリカの内部告発保護制度では、NRCへの申告が1991年に960件、1992年に1,074件と報告されていますが、この大変な数字は、規制機関としてのNRCの独立性への信頼の高さを示しています。また同時に、申告要件が幅広いことも作用していると思います。

今回の改正案では、会社が炉規制法の規定に違反する場合に申告できると限定されていますが、アメリカの連邦規則では、会社の不安全行為全般が対象となっております。また、主務大臣への申告だけでなくて、社内の上司への提言や公聴会での発言や市長団体への通報まで含めて、それによる不利益処遇の訴えをNRCが受け付け、その是正措置や会社への罰則措置をNRCがとれるようになっております。

一昨年、日立製作所の下請会社が原発配管工事でデータの捏造を行ったことが内部告発で明らかになる事件がありました。後の資源エネルギー庁の調べでは、データ偽造は10年以上に及び、対象原発は18基に上っていたことがわかりました。この事件が示しますように、工事の手抜きや裏マニュアルの存在など、会社の不安全行為を一番よく知っているのは、そこで働いている作業者です。これらの人が不安全行為を口に出すようになれば、原子力の安全性は格段に向上することは間違いありません。また、従業員の社内における安全指摘を激励する制度は、いい意味での社内緊張感を生み出し、事故の防止につながります。その意味で、申告条件をもっと広げ、この改正法の立法趣旨を実効あるものにする諸措置を期待するものであります。

最後に、原子力災害対策特別措置法案について幾つか意見を申します。

第13条2項にある緊急事態の想定についてですが、この想定は、防災訓練だけでなく、緊急時計画全般に関係して重要になると思います。

この際、過酷事故、つまり燃料が大量に溶融し、かつ環境に一部流出する事故ですが、それを想定するのでしょうか。現在の設置許可時の安全審査では重大事故と仮想事故の二つを想定し、その影響評価を行っています。仮想事故というのは、重大事故を上回り、技術的には起こり得ないような大きな事故を対象とすると定義されています。その仮想事故時の住民の被曝評価値では、これまでの原発の安全審査の例で見ますと、避難も、沃素の配布、投与も必要がないということになります、したがって、緊急事態の想定を仮想事故としますと、訓練は通信、連絡に限られることになりかねません。しかし、原発より潜在的危険がずっと小さなジェー・シー・オー事故でも避難が必要でした。

私は、緊急時計画やその訓練では過酷事故も想定し、過酷事故というのは、英語でシビアアクシデントと申すのですが、今大体世界的に共通の概念になっております、過酷事故も想定して、その際どうすればその影響を低減できるかということを検討することが大事だと考えます。

それと同時に、安全審査でも、設計基準事象だけでなく、過酷事故も対象にする必要があると思います。そして、運転開始前にその施設の防災計画の実効性を審査すべきだと思います。この点は、先ほど申し述べましたケメニー報告の勧告でも指摘しています。この勧告に基づいて、アメリカでは緊急時計画が安全審査の対象に改正されました。運転認可審査の際、申請者は地方自治体の意見を付した緊急時計画をNRCに提出し、その実効性が安全審査されるようになりました。

もう一つだけ申し上げたいのは、防災計画作成への住民参加の重要性です。事業者と自治体執行部だけでなく、住民が計画作成段階で検討に加わることは、それ自体防災訓練の意味を持ちます。何よりも、避難経路、。その交通手段、身障者や老人、子供の対策、飲料水確保などの問題は、事業者や役場の職員よりも住民がより豊富、正確な生活情報を持っているからです。住民はある意味では防災手段の専門家だと考えるべきです。

同じような理由で、防災計画の決定前に住民公聴会を開く、事業者、自治体にそれを義務づけるというふうにしたらどうでしょうか。その際、今の原発設置許可時の公開ヒアリングのように、発言時間一人10分などという形式的なものにすべきではないと思います。これは、民主主義という意味だけでなくて、先ほど申しましたように、防災計画の実効性確保のために大事なことだと考えるものです。

以上で私の陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○北側委員長 ありがとうございました。以上で公述人からの御意見の開陳は終わりました。


○北側委員長

これより公述人に対する質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村隆秀君。

○木村(隆)委員 自民党の木村隆秀でございます。

きょうは、公述人の皆様には、大変お忙しい中、御苦労をおかけいたします。どうぞよろしくお願いたしたいと存じます。

今回のジェー・シー・オーの事故は、これまでの原子力安全規制に対する国民の信頼、今東海村の村長さんが、施設と共存を図ってきたというお話をされましたけれども、東海村の村民の方はもろろんでありますけれども、国民全体の原子力に対する信頼というものを失墜させてしまった。これからの原子力開発利用に大変な影響を与えるのではないかと私は心配をしている者の一人でございます。

今回の事故を省みますと、私どもの大先輩、鯨岡兵輔先生が以前こんなことを言われました。だんだんは怖い。なれは怖いということだろうと思いますけれども、日々の管理、いわば企業や事業者のモラルの問題が今回一つ大きな問題として出てきているのではないだろうか。高度に技術的な原子力防災を議論する以前に、そもそもこのような初期的な管理体制の不備の事故を起こさないようにすることがまず重要だろう、こう思いますし、また、危機管理に当たっては、今の村上村長さんのお話ではありませんけれども、想定外ということはあってはならないのだろう、こう思います。

そこで、森公述人にお尋ねをいたしますけれども、今回の臨界事故に関して、何が問題で、今後どのように対処すべきか、まずその御見解をお伺いしたいと思います。

○森公述人 お答えいたします。

まず、少し技術的なことを申し上げさせていただきたいのですが、あのような特別な施設、これは全国でただ一つの低濃縮でないウランの転換をやっておった。低濃縮でないというか、中濃縮、18.8%の施設。施設というより小屋ですね。皆さん訪問になったと思いますが、本当に小さな部屋。大きな設備が、大部分は軽水炉用の低濃縮の転換をやっておるのです。その隅にある本当に小さな小屋でやっておった。こういった本当に注意しなければいけない小屋が全く、全くというのは言い過ぎかもしれませんが、特別な注目も吟味も、特別な規制も行われていなかったということに大きな問題があると思います。

私、きょう、今から申し上げますことは、ジェー・シー・オーを弁護するというつもりは毛頭ございませんけれども、ジェー・シー・オーはここで20年聞、中濃縮のものを転換する、転換するというのは、外国から輸入してきたものを、燃料に加工できるような粉だとかいろいろなものに中間的処理をするということでございますけれども、仕事をやってきたわけでございます。

特にこの10年間、液体で受け取りたい、割に濃い硝酸溶液で受け取りたいという発注者側の要求に応じて黙々と仕事をしてきたわけでございます。「常陽」というのは高速増殖炉で世界で唯一トラブルのない原子炉で、黙々と20数年間動いておるわけでございますが、その「常陽」の燃料も供給してきたわけでございます。

液体で運ぶというのは好ましくない、特に中濃縮のものを運ぶというのは用心を要することでございます。それはさておき、このときに恐らく、受注すべきジェー・シー・オーは、薄いものなら自動装置で溶液を取り出せる、ですから少し高くなりますが、ぜひそうさせてくださいと言うべきであった。それを、仕事したさに、自信もあったのでしょう、バケツなどの方法を考えて、途中から抜いて、バケツの中で混ぜて、硝酸の溶液の中で約35%のウランを溶かす、恐らくそうしてやっておったようです。

その限りにおいてはきちんと10年間やってきていたわけですが、これが問題なのですけれども、本体といいますか大きな方の工場の原価引き下げ、酸化ウランの粉は外国からどんどん安いものの売り込み、なぜ買わないという強烈な売り込みがあるわけです。そういうことに応じまして恐らく全体の人員の削減があった。そのときに、これは大変危険な部分だから工場長みずからが当直長になるぐらいのことでやらなければいけないと経営者が判断して、そういうふうにやっておれぱ今回のようなことは起こさなかったはずなのですね。もっとも、バケツを使うというのは余り好ましくないので、本当は設備を直さなければいけないのですけれどもね。不注意にもそういった重要な小屋の人員を普通の人にしてしまい、もうバケツで何回も運ぶのはあれだから一遍に、沈殿槽という便利な入れ物があるからというので、それのふたをこじあけてぽんと入れた、こういうことで起きたことでございます。

