[原子力産業新聞] 2001年10月26日 第2109号 <1面>

[ITER計画] 適地調査、那珂町がわずかにリード

六ヶ所村にも十分適性

国際熱核融合実験炉 (ITER) を我が国に誘致する場合のサイト選定をめぐって文部科学省の ITER サイト適地調査専門家会合 (座長・秋山守エネルギー総合工学研究所理事長) は18日、第3回会合を開き、調査報告書をとりまとめた。サイト候補としての正式に提案されていた茨城県那珂町、青森県六ヶ所村、北海道苫小牧市の3地点を比較評価した結果、那珂町に対して最も高い評価が与えられた。

同専門家会合は客観的で公正なサイト適性評価のため、(1) 土地条件 (2) 電力や給水など周辺ユーティリティ (3) 地元の理解と協力 (4) 災害リスク (5) 生活・業務環境など − といった調査・評価項目の設定や重み付けを行い、調査対象地の公募選定の後、提案自治体からのヒアリングと現地視察などを通じて、調査地点の評価を実施。今回、調査結果が報告書にまとめられたもの。

それによると、那珂町 (原研那珂研究所敷地内)、六ヶ所村 (むつ小川原地域)、苫小牧市 (苫小牧東部地域) の3地点の中で、那珂町が総合評価5点満点のうち4.3点で最も高い評価を得た。続いて六ヶ所村が4.1点、苫小牧市は3.5点だった。

那珂町は、土地の造成が終了するなど建設・運転に有利な土地条件を備えているほか、送電線などのインフラが整備されている点が評価された。六ヶ所村については、青森県が用地の無償提供や ITER から発生する低レベル放射性廃棄物処分などに対する支援を表明していることに高い評価が与えられている。両地点とも、地盤条件については第3紀の岩盤に岩着させるという安定した方法での施設の支持が可能であるとしている。

一方、苫小牧市苫牧東地区は用地環境や地盤のほか、周辺インフラなどの点で他の2地点に総合評価で水を開けられた形になった。

総合評価で那珂町と六ヶ所村の間には0.2点の開きが出たが、報告書は双方に対して、ITER を誘致する場合には「十分な適性を有していると考えられる」との判断を加えていて、実質的には横並びとも言える。若干の差をつけられた青森県は木村知事が今後引き続き誘致の実現に向けた努力を行うとの強い意欲を示すなど、今後は総合科学技術会議での議論の行方とともに政治的な動きに注目が集まる。


原子力委員会は19日、臨時会議を開き、前日まとまった ITER サイト適地調査専門家会合の報告を聞き、審議した。藤家洋一委員長はこの日の委員会での審議を取りまとめる形で、「国内への誘致に十分な適地候補が存在するとの報告を受けた」との認識を示すとともに「検討結果は客観的で適正なものと認識する」とした。また、誘致の意義に関して「主体的に参加するというだけでなく、設置国となることは、核融合分野で日本がグローバルスタンダードを作っていくという意味からも重要」などとした。また遠藤哲也委員長代理は、国際協議などが始まるこれからが正念場になるとの認識を示した。

原子力委員会では、11月初旬から始まる参加各極による建設協議の状況や資金面等の国内における検討の推移をみながら、誘致の判断を明確にする方針だ。参加極のひとつである EU からの誘致提案が年明けに行われる情勢であることから、判断の時期は年内がひとつの目処になりそう。


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