[原子力産業新聞] 2001年8月2日 第2098号 <3面>

[欧州委員会] 電源別外部コストを試算

「原子力、火力より安価」

欧州委員会 (EC) は先月末、欧州各国におけるさまざまな電源の発電サイクルについて外部コストを試算・比較した結果、「原子力の外部コストは水力とほぼ同程度で石炭や石油などの化石燃料発電と比べるとはるかに安価だった」と発表した。

この調査プロジェクトは「Extern E」と呼ばれるもので、発電所の建設から燃料の採掘、精製、輸送、発電、廃棄物処理、送電にわたる燃料サイクル全体を通じて自然環境や人工の環境に及ぼされる損害、例えば大気汚染による人々の健康や農作物、森林、地球温暖化への影響、従事者達の職業病や事故、発電所による景観破壊や騒音被害など、通常の発電コストの中に含まれない影響を金銭的に換算・比較したとしている。12種類の電源に関する外部コストの評価にあたっては基礎的な部分から全体を組み立てていくボトム・アップ方式を一貫して採用しており、具体的には、周辺環境に放出される汚染物質やそれらの濃縮によって増加した量の計測から始め、それらが住民の健康や畑に与える影響を評価、最終的にコストとして換算。このような影響経路による方法論の採用は EC では初めての試みだと強調している。

調査結果のポイントとしては、風力と太陽光 (太陽電池) を除けば各国の平均値 (スペイン、スウェーデン、フィンランドは方法論上の理由により原子力について試算せず) で原子力の外部コストが最も安く、キロワット時あたり0.4ユーロ・セント以下となった。最も高かったのが石炭と石油で、コストはそれぞれ4.1〜7.3セント/キロワット時と4.4〜7セント/キロワット時。これらは実質的に4セント/キロワット時の発電コストにも匹敵すると EC は指摘している。ピートによる燃料サイクルでは外部コストは2.5〜4.5セント/キロワット時程度。ガス火力は化石燃料の中では安い方だが、平均値は1.3〜2.3セント/キロワット時となっている。太陽光に関してはドイツのデータのみ明らかで、0.6セント/キロワット時という結果。水力は原子力に次ぐ0.4〜0.5セント/キロワット時、風力は0.1〜0.2セント/キロワット時だった。

なお、原子力の場合は、放射性物質の放出および環境汚染全般、一般大衆への放射線影響、発電所事故のリスクなど燃料サイクル全体を考慮に入れたと説明している。

同プロジェクトは91年から欧州連合 (EU) 加盟各国の経済学者や生態学者、環境科学者、エネルギー技術者、大気化学者、健康問題やコンピュータ・ソフトの専門家などで構成される5つの中心的な調査チームが米国エネルギー省の協力を得て作業を開始。現在では15か国による50チームにまで拡大した。調査開始当初、データは一般に公開されておらず、近年になってようやくインターネット上 (http://externe.jrc.es) で入手できるようになった。EC では今後、同調査をフォロー・アップするため、原子力以外の発電所における大事故や死亡リスク、生態系の中の酸性化や栄養汚染といった要素も外部コストとして試算する計画だ。


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