したがいまして、今回の規制も含めて、そういう特に問題のある設備、ほかに全くないとは言いませんけれども、全く本当に特別なところに目の行き届かないようなことのないように、総花的にすればするほど薄くなるおそれがないということはないわけでございますから、その点を特に配慮していただかなければいけないと思います。

それからもう一つ、対応のおくれということを、先ほど村上さんからも、私も申し上げたのですが、これもジェー・シー・オーを弁護するわけでも何でもないのですが、10分後にジェー・シー・オーの工場長は、どうも臨界を起こしてしまったらしいということを通報しているのですね。それが何で十何時間もたたないと臨界をとめられなかったのか。これは結果論ですけれども、それこそ想定外だったのだから、言い過ぎかもしれませんが、外国から見たら、何しているんだということはむしろそっちの方なのです。臨界事故というのは起こしてはいけませんけれども、進んだ日本が十何時間もたってやっととめたというのは何だと。専門家の言っていることはそういうことでございます。

それから、350メートルは危ないから退避してくださいと言い出したのもジェー・シー・オーの責任者なのです。私もその人に会って、何でまた、随分ぴったりいったねと言ったら、いや勘です、もうとっさのことで、ああなって中性子がこうなってと考えて350メートル、それほど外れていなくて後で自分でもびっくりしたのですと。とっさのときにそういう情報があったにもかかわらず対策がなぜおくれたかということが基本的な問題でございます。これはまたいろいろ私の考えもございますけれども、時間をとりますので、以上でお答えといたします。

○木村(隆)委員

今、会社からは10分後に通報があったけれども、この後の対応が悪かった、これは反省しなきゃいけないというお話でございました。

先ほども能澤公述人さんから、事故後の報告、そしてその後の初期対応の問題、それと、各組織の連携等々がもっと大切じゃないかというような話があったわけでありますけれども、原子力防災を考えるに当たって、今お話があったことを初めとして、特にどんなことに注意をしていったらいいのかということ、そして、それらについて今回の法案ではきちっと対応できているのかなと心配をするのですが、その辺、御見解をお伺いしたいと思います。

○能澤公述人

今の御質問にお答えしたいと思います。実際に、先ほどもお話がありましたように、運用次第では、どんなに立派な形を書いても生きないということもございますので、今後の運用を慎重にやってもらう必要はあると思いますけれども、現在出ております法案は、「原子力防災対策の実効性向上を目指して」という、安全委員会のもとの原子力発電所等周辺防災対策専門部会が出しました要望に関しましては、ほとんどすべてについて何らかの形で前向きの措置をとるというふうになっているように思います。

特に、先ほども申し上げましたけれども、原子力事業者の方で平生から防災についてきちっとした知識を持ち、組織を持って防災責任者をつくっておけば、この間のときの場合でも、もっと詳細に防災上どういうことをやるべきかという通報が行った。もちろん、10分後に工場長が臨界事故らしいと言っても、詳細がわからないと、なぜそういうことを言えるのかと。

私も実はその日は東海におりました。東海におりまして、そういう話を聞いたときに、あれ、おかしいな、そういう燃料工場では厳重に臨界にならないようなあらゆる手段を講じているはずだ。例えば質量管理であるとか形状管理。例えば形状管理ですと、無限大の長さの筒に入れても臨界にならない、平板にしておけば、平板で無限大にしても臨界にならない、計算すればすぐわかるわけですが、そのような形状。質量管理でいえば、その質量であれば絶対臨界にならないというものがあるわけでございますから、そういうものが徹底していればそういうことは起こるはずはない。何かニュースは間違っているのじゃないか、我々はそう思いました。

ですから、つまり、報告するときに、単に臨界事故ではないかと言うよりも、あの時点で40リッターほど入れて、それが幾らの濃縮度のものを何リッターどこへ入れたんだと言えば、専門家が見れば、これは臨界事故だとすぐわかったはずでございます。そういったことを含めて報告できるように初めからしておくということが非常に大事でありまして、今回の法案ではそのことが強調されております。

以上でございます。

○木村(隆)委員

先ほどの森公述人さんのお話の中に、ジェー・シー・オーが大変な競争の中で受注をしなきゃいけない状況にあったのだというようなお話がありました。新聞報道でもいろいろその点報道がされておりますけれども、今回の事故を踏まえて、燃料の加工から発電までの原子力を国策として成り立つようにするために、特に核燃料の供給ということも含めて、コストの削減と安全性の確保をどういうふうに調和を図っていくかということを国としても真剣に考えなきゃならぬのじゃないかと思うんですけれども、御見解をお聞かせいただければと思います。

○森公述人

現在リストラに取り組んでおるのは、経営者の当然の責務でございます。しかし、そのときに、やはり特に原子力については安全といったことを忘れては絶対困る。幾らリストラといいましても、まず警備員から首を切っていこうという会社はないと思うんですね。それと同じように、今回の場合は首を切ったわけじゃないのですけれども、これは御存じと思いますが、これ全体がジェー・シー・オーの工場で、この赤いのが例の小屋でございますが、そこはときどきしか仕事がないので優秀な人員を常時置いておくわけにはいかぬ、それで、うっかり削って忘れていたということだと思いますね。

ですから、リストラといったことと経済性ということと安全を重視するということとは、先ほどの能澤さんなんかの話にもちょっとありましたけれども、安全というのはキーパーソンが大事でございまして、会議を開いて決めたりするようなものではない、そういったキーのところに大事な人を置いておく。あの場合で言えば、工場長みずからその作業があるときには当直長になってもいいぐらいの、はっきり言えば非常に危険なものでございます、特に液体をつくるのですから。そういったことで決して矛盾させないでやるのが経営者の腕ですし、実際に世上行われておるところもみんなそういうふうにやっておると思います。リストラを言いわけにして安全の手を抜くなんてとんでもないことで、そんなのは原子力をやる資格がない、こう言ったらいいと思います。

それで、先ほど申し上げましたのですが、ウランの濃縮度で、臨界量といいますか、危険な量は全く違うわけでして、今の軽水炉用のウランの場合は3%とか5%とかいった、(資料を示す)これが5%のウランです、これが臨界量で、この少ない方が危ないということになるのですが、こっちは先ほどから言っております濃度、濃さですね。ですから、5%を水に溶かした場合というのですが、簡単には溶けないのです。この辺は溶けるわけがないのですが、水100に対して80のウランを溶かすなんてできるわけがないのですが、今問題になっておるような30%程度に溶かすとしても、2トンですか、5トンの水にぶち込んで、しかもちゃんときれいにかきまぜなければ、臨界になります。そんなことは工程の中にはもちろんございませんし、そういう意味で全く違うものなんですね。ですから、やはり重点的に、本当に大事なところの手を抜かないというのが何と申しましても一番大事な点であろうと思います。

お答えに十分なったかどうか、以上でございます。

○木村(隆)委員

質疑の時間が終了してしまいまして、ほかにも公述人の方お見えで、質問を用意しておったのでございますけれども、時間がなくなってしまいました。

私は名古屋でございまして、電力の消費地に住まっておりますけれども、東海村の村長さん、私どもは、東海村さんのような地域があって我々が安心してエネルギーを使えるということを忘れずに、これからちゃんとやっていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いをいたします。

きょうはどうもありがとうございました。

○北側委員長 辻一彦君。

○辻(一)委員 民主党の辻一彦です。

公述人の皆さん、大変貴重な意見を伺いまして、ありがとうございました。

まず、村上公述人にお伺いしたいのですが、今回の原子力災書対策特別措置法、新法は、かねがね私たちも国会の中でも随分論議をし、また時には原子力防災特別措置法(仮称)の名で試案等もつくって、自治体の御意見もお伺いしたことがあるのですが、そのとき我々の試案の中にも相当地方の声を取り入れたつもりでおりますし、また、今回の政府案も、我々の試案も含め、地方の声を相当取り入れたというように思います。

そういう中で、一つは国が前面に出るということで地方の声にこたえたという面と、もう一つは、市町村長の持つ権限が何か後退したのじゃないかというような、そういう印象を持たれる向きもあるのですが、新法をごらんになって、村長さんとしてどういうように受けとめていらっしゃるか、まずお尋ねしたい。

○村上公述人

以前からそういうことで我々の方も要求してまいりましたし、そこに原子力と関係する市町村としましては不安があったというのは、国の方の責任がどうなんだということと、それから、事業者に対して我々が、消防組織にしましてもあるいは防災計画につきましても何ら届け出がない、それで我々としては関与できないということもありました。

