[原子力産業新聞] 2001年11月1日 第2110号 <1面> |
[原子力防災] 泊発電所で総合防災訓練初のオフサイトセンター使用オフサイトセンターを利用した初の原子力総合防災訓練が10月27日、北海道電力・泊原子力発電所1号機を対象に実施された。省庁再編後初の防災訓練ともなった同訓練には、小泉首相、平沼経済産業大臣はじめ、約56機関・2700人が参加。現地には他電力および自治体関係者、関係機関などから多数の見学者がつめかけ、本番さながらの緊張した雰囲気の中、オフサイトセンターの機能確認をはじめとする各種訓練が、関係機関、住民などの協力の下に順調に実施された。なお今回の訓練成果は、第3者機関による客観的評価を受けた後、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会に報告されるほか、他地域に建設されるオフサイトセンターや今後の防災計画などにいかされていくということだ。 今回の訓練は、「北海道電力・泊発電所1号機 (PWR、57万9000kW) で運転中に一次冷却系配管に漏洩が発生。原子炉を手動停止したものの、漏洩量が増大し冷却材喪失事故になり、非常用炉心冷却設備 (ECCS) が作動。その後 ECCS の故障などにより、炉心が損傷し、さらに格納容器から放射性物質がか放出される」との想定事故に従い、各種訓練が実施された。 想定事故を受け、北海道電力では初動対応が行われるとともに、坂本裕郷副社長がオフサイトセンター入り。また経済産業省では北電からの事故報告を受け、原子力災害警戒本部 (本部長・平沼赳夫大臣) を設置するとともに、古屋圭司副大臣をオフサイトセンターに現地対策本部長として派遣した。 訓練では、オフサイトセンターの機能確認がひとつのポイント。想定事故が「原災法第15条に該当する事象が発生」のフェーズに入ったことから、午前11時に東京・永田町の首相官邸に政府原子力災害対策本部 (本部長・小泉首相) が設置されるとともに、小泉首相が原子力緊急事態宣言を発出。引き続き官邸、オフサイトセンター、北海道電力本店、北海道庁、泊村役場などをテレビ会議システムで結び、事故の概要報告や情報交換などが行われた。 午後に入ると、「原子炉格納容器スプレイ系故障により、原子炉格納容器内の圧力が上昇。放射性物質の環境への放出の可能性が出てきた」として、原子力災害対策本部および現地合同対策協議会は、発電所を中心に半径1キロメートルおよび風下2キロメートル地区内住民の避難・屋内退避を決定。該当する地区の住民約100名が、泊公民館および共和町の共和中学校への避難を行った。 その後想定事故は、「放射性物質の外部への放出が起きた後、再循環切替えの復旧に成功。放射性物質の放出停止」という収束のフェーズに入り、原子力災害対策本部などの廃止が決定され、15時30分、訓練終了が宣言された。 原子力総合防災訓練は、昨年6月に施行された原災法に基づき、年度毎に国、地方自治体、電力、関係組織などが連携して行われる総合的な訓練で、昨年10月に中国電力・島根原子力発電所を対象に実施されたのを皮切りに、今回で2回目となる。なお、今回がオフサイトセンターを使用した初めての訓練となったわけだが、終了後の会見で古屋副大臣は、「IT 機器の揃ったセンターに情報が一元化しているのは有意義な事。建設した効果はあると思う」と述べ、オフサイトセンターの意義を強調した。 北海道電力の南山英雄社長は、訓練後に以下のようなコメントを発表した。 本日の防災訓練は、小泉内閣総理大臣、堀北海道知事をはじめ国、道、地方自治体、防災関係機関、医療機関などが緊密に連携をとった、大規模かつ実践的な訓練となり、大変意義深くかつ充実した内容であったと感じている。また、地域の皆さまにもご多忙の中、多数のご参加を頂き厚くお礼申し上げる。 当社といたしては、原子力事業者として、日頃の訓練の成果を発揮すべく、この訓練に緊張感を持って取り組んだ。 今後は、今回の訓練の成果・経験を活かし、より一層、実行性のある防災対策の充実に努めてまいる所存だ。 |