[原子力産業新聞] 2001年10月4日 第2106号 <3面> |
[世界原子力協会] 将来のウラン需給で報告書供給信頼性のリスク指摘組織名をウラン協会から変更したばかりの世界原子力協会 (WNA) は9月10日、世界の原子燃料市場に関する最新の報告書を公開し、今後20年間のウラン市場の特徴として「2次供給源への依存が続く」との見解を表明した。 副題が「ウラン需給−2001〜2020年」とされている同報告書では、結論として2020年までは世界の原子燃料市場には適切な供給があると指摘している。しかし、期間中を通じてウランの一次生産量は原子炉における年間所要量を実質的に下回ると明言。不足分は多かれ少なかれロシアや米国の核解体から出るウランに関連した在庫など、主として2次的な供給源でカバーされるとの見方を示した。米露の軍用核物質の在庫量が削減されれば世界全体は明らかに恩恵を被る一方、原子力産業界にとっては原子炉用の所要量を単一の供給源、特に信頼性という点で不安の残る2次供給源に過度に依存するというリスクを背負わねばならないと指摘。報告書としては「もしも何らかの理由でこのようなソースからの供給量が減った場合、当然の成り行きとして供給崩壊が生じる」との懸念を示しており、明らかな供給不足時には在庫保有業者が取り引きを渋りがちになるという点を示唆した。仮に一次生産量が長期間にわたって制限されれば、この崩壊は特に急激であること、ウラン鉱では簡単に生産を停止したり再開することができないほか、新規のウラン鉱で本格的な生産を始めるまでには計画や認可のために何年もの時間が必要になることなども改めて強調している。 なお、同報告書は大半の部分を世界のウラン需給の詳細に分析に割いているが、ウランの転換、濃縮、燃料製造加工に関する市場状況についても別項を設けている。需給部分の概要は以下の通り。 需要サイドの分析 2020年までの世界の原子力発電設備容量については、原子力開発が実質的に復活する場合からゆっくりと下降線を辿る場合まで3種類のシナリオ (高、標準、低) で想定。これらをベースに期間内の原子炉所要量を試算した。 供給サイドの分析 WNA の見積もりでは世界全体でキログラムあたり40ドル以下で回収可能な資源量約120万トンを含め、80ドル以下で回収可能な資源量が合計340万トンUとなっている。年間消費量を6万〜8万トンと仮定すると、ウラン所要量は80ドル/kg 以下で回収可能な資源の一次生産量だけで完全に賄うことが可能。80ドル以下で回収できるウラン資源量は膨大であるため、もしもウラン・コストが原子力発電の全体的な経済性に与える影響が比較的小さいなら、潜在的な供給べースの総量は現在の100年分の消費を超過すると考えられる。近年はほとんど鉱床の探査が行われていないが、新たな探査に投資すれば追加の埋蔵量が確認できるだろう。未確定の埋蔵量を考慮に入れれば供給保障の度合いは一層高まるわけで、コスト高は覚悟の上で海水中のウランを回収すれば実質的に無制限にウランが得られることになる。 一次生産量 2000年には世界全体で前年実績から12%増の3万4734トンのウランが生産された。98、99年と連続して減産した後の増産となるが、総所要量の55%程度に過ぎない。ここでは (1) カナダ、豪州にある数少ない大型鉱床に生産が集中 (2) 大型鉱床の権益が集中 − などの傾向が明確に現れている。 鉱床の生産能力ごとに異なる利用率を適用すると、ウラン生産にも3つのシナリオが考えられる。最近計画中の新鉱床が生産を開始すると想定すると、3つのシナリオすべてで2005年の世界の生産量は増加。その後は横ばいになると予想されている。 二次供給源 2000年の原子炉総所要量のうち残りの45%を賄った2次供給源については、2020年までは継続してかなりの部分を賄っていくと考えられる。1945年以降、世界の天然ウラン生産量の累計は約200万トンと見積もられるが、これらは大まかに見て西側諸国対東欧、中国および NIS 諸国からの生産割合が3対2となっている。用途としては民間原子炉用に半分。残りは軍事プログラム用および在庫という配分。軍用に使われたウランの総量は約72万千で、在庫は14万トンにのぼると見られている。
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