それで、今回の改正の中で、国の責任が明確になったということを私は評価しておりますが、一方では、地方自治体の長の権限といいますか、それと運用のやり方はどうなのかというものが、私も、はっきりしないなという気持ちはございます。それで、私の補助線、仲介項としましては、オフサイトセンターの立て方、現地対策本部の立て方、そこにポイントがあるのかなという気がしております。あの法文だけを見ていますと、すべてが国の対策本部、首相を本部長とする対策本部の指示みたいに読み取れる節もありますが、私は、オフサイトセンター、現地対策本部の方でのありようにつきまして検討していただければ、自治体としての動き方もできるのかなという期待はしております。

以上です。

○辻(一)委員 続いて村上村長にお尋ねします。

この新法においても、原子力緊急事態宣言が事業者からの事故の通報によって発せられる、それから本部体制ができるというわけですが、その前に、初期対応というのは、緊急宣言が出る、あるいは本部の体制が、本部が現地でできるまでに一定の時間がどうしてもかかるんですね。それ以前に、市町村長として、現地の責任者としてどうしても対応しなくてはならない問題があるんですから、それにどう対処するかということが今回の場合も非常に大事だったと思うんですが、現地で、初期の対応、初動態勢といいますか、そういう中で、村長さん自体が一番苦労された、苦悩されたのはどういう点であったか、お伺いしたいと思います。

○村上公述人

苦労されたということでございますが、一つは、国、県との情報連絡と、それから、国の判断を仰いでも結論が出てこないということ、それから、県の方の結論も出てこないということがございましたし、その前に問題だったのは、我々の方は早く対策本部を立てましたが、県の方は対策本部以前の状態にあったということ、それから、科学技術庁においても、国においても現地村策本部を立てるのが遅かったということで、そのあたりについて援助、助言をお願いしてもなかなか出てこなかったというのがやはり一番の問題ですね。それで、あとは、災対法の中では市町村長の権限もございますので、そのあたりのことは独断で判断せざるを得なかったということは苦労いたしました。

○辻(一)委員

恐らく現地では、当時、避難をすべきか屋内退避をすべきかいろいろ判断を持たれたと思うんです。確かに、災対法60条に、市町村長の責務として、緊急の場合に避難を勧告あるいは指示することができるとありますから、これを根拠にしてのことだと思うんですが、屋内退避をやろうとすると、60条には規定がないんですが、屋内退避をそのときにお考えになったことはありますか。もし屋内退避を考えるとすれば何に根拠を求めてやるかということを、お考えになったことがあればちょっとお伺いしたい。時間がないので簡単で結構です。

○村上公述人

茨城県の防災計画の原子力防災計画編というのがございまして、それは一応の基準がございました。それでやはり、放射線が漏れているということで、放射能が漏れているということで、屋内退避は当然、独自にも、自発的にも考えておりました。

○辻(一)委員

非常に限られた時間でありますが、初期の対応のときに、だれかに相談しなくてはならない、なかなか村長さんだけの判断で簡単には決められないですね。そのときにどういう人に相談をするのか。新法によれば、防災専門官はそういう相談相手にこれからなる可能性があると思うんですが、今までそれがなかったわけですから、そのときに相談相手はだれであったのか。一つはその相談相手。防災専門官が新法では配置される。

それからもう一つ、総理大臣であっても市町村長さんであっても、こういう場合ならば退避あるいは避難をせにゃならぬというような一つの緊急時マニュアルというか、基準が明確に示されていないといけない、そういうものがぜひ必要であると思いますが、それらについてどうお考えか。簡単で結構ですから、お伺いしたいと思います。

○村上公述人

我々市町村としましては、第一義的には県です。県の方に相談をするということで、県に相談いたしましたところ、屋内退避で十分だということでございました。それから、マニュアル、その基準でございますが、基準につきましては、やはり科学技術庁が決めた基準をそのまま県の方でも採用しておりますが、それは当然私どもとしましても、手順を踏んだといいますか、計算はしておりました。それは空間線量なんです。空間線量の10ミリ以上、あるいは50ミリ以上にはどうするということの基準でございました。それは、今回の事故では役に立ちませんでした。

以上です。

○辻(一)委員

中性子の想定も、事故が起こることも考えていないし、したがって、それははかるような装備も何もないという中ですから、全くこのケースが当てはまらなかったと思いますが、放射線が拡散する、いろいろなケースがありますが、私は、それに備えた緊急時マニュアル、総理大臣であっても市町村長であっても、それを見ればとにかく対応できる、そういう基準で、そして、防災専門官と相談しながらやって初期対応をやる、こういうことが大事であると思って、これはまた午後の論議に移したいと思っております。

最後に、角田さんからもお話がありましたし、それから皆さんからもお話ありましたが、原子力の安全規制という点でいって、現在の安全委員会を強化する程度でいいのかどうかという問題があると思うんですね。

私も、昭和49年にアメリカの当時の原子力委員会を訪ねて、この機能を分離するかどうかという論議の時代でしたから、かなり調べてみたんですが、50年に入って、アメリカはNRCという3,000名の部隊を持つ強力な規制委員会を独立させて、推進と規制機関を明確に分離をしたわけですね。日本はそれに従って原子力安全委員会を一応つくりましたが、私とすれば、非常に中途半端な感じがするんですね。

先ほど御指摘もありましたが、例えば「もんじゅ」の事故にしても、東海のあれにしても、ずっと調べてみると、アメリカあたりでは公聴会を随分やって、こういう場合にはどうしたらいいかというようなことを随分出しているんですね。そんなことが、政府のあるいは動燃の倉庫に報告書がそのまま眠って、活用されていない。もしそれをそのときに適用すれば事故は何分の一かに抑えられる可能性は十分あった、国民のある意味では大きな財産を守ることができたはずですが、そういうことがなされていない。そういう面の、いわゆる行政の責任というようなことは、今までの事故調査委員会等ではほとんど明確にされないですね。事故原因はどうだということは詳しくやっているけれども、どういう欠陥があり、行政のどこに責任があるということは指摘されていないですね。そういうことを明確にしないと、こんなことはどんどん起きてくるんじゃないかと思います。

それから、最近の事故を見ると、「もんじゅ」以来をずっと見ても、私の福井県にも随分あるんですが、「もんじゅ」、それから東海の再処理工場の爆発事件、データの捏造あるいは改ざんの事件、それから、日本原電の小パイプからのいわゆる放射能漏れであるとか、今回の臨界事故を見ても、今まで必ずしも重視をしていなかった、第一次よりも第二次系に事故がほとんど起きている、あるいはその周辺部に起きて、それが、長年築き上げた日本の原子力の安全行政を根元から掘り崩すことになりかねない状況にある。

そうすると、今の程度、安全委員会を幾らか強化をして目配りが少しできるようにする程度で一体これだけの、どんどん事故の起こる可能性をきちっと安全規制ができるのかどうか。その点を考えると、私は、名前は別として、8条の今の諮問委員会を3条の行政委員会に移してもっと強力な規制機関を持たない限り、やはりこういう種類の原子力の事故は後を絶たないだろうという感じがします。

そういう点で、私たちは、この原子力安全規制については独立強化をすべきであるという考えを非常に強く持っておるんですが、これについて、皆さんに全部お伺いできればいいんですが、村上さんと、行政の件がありますので森さんにお伺いしたい。

○村上公述人

私も、東海村が今後原子力と共存するための前提として、やはり安全委員会を抜本的に、しかもそれは第3条委員会としてしっかり立てていただきたいと思っております。

○森公述人

強化ということの内容が問題でして、日本のような、役所が3年ごとにくるくる変わるような組織の中で人数をやたらとふやしたから強化になるかという基本的な問題がございます。

それから、やはり何と申しましても、アメリカもそうだったんですけれども、確かに規制委員会ができたこともあれですけれども、幾つかの、先ほど申しましたような民間の相互警戒組織がてきたことが安全性を強化した中心になったわけでございまして、形式的な強化だけでは余り実効はないのではないか。これはいろいろな日本の体質に全部かかわっておりますので、余り申すと何か悪口になりますから、このくらいにさせていただきます。

