[原子力産業新聞] 2001年7月5日 第2094号 <3面>

[英国] 長期エネ政策の見直し開始

年内に叩き台策定へ

英国のT.ブレア首相は6月25日、2050年頃までを視野に入れた長期的なエネルギー政策を大々的に検討することになったと発表した。

この作業における最大の目的は「信頼性の高い、多様化したエネルギーの安定供給を適正価格で維持しつつ地球温暖化問題に対処すること」で、同首相は直ちに内閣府の性能・技術革新局 (PIU) に対し、エネルギー政策の目標設定と現行の政策における確約事項をより長期の目標と確実に一致させる戦略を策定するよう指示。PIU は同プロジェクトの管理責任者として年内にも、エネルギー相が委員長を務める閣僚級の諮問委員会を通じて報告書を首相に提出することになっている。

PIU は常時50〜60名のスタッフを擁しており、政府関係機関はもちろん、民間やさまざまな団体から選抜された小チームで活動。省庁の枠を超えた長期的な戦略問題の解決方法や大きな政策を分析する際、首相官邸や内閣府、大蔵委員会と緊密に連携する。今回のプロジェクトでは通商産業省 (DTI) や環境・食品・地方問題省 (DEFRA) などとも協力して作業に当たる。同局による作業結果は重要視されており、これまで PIU が提出した報告書の多くは合意済みの政府政策として直ちに実行に移されている。なお、今回の結果報告には環境汚染王立委員会がまとめたエネルギー報告書に対する政府の地球温暖化問題に関する見解が盛り込まれる予定だ。

通産省の報道官によると、今回の見直し作業ではエネ効率の強化や電熱併給なども含め、英国の将来のエネルギーバランスにおける石炭、石油、ガス、再生可能エネの役割が再検討される。また、エネルギーの供給保障や環境問題に対処する上で原子力産業がどのような役割を果たすべきなのかも検討する必要がある。そして、英国だけの問題というよりは欧州全体、あるいは世界全体の次元で将来のエネ政策を捉えていかねばならないと指摘している。

英国の原子力持ち株会社であるブリティッシュ・エナジー (BE) 社のR.ジェフリー次期会長は今回のブレア首相の発表を歓迎。「現在、マグノックス炉の閉鎖計画が進行中で、AGR も10年ほどで廃炉の時期を迎えることを考えると、もしも英国が、京都議定書の目標達成に威力のある原子力オプションを維持するつもりなら、早急に決断する必要がある」と強調した。同氏はまた、国民の日常生活や経済活動のあらゆる側面でエネルギーは中心的な役割を果たしており、カリフォルニアでの電力危機や乱高下するガス価格、地球温暖化という問題に対処する上で原子力は確保していかねばならないと指摘。「我々が今日決断したことは、将来のエネルギー像と今後50年間の環境を決めてしまう」と訴えた。


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