[原子力産業新聞] 2001年10月18日 第2108号 <3面>

[フランス] 原子力庁、廃棄物処分研究で成果

長寿命核種核分裂生成物の分離・変換にメド

フランス原子力庁 (CEA) は4日、現在同庁が進めている長寿命放射性核種の最適な処分方法に関する研究で、画期的な技術開発の初期段階とも言える成果があったことを明らかにした。

CEA が公表したばかりの報告書によると、長寿命の廃棄物中に含まれるマイナー・アクチニドおよび核分裂生成物の分離と短寿命アイソトープヘの変換で科学的に実行可能になる見通しがついたと言う。これを商業的な実用段階まで発展させるにはまだ多くの作業が必要としながらも、第2段階の研究として技術的および経済的な実用性について2005年を目処に作業を続けていくとの考えを示した。

CEA は91年の放射性廃棄物管理研究法に従い、放射性廃棄物を (1) 分離/変換 (2) 処理後に長期貯蔵 (3) 深地層処分 − の3つの処分方法について研究中。2006年にはこれら3方法に関して得られた知見の全てを政府および議会に提出し、フランスにとって最適な処分方法を決定することになっている。

使用済み燃料から長寿命核種を分離/変換することは3つの方法の中で最も有望と考えられているが、この処分法は化学的な分離と中性子衝撃による短寿命核種への変換という2つの段階で構成される。これまでの研究で得られた主な成果として CEA では次のような知見を紹介した。

(1) 既存の再処理技術では、すでに使用済み燃料中の長寿命核種のうち95%を占めるウランと1%を占めるプルトニウムの合計96%を分離することが出来、これらは新燃料としてリサイクルが可能。最新の研究成果では残りの4%、すなわちアメリシウムやキュリウム、ネプツニウムなどのマイナー・アクチニドに加えて、ヨウ素129、テクネチウム99、セシウム135などの核分裂生成物を分離できる可能性が出てきた。

(2) ネプツニウムは商業規模の再処理で採用されているピューレックス法でも分離できるが、アメリシウムとキュリウムを分離するには新たな化学工程の開発が必要。マルクール研究所の研究員達は今年になって、分離レベルを99%以上にする新工程の研究で化学的に実行可能との確証を得ており、次の段階としては2005年を目標に商業規模における技術的な可能性を証明することになる。

(3) 核分裂生成物の分離についても、ピューレックス法の調整により95%のヨウ素および90%のテクネチウムを、また、特殊な分子分離工程によってセシウムを分離するなど化学的な実行可能性が実証できた。実用技術としての可能性はやはり2005年の実証を目指す。

(4) 核種の変換に関しては、高速炉や軽水炉、革新的なシステムを使う3つの方法を研究中。例えば、高温の原子炉を使った方法ならエネルギー生産と廃棄物消費の両方が可能だし、加速器を用いたハイブリッド・システムは廃棄物を焼却できるような特別設計が可能だ。

(5) 高速炉を利用する研究では、アメリシウムとテクネチウムの両方を変換する可能性の実証など意義深い成果が得られた。今後のこの分野の研究はマルクールにあるフェニックス高速炉の再起動計画に大きく依存することになる。

(6) ハイブリッド・システムでは、理論上の最大値近くまでアクチニドが変換できると考えられるほか、核分裂生成物の変換にも適している可能性がある。しかし、商業的に使えるようになるまでにはさらに数十年が必要だ。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.