○辻(一)委員 まだ1、2分ありますから、角田公述人にひとつお願いしたい。

○角田公述人

ただいま委員の方から御指摘があったことは、私も極めて同感です。

そういうちゃんとした規制機関というのは、私は、例えば原子力安全委員会という名前のままでもいいと思うんです。これを行政委員会にしていく。それから、やはりどうしてもスタッフが要ります。特に原子力の問題では、専門知識を持って、それで一体となって補佐していくような相当数のスタッフが要ると思います。しかし、NRCのようにいきなり3,000名というような組織は無理だろうと考えます。

ただ、やはりそういうことを実施していくのは、私は、実施するようなあれを立法府の方で、例えば、先ほどメモをお手元にお届けしましたけれども、今回の事故からどういう教訓を引き出すかということに関して、衆議院議長が任命するような独立した調査委員会がきちんと調査したものに基づいて国会などでも議論していただくのがやはり適当なのではないかと思っております。

以上です。

○辻(一)委員 能澤先生には、時間の点でお尋ねできずに大変恐縮です。

終わります。どうもありがとうございました。

○北側委員長 西博義君。

○西委員 公明党の西博義でございます。

きょうは、4人の先生方に大変貴重な御意見、御提言をいただきまして、ありがとうございます。順番にお伺いをしてまいりたいと思いますが、初めに、能澤先生にお伺いをいたしたいと思います。

先ほどのお話の中で、スリーマイル島の事故以来、種々いろいろな防災に関する討議、検討を行ってきて、ことし4月には「原子力防災対策の実効性向上を目指して」という形にまで仕上げてこられていたということをお伺いいたしました。しかし、残念ながら、国艮の皆さんに至るまでなかなかそのこと自身は理解を得られていなかったんではないか、議論の中でいろいろ検討はされていたんでしょうけれども。そんなやさきに今回の東海村の事故が発生した、こういうことだろうと思うんです。

今回この事故が発生をして、その対応として今回のこの原子力災害特別措置法が今討議に上っているんですけれども、皆さん方がこの4月まで検討されていたその内容と、今回実際に事故が起こったことを受けてこのような形で法案として上がってきた内容についての違いといいますが、それを少し御説明いただきたいと思います。

○能澤公述人 お答えいたします。

法案自身は「原子力防災対策の実効性向上を目指して」を全面的に取り入れていただいたというふうに思っておりますが、そのほかに重要なことは、原子炉規制法の方におきましても原子力保安検査官という制度ができまして、従業員の教育についての検査をする、実際にきちっと教育をしているかどうかを、安全教育を行っているかどうかを検査していく、これは非常に大事なことではないかと思います。

例えば、今回の事故におきましても、あの作業員3人が、臨界事故というのはあるんだ、先ほど森公述人が言われましたように、特に溶液はやばいんだ、溶液というのは臨界事故を起こしやすいんだということを知っていればああいうことはしなかったと思うんですね。そういうことも含めて、それでまた防災の方でも防災専門官をつくるということで、国の体制としては両面から防災について強化しているというふうに思います。

そういった意味で、我々の「実効性向上を目指して」で種々提言をいたしましたが、法律は出てきても、今後それに適切な人員を充ててきちっとした運用をしていただきたい、法の運用が今後大切ではないかというふうに思っております。

○西委員

特に、今回、オフサイトセンターという形で、いわば防災の拠点という形でしょうか、災害の対策の拠点にもなる、こういう形とか、避難訓練について具体的に定める、こういうことが決まっております。

先生も先ほど、防災訓練、避難訓練そのものが非常に悩ましい問題であるというふうにちょっと漏らされたように思いますが、その辺の審議の過程で、こういうことが実際に起こらなくて、今までどちらかというと原子力施設は安全だということが国民の間では巷間言われてきたように思うんですが、その辺の議論はその当時からなされていたというふうに解釈してよろしいんでしょうか。

○能澤公述人 お答えいたします。

御指摘のとおり、訓練のシナリオを考える際には、先ほど角田公述人が言われましたように、いわゆる過酷事故、英語で言いますとシビアアクシデント状態になると、今の制度といいますか、これはある意味では強く勧告するというか、そういう形に原子力安全委員会はいっているわけでございます。

過酷事故状態、これはどういうときに起こるかといいますと、TMIの事故のときがその典型でございますが、せっかく動いたECCSバルブを締めてしまった、ECCSの水をとめてしまったということが原因でありまして、要するに、運転員の誤操作が何度も重なりますとそういう過酷事故になるおそれがある。そういう場合には、現行では、各事業者が、原子力発電所の場合ですが、何としても炉心の冷却を継続するために、どこからでもいいから水を持ってきて入れるというようなことをやるべきだということになっております。これを英語でそのまま使っておりまして、アクシデントマネジメント、つまり、想定外のアクシデントが起こってもそれをマネジメントしよう、最大限の努力をしようと。

それがうまくいけば防災は必要ではないのでありますが、うまくいかないときには放射性物質が多少出てくる可能性がある。そういった場合に、原子炉の専門家の方では、確率論的に炉心溶融が起こるケースはどれだけのケースがあるか、どういう場合に炉心溶融に至るおそれがあるかということを種々計算しております。

現在では、例えば五つぐらい考えられるケースが同じ重さになるように発電所の方では努力しているわけでございまして、どの一つも飛び抜けてその確率が高いというのは、これはハードウエアの方で処置して、日本の場合は、今そういうシビアアクシデントになる確率というのは、我々は、炉年当たり、原子炉を1年運転した場合にという単位で炉年当たりと言っているのですが、一応10-7というふうになっております。それにしましても、例えば五つのケースのどれをとって防災訓練に持ち込むかというのは大変難しい話でございます。

以上でございます。

○西委員 続いて、村上公述人の方にお願いしたいと思います。

私も、事故翌日とそれからしばらくたって2度訪問させていただきましたが、村長さんの苦悩とまた決断というのは本当に大変なものだなということを感じてまいりました。今回このような形で法律としてでき上がっていく予定ですけれども、このままでき上がったといたしますと、お帰りになりましたら村長さん、地元の村長の皆さんにどういうふうに御説明されるか、ちょっとお聞かせいただきたいなと思います。具体的に、こちら側を村民の皆さんとして、メッセージをひとつお願いしたいと思います。

○村上公述人

私は芸人ではございませんのでなかなか難しいのですが、私としましては、今回原子力災害特別措置法ができたということで、これは私が村長になってからの念願でもありますし、また炉規法の改正それ自体はもちろん賛成ですが、二つ。

今回の事故が起きたときに、村としましては、非常に情報不足の中で避難をさせた。それにつきましては、私自身はずっと自信はございませんでした。科学的な論拠も余りないということで、これはジェー・シー・オーの所長さんの要請によりまして応じたというだけでございましたので、非常に皮膚感覚的なものがございました。今度は政府がきっちりと責任を持ってくれるということにつきましては、少しは責任ある対応ができるかなということでありますということを報告したいと思います。

ただ、問題は、先ほどから出ていますように、政府の本部ができてそれから指示が出されるまでの間、それはどうするのかということにつきましては、今後、政府としましても、細則やその他できっちりとお決めいただきたいという気がしております。

もう一つ。

東海村の我々としては、前々から言っておりましたとおり、やはり目に見えるような安全規制をやってもらいたいということで、そのためには組織的にもはっきりした組織にしていただきたいということ、この点につきましてはまだ不満でありますということを村民には私は言っておりますし、今後もこれで終わりということではございません。

以上です。

○西委口 ありがとうございます。

もう一つは、今回現実に事故の対策で遭遇された、村長さんが種々の決断をされる際の問題点が御自身からも表明されました。それに対応して、今回オフサイトセンターという形で、国、それから自治体、県も含めてでございますが、それから事業者一体となってこれに当たるという形ができるようになりましたけれども、今回の事故の場合、村長さんから見られて、どの方が最終決断を、もちろん最終の最終は総理だということに大きな事故の場合はなるのでしょうけれども、どの方に決断していただくのが一番安心できるというか、いいなとお思いになられるか、ちょっと教えていただきたいと思います。

○村上公述人

今回オフサイトセンターができるということで、そこに現地対策本部が形づくられる。それは、県知事から市町村長が集まりまして、それと政府の方から来るということで、この法律にのっとれば、政府からきっちりとした責任を持てる方、意思決定ができる方が最初に乗り込んでくるべきだろうと私は思っております。それで、その中で、地方自治体、地方公共団体が意見をきっちりとすり合わせをした中で対応できるだろうと私は思っておりますので、政府の派遣されるその現地の指揮者がどなたであるかということが一番大事かなと思っております。どのような権限を持っているかということが大事だと思っております。

