[原子力産業新聞] 2001年9月27日 第2105号 <1面>

[原子力委員会] 市民参加懇談会がスタート

「対話・地域」軸に活動

原子力委員会の第1回目の市民参加懇談会企画メンバー会合が20日に開催され、同懇談会の果たすべき役割や今後の活動方針などを議論した。原子力政策への市民の参画や国民理解促進の方策を検討する中で、様々な対話や討論の実践や情報の受発信のあり方などを「市民の目線」でとらえ、行動に移すことがねらい。新体制の原子力委員会として、社会の様々な意見を十分に反映する取り組みの第一歩となる。

市民参加懇談会は木元教子原子力委員を主任として運営が行われている。木元委員は現在他の原子力委員会活動を休止中で、同懇談会に全力投球している格好だ。

懇談会の中核となる企画メンバーのグループは人文科学の学識者やジャーナリズムなどの分野を中心とした13名で構成。会の運営方針や計画の実施方法を決めていく。具体的な活動を進める中で別途、有識者や一般市民に加わってもらう考えだ。

この日の会議では、まず懇談会の果たすべき役割について意見が出された。吉岡斉九州大学院教授は市民懇談会と原子力政策との関わりを挙げ、「原子力政策円卓会議を通じて始まった市民の政策参加に対する評価を市民参加懇談会に期待する」との考えを示した。いわゆる原子力関係者以外で原子力政策への影響を与えたいと考える人々の意見を政策決定に反映させるための "有力な回路" を実現する場が市民参加懇談会だとの主張だ。そうでなければ、原子力政策の改革に向けての市民の協力は得られなくなると注意を促した。

こうした意見も踏まえ、委員は懇談会の活動内容について意見を交わした。

まずねらいとするのは「対話の場」を設けて一般市民との原子力政策を討論するという試みだ。"果してこれまで原子力をめぐって原子力関係者と一般市民との間で対話が成立していたか" との問いに対して、生活環境評論家の松田美夜子氏は、原子力関係者からの話は "冷たい形" でしか伝わってこなかったと指摘。同じく評論家の井上チイ子氏は自らの経験にそって、柏崎の住民と交流した中で、本当に意見を聞いてほしがっている一般住民の声を聞いてもらう機会がないことを認識したと述べている。

これまでの「『もんじゅ』やプルサーマルを巡る討論会は形式はフォーラムでも対話になっていなかった」として、市民懇談会では本当の対話の場を作ることを目指したいとの考えを示したのは、科学ジャーナリストの中村浩美氏だ。

このほか、「原子力関係者側には、伝える一方でなく一般市民から意見を引き出す姿勢が足りなかった」(吉川筆子慶応大教授) との指摘や、「市民懇談会の目指す地域対話も小規模な会合を数多く重ねることが重要だ」(小川順子 WIN-Japan 代表) などとする意見も出された。

一方、吉岡氏は、対話とは政策作りにおける「交渉」だと指摘。「交渉ならば意見を異にする相手も変わる可能性もある」として、交渉に参加するためのルール作りを考えていくことが必要だとの意見は一石を投じた。

さらに、この日の会合では今年度の重点活動について検討を加えた。懇談会の重視する地方との対話の場として、プルサーマル計画をめぐって住民投票が行われた刈羽村で最初の対話を実施する案について活発な意見が出されたが、「こうした行動を起こすことは是非必要だ」との認識で一致したものの、性急に具体的な結論を出すことは望ましくないとして、次回の会合で詳細に検討することを確認した。


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