○西委員 続きまして、森公述人にお願いをいたします。

先ほどのお話で非常に興味深かったのですが、私も実は、この試験棟というのは、実験室レベルがそのまま実用段階になったのかな、連続的な製造をしているわけではなくて、季節的にちょっと、片手間にと言っては非常に失礼ですけれども、そんなレベルのものだったのじゃないかなと思っていただけに、よりリアルに聞かせていただきました。

それが一つの原因だと私も実は思っておりましたけれども、そのこととは別に非常に私も注目した内容は、今回の防災対策に関して、風水害やハリケーン等災害一般を取り扱う仕組みがあった方がいいのではないかと。確率論的に原子力災害というのはそう多くないということを根拠にしておつしゃられたんだと思います。私も実は、その確率論的なことは別にいたしましても、それだけという形よりも、もちろん事故の原因究明とかそういうことは同時に、いち早く突きとめなければならないことが前提ですけれども、避難をするとか、そういうことに関しましては同じ種類のことですので、その考え方の方がいいのじゃないかというふうに思っておりましたが、公述人のもう少し詳しい御説明をお願いしたいと思います。

○森公述人

私の意見に御賛成いただきまして、ありがとうございました。今おっしゃったことに尽きるわけでございまして、随分共通するものもございますし、もともと原子力文化といいますか原子力都市というのは、科学技術の粋である原子力を扱うわけですから、あらゆることにおいて最も整備しておる社会である。病院もそうですし、今の被害対策もそうですし、そうなるべきだという哲学からいって、そうすべきだし、またそうすることによって、専門家が、しょっちゅう起きるといいますか、そういう在来災害で磨きながら、しかも一流の知識を持っている人を、そんなに多数は要らぬと思いますけれども、取り込んでいくということで一層意味のある組織になるのではないかと思いますので、ひとつぜひそういうふうに考えていただきたいと思います。

○西委 時間が参りましたので、以上で終了させていただきます。ありがとうございました。

○北側委員長 菅原喜重郎君。

○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。

きょうは、4公述人から貴重な御意見を陳述いただきまして、本当にありがとうございました。

今回のジェー・シー・オーの臨界事故、もう最近ずっと、原子力関係ばかりじゃなくして、新幹線の事故、あるいはロケットの失敗、そういうことが続いているものですから、全く日本人の、政府の国策として遂行している事業に対しての不信感が増大しているわけでございます。

私は、そういうことで、委員会で今回の臨界事故を取り上げました際は、調べますと、これは技術的な欠陥じゃなくして、マニュアルをさらに変えた裏マニュアルも守らないような、全くこれは道義の欠如が起こしている事故だ、こういうふうに私は理解しておりました。

しかし、きょう、事故を起こしたことに対する公述人の御意見を聞いておりますと、やはり法整備あるいは体制整備の不備、そういうことがあったこともはっきりしておりますし、これに対応するところのやはり今回の原子力災書対策特別措置法等の法案だ、こう思っているわけでございます。

私としては、最初の倫理の欠如からくる事故、そういう観点から見ますと、今回の災害対策特別措置法案等に対しての予算要求が大体1,297億円でらいですか、1,300億円ぐらいいわゆる要求されようとしているわけですから、3,000市町村で割りますと約4,000万以上なんですね。ですから、安全を守るコストというのはいかに金もかかってくるものか。そうなりますと、今回のこの措置法案で、こういう大きなお金を使いながらも、果たして安全が確保されていくのか。これは、国民もこういうことのいわゆるお金、費用ということにも本当に関心を持ってもらわぬといかぬことで、ただ防災、防災とかけていっても大変なわけです。そういう点では、森公述人も言われましたが、やはりモラルがないと組織はもたない、これは当然でございますし、また法律の運用も総花的ではだめになっていくということも言われました。全くこのことには同感であり、また、形式主義に流れますと文書被害、風評被害も大変で、この対処も、報道の関係者の表現不足とか勉強不足、形式主義が大きく影響していること、これも全くだなと思っております。

そういう意味では、こういう公的機関に関係している人たちの厳しい意識改革を今日本がなさないと国を滅ぼしていくな、こういうふうに痛感させられたわけでございます。

そこで、4公述人にお伺いするんですが、今回の法案に対して、手薄な点があるとすればどういうことなのか、あるいは運用にはどういう点をいわゆる重点にして、どういう点に気をつけていかないとまた形式主義に流れていくんじゃないかという点がありますならば、ぜひ一人一人、ここは公述人はもう忌憚のない御意見を申し述べられて結構な場所でございますから、ひとつそういう意味で、初めに角田公述人から、次に森公述人、村上公述人、能澤公述人、4人に2分から3分ぐらいの時間帯で御意見をお聞きいたすことができれば幸いだと思います。

[委員長退席、西委員長代理着席]

○角田公述人 お答えして、感想を述べさせていただきます。

特別措置法に関して、今後実施していくときに私が非常に大事だと思っているのは、それが適用される住民と、それから災害対策本部なり地域のオフサイトセンターなりの信頼関係だと思うんです。その信頼関係をつくっていくために、住民への説明、緊急時対策の説明を事業者も地方自治体も国も丁寧にやる必要がある。

特にそう思いますのは、外国で私が見たのは、アメリカとイギリスとドイツの地域住民に配っている防災パンフレットというのを見ますと、非常に正直で具体的だという感じがするんです。一番最初に、あなたはある意味では危険と隣接して暮らしていますよというようなことをやはり率直に書いて、それから具体的な指示、警告の出し方などの説明がありまして、そういう警告を受けたら子供を学校に迎えに行ってはいけないとか、それから、ペットは避難所に連れていかないでうちの中に置いておけとか、出るときにはかぎを必ずかけろとか、手回り品はこの程度のもの、こういう非常に具体的なことが書いてあって、ドイツの場合には、なぜそういう注意をしているのかという理由が説明してあるんですね。そういうのを配りますと、それ自体が、それを読んでもらうことが私は防災訓練の一部になると思います。

それから、スイスの場合には、沃素剤を、原子炉から半径3キロないし5キロの地域は全戸に事前に配布しているんですけれども、それも責任ある人間が全部戸別訪問して渡しながら、面接でもって、紙であれするんじゃなくて、これを飲むときにはこう注意しなさい、これをしまっておくところはこうしなさい、しまっておく上にこのステッカーを張って、ここにあるなというのがわかるようにしなさい、こういう注意を払っています。

私は、そういうことを今度の実施に当たってはぜひ心がけていく必要があるだろうというふうに思います。

○森公述人

もう大部分は今の御質問には答えておりますので、一言で申しますと、重点的に効率的に実施するということに尽きると思います。

今角田参考人のおっしゃったのは、それこそチェルノブイリ級の事故の話を例に言われたわけですけれども、平素から、先ほど申し上げました放射線の安全ということについての本当に親切な、科学的な事実に基づいた説明をしておくということが何といっても一番基本的な大事なことではないかと存じます。

以上でございます。

○村上公述人

この法案を生かすことができるかどうかということは、私は、やはり国の原子力政策を推進する人たちの気持ちの方が大事だという気がいたします。

原子力発電所の事故というものは確率1,000万分の1であるという話を、先ほど森参考人の方から10-7分の1ということで言われましたが、私は、ここでちょっと違うなどいう気がいたします。私どもの方としましては、あのように臨界事故が起こらないと思われていた会社で臨界事故が起こったということを非常に恐れております。そういう点では、やはり原子力の災害というものは起こり得る、そのためにこの法案をつくり、そのための体制整備をしていくんだという気持ちがなければ、やはり全体として私は形式主義に陥るだろうという危倶をしております。

各論でいけば、私は、現地対策本部がどれだけの機能を持てるか、どれだけの力を持てるかということになろうと思います。そこに集まる人たちが、その地方自治体あるいは市町村のそれぞれの権限を持つ者、国の方から来られる方も権限があるというような方でなければとても事故対応はできまいと思っていますので、いわゆる職員が来るとか、その程度ではとてもできないと思っています。

基本的には、法律ができたから安全だということはありませんが、やはり原子力の災害、事故というのは起こり得る、私どもは現実に体験しておりますので。

それから、住民の避難もやったわけですから、住民避難の訓練もしなきゃいかぬということは現実でありますので、そのような気持ちになっていただけるかどうかということだろうと思っています。

私の方は以上でございます。

○能澤公述人 お答えいたします。

今後この法律が実施されるに際しまして、例えば政令というのがこれから細目としては決まるわけでございますが、その際に専門家の意見をよく取り入れていただきたいということが一つございます。

それから、住民の方に対しての御説明ということでございますが、今後訓練を大々的にやっていくということになりますと、できるだけたくさんの人に、参加でなくて見物に来ていただくという形で認識を改めていただければいいのではないかというふうに思います。

訓練の中で一番大事なことは連絡が正しく行われるということでございまして、今そういう意味では、昔のように電話だけではなくてファクスも使えますしパソコンも使える、インターネットも使えるという形で、図面等も簡単に送れますので、そういう連絡訓練を確実にやる必要があるのではないかというふうに思っております。

○菅原委員

時間ですので、最後に一問だけ角田公述人にお伺いしますが、先ほど日本版NRC委員会の設置のようなものを要望されましたが、この点についてもうちょっと詳しくお聞かせいただければ、要望の形でもよろしゅうございますから、お願いしたいと思います。

○角田公述人

アメリカのNRCというのは、私が先ほど申しましたように、諸外国の中でも飛び抜けてスタッフをたくさん持っているところです。しかし、スタッフを持っていないところでも、私の調べた範囲はヨーロッパが中心ですけれども、ヨーロッパ諸国も、具体的に安全規制あるいは災害時の指揮の責任を持つというところは、いわゆる原子力の利用促進機関から独立したところ、例えばイギリスなんかですと、何省というのかわからないですが、雇用省、労働省と厚生省の間の省のようなところですね。それでエネルギー省と全然別に、そこの中にかなり強力な委員会をつくってやっているというような形で分離しているわけです。

日本型でどうすればいいのかというのは、私は、現状のまことに貧弱なものからスタートしてやるとすれば、やはりかなり検討をして、スタッフもどこから集めればいいのかということも含めて、衆知を集めないと、法律だけ変えてもすぐにはできないだろうというふうに思っております。

[西委員長代理退席、委員長着席]

○菅原委員 以上をもって質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

○北側委員長 吉井英勝君。

○吉井委員 4人の公述人の皆さん、きょうはどうも御苦労さまでございます。

私、最初に村上公述人に、大体基本的に皆さんからも御質問ございましたし、最初の陳述でもお聞かせいただきましたけれども、一つは、避難勧告をしたりする権限は地方自治体の長、それを専門的、技術的な面で、現地でもそうですし、それから本庁からも迅速にやはりサポートしていく、そういう専門的、技術的な面で迅速な対応ができるようにサポートする、その点について、今回の経験を通じてさらにお感じになっていらっしゃる御意見などあれば、追加的にお聞かせいただければというふうに思います。

○村上公述人

我々のところでは非常に情報の少ない中で、0.84ミリシーベルトのガンマ線が出ているというのが唯一の数値でございまして、それと、私が決意したのは、ジェー・シー・オー側が持ってきた避難地図ということでありまして、その2点だけで、あとは現場の緊迫感といいますか、そういうものと臨界という言葉で避難をさせたわけでありますが、当然、その後出てきた中性子の話ということになってきますと、非常にわからない世界になってきまして、果たして350メーターでよかったかどうかというのが、11月4日の科学技術庁の線量評価が出るまで非常に不安でございました。

その間に、350メーターで十分かどうかということで、政府の現地対策本部と私どもの方と共同して対策を練ったわけでございまして、500メーターまで拡大するかということでその準備も万全を整えたわけでありますが、幸いにして臨界の方をストップさせることができたということで、それはしないで済んだということであります。

政府の対策本部、現地の方ですが、政府あるいは科学技術庁の方は、報道陣はヘリコプターで飛んでいましたので、当然ながら私はヘリコプターで速やかに現地に入ってもらえるというふうに期待はしておりました。これは余談でございます。

○吉井委員

次に、私は森公述人の方に伺いたいと思うのですが、かつて原子力産業会議の方で「大型原子炉の事故の理論的可能性および公衆損害額に関する試算」というのを40年前に行われて、そのときは16万キロワットの原発についての過酷事故の想定でした。現在は135万キロワットとかそういう時代になっていますから、せっかく40年前に行われた皆さんの研究、試算、この前も、前の有馬科学技術庁長官のときでしたが、有馬大臣自身が、今日でも生かされる非常にすぐれた科学的な分析手法である、こういう評価をしておられまして、そういう点では、森公述人のところでは40年前に非常にいい成果物というのをまとめられたというふうに私は思っているのです。

そうすると、今度は原子力防災を考えるわけですから、全国の地方自治体からも、実際にどれくらいの災害規模を想定して、それに対してどういう防災資機材をそろえたり防災訓練をやるか、こういうところが大事だということで、いろいろな要望をお聞きしております。

こういう点では、今日の時点で、40年前に行われたものをさらに精密に、135万キロワットの場合の過酷事故を想定した試算などを行われるということは、今の時代の要請にこたえることになるのじゃないかと思っているのですが、その辺のお考えとか、その40年前になさったことの意義をどういうふうにつかんでいらっしゃって、それをどう生かしていこうというお考えか、その辺のところをお伺いしたいと思うのです。

○森公述人 お答えいたします。

40年前に私自身が、今存命の者の中では私ともう1人ぐらいですが、中心になってまとめたものでございまして、先ほどもちょっと申しましたけれども、あの調査の目的は、頭から原子力発電所の中にある放射能が50%とにかく出てしまったとした場合にどうなるか、これは原子力損害賠償制度法をつくるための材料としてつくったわけでございます。それに付随して、退避道路が必要であるということを。

だから、恐らく全国唯一だと思いますが、東海村には施設から放射状に道路が引かれているわけですね。原子力ではあらゆる危険を先取りして対策を講じるんだということを東海村の方々も十分理解しておられますから、退避道路なんというようなことを言っても全然動揺もなかった。そういった初心を忘れていたということが今日の一つの原因であろうと思いますけれども、そういう意味で、目的が全く違うのです。

ところが、最近いろいろなところでお褒めにあずかるのです、その方法論はなかなか立派だというので。あのときにサットンの式だとか拡散式だとか、当時はまだアルミサッシがなかったのでアルミサッシがないものとしようとかというようなことをいろいろ、方法は若干役に立つ点があるかと思いますが、目的が全く違うのです。隠していたわけでも何でもございませんし、国会でも私もたしか参考人で呼ばれて説明したと思います。

以上でございます。

○吉井委員

それで、私の方も損害額の方に今関心を持っているのじゃないのです。むしろ、せっかくなさった分析の手法を生かして、135万キロワット級の原発での過酷事故、あのときは16万キロワットでそれを想定されたわけですから、随分大きいわけですから、それに見合う放出される放射能の総量であるとか、拡散式はこれを使ったらこうなるとか、その場合にどの地域まで影響が及ぶとか、その研究自体は、今もおっしゃったように今日的意義を持っていると思いますので、その意義と、そういう立場で原産会議としても分析をされるというお気持ちがおありかどうか、その辺を伺いたいと思っています。

○森公述人

135万と16万で、被害額が比例するわけではございません。あの当時はそれこそコンテナなど安全設備の全くない原子炉で、いろいろな安全装置が全然働かない、ないものを想定しておりますから、キロワットには比例しない。

私の方でやるかどうか。あれは政府の委託でやったわけでございますけれども、私のところよりは適当な機関があろうかと思います。まあ、やれと言われれば断りはしませんけれども。

以上でございます。

○吉井委

私も、原産会議でなさるかどうかは別として、これは、いずれにしても原子力防災をどう進めるかという現実の問題として想定してやらないことには防災対策はさっぱり成り立ちませんから、原産会議が取り組まれたその手法というものは大事にしてやっていくべきであろうなというふうに思っております。

次に、角田公述人に伺いたいのですが、動燃の再処理施設で300件の変更申請なしの運転が行われてきたことというのは先日のこの委員会でも取り上げたのですが、実は、けさの毎日新聞でも、臨界防止装置故障のまま17年間操作をしてきたという事実が報道されました。

動燃の中でだれかやっている人間が何でそれを指摘できないのか。それは、動燃の所属長に対してであれ、あるいは労働組合に対して持ちかけていくにしろ、あるいは国の方へ持っていくにしても、何でそれができなかったのかということ。今回たまたまその施設で事故がないままであったとしても、それがあればジェー・シー・オーのような事故は防ぐことはできるわけですし、それからもう一つは、書類を上げる側の科学技術庁の役人の人にしたって、安全審査を安全委員会に全部を任せているわけじゃなくて、事前にチェックするわけですから、だれか1人ぐらい気がついてもよさそうなものだということが、これも非常に不思議なところなんですね。

外国の法律では、公務員の守秘義務というのは公共の利害に関しては緩和されるべきだということで、公務員を含めて内部告発者の保護というのが法制面でかなり整備されているようですが、この点について、内部告発者の保護ということでのアメリカその他での法制面の整備という点で、角田公述人の方から追加して御紹介いただけることがあれば伺っておきたいというふうに思います。

○角田公述人

2つの関連する御質問がございましたけれども、最初の方の動燃のこと、最近の例はちょっとよく知りませんが、再処理施設というのは、私の考えでは、あらゆる原子力施設の中で周辺への潜在的影響という点では一番重大な施設だと思います。

その再処理施設で、内部からこういうところがまだ問題が残っているといういろいろな指摘があったのは、一番最初の建設段階です。建設して、最初は、ウランテストといって、照射されていないウランを溶かして工程をテストすることをやって、その次に、今度は、ホットテストと呼んでいましたけれども、照射された放射性物質を持ったあれを流してテストする。そのホットテストまでに全面的に点検をしろということを当時の現場の技術者たちが言い出したのです。

それを、当時の労働組合は、重要な指摘だということでもう一遍アンケートをとって、まだ80カ所不安全箇所がある、これはホットテストの前に直さないと放射能が各部に付着しますから立ち入って直せなくなる、だから今のうちにやってくれということを上司に言ったりしたことがあったのです。その後、私らの中のそういうことを提言した人たちとの座談会がありまして、そこで知ったあれでは、その後、動燃事業団当局から風当たりが物すごく強くなってしまって、民間会社から労務担当理事を呼んできて労務担当を差しかえて、猛烈に組合内の刷新運動が起こってしまって、そういうことはもう一切言えないような雰囲気になったという話は聞いております。

そういうようなことを考えますと、原研でも一時期同様なことがあったのですけれども、やはり民間会社から労務担当の理事を送り込まれました。ただ、研究機関ですから、我々はいろいろな事件が起こると例えば日本学術会議というようなところに調査依頼をしたりすることができます。それから、各種の学会でも、そのやり方は原研の理事会としてはひど過ぎるのじゃないかという世論も起こりますので、我々のところは最終的には、私が先ほど申しましたような例はその後だんだんとなくなりました。だけれども、これは私の憶測が入りますけれども、動燃ではやはり今まで続いているのじゃないかという点が心配な点です。

それから、内部告発ということを嫌いな方が日本では多いので、アメリカのホイッスルブロアというのは、本当に身を挺して人々に危険を知らせる人々というように響くのですね。

ホイッスルブロアと申しますけれども、ホイッスルブロアを保護する制度は、これは各国でもありますが、アメリカでは原子力以外の分野でも、そういう制度は法に基づいてあります。原子力の場合には、連邦規制、コード・オブ・フェデラル・レギュレーションの10番、10CFRというところにいろいろな規制が入っているのですけれども、その中に詳細に、どういう場合に不利益処分について申し立てできるか、そういうことが決めてありまして、手続なんかも2ページにわたって詳細に出ております。

それからもう一つ、私が、アトミックエナジー・クリアリングハウスという官報みたいなものがあるのですけれども、それを読んでいましたら、今度は原子力の推進機関であるDOE、エネルギー省のオレアリー前長官、この方が、このホイッスルブロア保護制度は非常に重要であるからということで、議会で取り上げている。それから、GAOという会計監査院みたいなものが、議会の機関だと思いますが、アメリカにありまして、それもこの制度がちゃんと実施されているかを検査するということで、その検査結果のレポートも読みました。

以上です。

○吉井委員 時間が参りましたので、これで終わります。公述人の皆さん、どうもありがとうございました。

○北側委員長 辻元清美君。

○辻元委員 社会民主党の辻元清美です。

本日は、公述人の皆さん、お越しいただきましてありがとうございます。貴重な御意見を伺いました。

さて、その中で幾つか具体的にお聞きしたいことがあります。

まず、村上村長にお聞きしたいのですが、緊急時だけではなくて日常活動で、運転管理専門官とか、それから今度原子力防災専門官が規定されておりますけれども、オフサイトセンターなどができたとして、日常どのような活動をお互いの情報交換としてしていくのがいいかというところがなかなか、国会の中の議論でも、オフサイトセンターができてそこで一体何をするのだろうというところをかなり各委員が質問もしているのですけれども、現場から見まして、日常どのような情報交換が一番望まれるというようにお考えでしょうか。

○村上公述人

運転管理官とか保安官とかいう言葉とオフサイトセンターとをどう結びつけるかという、私自身もイメージはわいておりません、はっきり言いまして。オフサイトセンターの機能とか役割、その陣容とか、とてもまだ想像もできませんので。

ただ、私としましては、オフサイトセンターには、いろいろな機器、資材を装備しておくとか、あるいは薬剤だとか救助用の防護服だとか、そういうものは期待しているところではありますし、あるいは通信設備も、そこに行けば統一的な通信手段がとれる、あるいは住民広報もできるとか、そういう設備を、私はどちらかというとそういう物的な方面での整備というイメージを期待しているところもあります。

それと、そういう場所が決定しておれば、あとは、先ほど申しましたが、レスキュー隊というものを登録制か何かで常に把握しておいて、それで何か起きたときにはそこに集合できる場所とか、あるいは、政府の現地対策本部をつくるあるいは市町村の合同協議会をつくる、そういう場合にはそこの場が重要な場所となるというような意味での私は期待をしているわけですが、運転管理官とか保安宮とかということにつきましては、ちょっと余り期待していない面も今のところはあります。

以上です。

○辻元委員 率直な御意見、どうもありがとうございました。

さて、もう一点、これは能澤公述人と村上公述人にもう一度お伺いしたいんですが、今の事故調査体制なんです。

先ほど、角田公述人の方から第三者機関という御指摘がありまして、私もなるほどなと思いながら聞いておりました。といいますのは、今まで動燃の事故なんかありました折も、どうしても専門家に偏りがちなんですね。

そうすると、先ほどからもちょっと出ておりますが、恐縮ですが、何万分の1の事故だ、だから、こうくるんですけれども、何万分の1の事故でも起こるやないか、だから怖いというのが一般の住民の反応だと思うんです。何万分の1の事故がこんなに起こってしまったじゃないかと。こんなに毎年いろいろ起こっているわけなんです。ですから、現在の事故調査体制などについても、第三者機関の御提案は非常に参考になりましたが、この点、今、現状のような状態についての御意見、御不満もあろうかと思いますが、率直にお二人にお伺いしたいと思います。まず、能澤公述人からお願いいたします。

○能漫公述人

事故の再発を防ぐためには、専門家が集まった調査委員会というのは大切だと思います。

先ほど角田公述人から話がありましたように、ケメニー委員会というのは、広い意味で社会制度も含めた検討をしたわけでございますが、NRC自身は、ゴロピン委員会というのを別につくりまして、技術的な面について非常に詳しい報告書を出しております。ケメニー委員会はもっと広い立場でやっておりまして、両方あってもいいんじゃないかというふうに考えます。ですから、私自身は専門家でございますので、詳しい原因を追求し、それを再び起こさないようにするということは非常に大事だと思いますが、別の立場もあってもいいんじゃないかと思います。

そういった場合に、日本では、例えば政策の転換の場合でもそうなんですが、第三者的ないろいろな機関がどうも少ないんではないか。アメリカでは、例えば第三者的な機関が非常にたくさんあります。そういうものは、日本は、どっちかというと各省庁の管轄下に置かれていて、どうもひもがついているというような感じがいたしますが、独立的なコンサルタントのようなのがたくさんあると、そういったときに非常に役に立つんじゃないかと思いますが、現状ではなかなか難しいというように感じております。

以上でございます。

○村上公述人

現在のジェー・シー・オーの臨界事故につきましての事故調査委員会につきましては、技術的な調査に集中されているということで、私どもの方はもっと住民生活の方に今は関心が移っておりまして、余り事故調査委員会につきましては私自身もそう重きを置いていないというところがあります。その中で重きを置いているのは、やはり、いわゆる住民の健康調査等についてであります。

事故調査委員会の仕事が、今後のいわゆる原子力行政のあり方、あるいは規制のあり方、あるいは防災のあり方ということにぐっと踏み込んでいただけるならば私も興味を持ちますが、今のところは、臨界がなぜ起こったのか、どのようなことかというのがどうも話の中心になっているようでございます。それは極めてもう明らかな、はっきりしているなという感じもしていますので、今後、やはり原子力全般につきまして、あるいはそういう組織体制全般につきましてということならば、そういう事故調査委員会もあってもいいなという気がしております。

○辻元委員 ありがとうございました。

そうしましたら、角田公述人にお伺いしたいんですが、かつての原子力関係の組織の中での御体験も踏まえられまして、今、内部での議論がこうだったというような実例も挙げて公述いただいたわけなんですけれども、原研とかいろいろありますね。その内部での情報交換もなんですが、外に対する情報公開度、市長それから地元の住民に対しての日ごろの情報公開度がとても低いという点を私はずっと指摘したわけなんですけれども、そういう原子力関係の組織の中で働いていらっしゃった御経験から、一般市民に対する情報公開についての問題点などお感じのところがあればお聞かせください。

○角田公述人

私は、原子力事業所の中でも研究所というのはやや特殊かと思いますし、そこでの体験しかないものですから、限られた見解になりますけれども、例えば市民との対話とか情報の公開ということをやる際に、これは、会社に、いわゆる就業規定に縛られている従業員ですから、一人一人が上司を飛び越してそれができるかというような問題が出てきます。そして、上司の方を眺めていますと、その上司は全部監督官庁を眺めているわけです。監督官庁は、具体的には科学技術庁です。ですから、そこからわきに、原研の理事が住民に対して、こうこうこういう施設についてこうだということを科学技術庁の承諾なしに言えないという空気が強くて、それをわずかに破るのが、どうしようもないときに、所員が、一個人の研究者としてこう思うというようなことを、例えば日本原子力学会とか、それからいろいろな懇談会とか労働組合の場とか、そういうところでわずかに言えるわけです。

そういう意味では、今度の事故でも、原子力関係の労働組合では唯一発言したのは、私のおりました職場、日本原子力研究所の労働組合だったと思うんですけれども、事故の直後の10月3日に、科学技術庁長官と原子力安全委員長に申し入れをしています。

その申し入れの中で、何点かあるんですが、非常に急いで言っているのは、あの周辺に住んでいた人の体内被曝の調査を早くやらないといけないということ。これはかなり専門的なあれなんです。つまり、中性子を浴びますと、浴びた物体自身が放射性を帯びる場合があるわけです。人間の体の中では、ナトリウムというのが放射性のナトリウムに変わるんですが、これは十数時間で放射能が減ってきますから、早目にそれを見つけて、体内に持っているそのナトリウム24の放射能の強さをはかったら、この人はどれだけの中性子を浴びたということがわかる。ずさんな管理のために会社には中性子線量測定器がないんですから、それは急ぐ、一日おくれたらもう検出できなくなるというような申し入れを例えばしています。これを私は対話の一つだと思うんですけれども、少なくとも村上村長さんがその対話を成立させてくれたと私は思うんですね。そういう点で、私、村上さんというようなすばらしい村長をあの事故の東海村は持っていたというふうに、いろいろな点で本当に率直に感じます。

○辻元委員

ありがとうございます。さて、もう一度村上公述人にお伺いしたいんですが、避難の際の体の不自由な方々に対する措置も、これは十分考慮しなければいけないと思うんです。今回の現状では、目や耳が不自由な方、おひとりで動けない方々の現状はいかがだったか、ちょっとお願いいたします。

○村上公述人

避難させる場合には私どもは十分やったんです。避難は、我々役場の職員が、町内会単位で全部把握しまして、一軒一軒訪問して避難させました、それはパニックを抑えるということもありましたので。それで、体の不自由な方一人が避難を拒否するというかうちにいるということで、これは年配のおじいさんでしたが、その方につきましては、最終的には老人保健施設の方で引き取ってもらったというようなことでございます。その点、避難につきましては、39世帯ですから人数も限られていて、割と丁寧にはできたということでよかったんですが、問題は広報ですね。情報を伝えるということにつきましては、目はいいんですが、耳の不自由な方とかあるいは外国人だとかということにつきましては、まあ外国人に対しては英語で3回ぐらいやりましたが、決定的に不十分だと思います。

そういうことで、そういう身体障害者に対しての問題というのは、全般的にできているとは私も思っておりません。反省材料として思っております。

○辻元委員

それでは、最後の質問をさせていただきたいんですが、本委員会でも科学技術庁の責任ということを随分たくさんの委員が指摘しております。

といいますのは、この安全審査、そして、結局事故に至るまでの監督不行き届き、それから事故対応ということで、多くの委員が指摘しているところなんですが、この科学技術庁の責任についてどのようにお考えになっているか。村上公述人は既に公述の中でこれは指摘をいただいておりますが、ほかの3名の公述人の方々にこの点をお答えいただきまして、質問を終わりたいと思います。

○能澤公述人

私は、今回の事故はジェー・シー・オー側の犯罪であると思います。あれは立ち会い検査をしても指摘できません。まさか、機械があってもそれを使わないで、バケツで全部処理しているとはだれも思いません。例えぱの話、検査に行って、使っていない、だけれども、きょうは担当者が急に休んだものですからやっておりませんと、バケツをカーテンの陰へ隠せば絶対わかりませんから、あれは知能犯的な犯罪行為であると思います。

しかも、それを恒常的に7年前からやっていた。例えば、5%以下の濃縮ウランの場合でも、沈殿槽には10キログラム以上は入れませんと約束しております。約束しておりますが、それを無視して20キロ入れて平気でおった。つまり、裏マニュアルすらも破ったということは、もう恒常的にそういう約束を破る体質になっていた。しかも、立ち会い検査を逃れる工作。その裏マニュアルをよく読むとわかりますが、すべてポータブルになっています。そのポータブルになっておる理由は何かというと、固定施設をつくれば、これは何に使うんだということから質問がされればだんだんばれていく、したがって、全部ポータブルで裏マニュアル化されている。

そういう意味で、これは、科技庁の責任というよりも、ここまでの犯罪行為を念頭に置いてやらなくちゃならないという日本の全体の体質といいますか、そういうことが情けないと思います。もう少し遵法精神があってもいいんじゃないかというのが私の感想でございます。

○森公述人

ジェー・シー・オーの責任については全く今能澤先生がおっしゃったとおりで、私もそのとおりだと思います。

しかし、さっきから申しているように、あの小屋は18.8%濃縮というウランを扱っている。これは、安全はもちろんですけれども、いわゆるPP上もそれから核不拡散上も注目しなければいけない施設なんです。それを、これは私も全く責任がないとは言えぬかもしれませんが、注目していなかったという点から、科学技術庁の責任は小さくないと思いますね。安全委員会だけじゃなくて、ほかの委員会もそうだと思いますが。やはりあの施設は本当にそういう施設でございます。日本唯一なんですから、あの小屋しかないんですから、低濃縮以外のものは。

以上でございます。

○角田公述人

科学技術庁の前に、私も能澤公述人と同感です、ジェー・シー・オーのあれは犯罪的事故であると。

しかし、そういう意味でいえば、ジェー・シー・オー及びジェー・シー・オーの親会社の労働組合は何をやっていたのか。労働組合にも大きな責任がある。特に、原発の、電力関係の労働組合は、会社と一緒になって安全宣伝ばかりやるけれども、安全上の問題提起をほとんどしていないという点で責任がある。

それからもう一つ、科学技術庁の責任につきましても、先ほど述べたつもりですので責任があると思いますが、それだけじゃなくて、原子力安全委員会及び原子力委員会にも責任がある、今度の事故で反省してもらいたい点があるということを申します。

○辻元委員 どうもありがとうございました。

○北側委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

公述人各位におかれましては、貴重なご意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

これにて公聴会は散会いたします。

午後零時7分散会


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