[JAIF] 原子力関連ニュース -2001年4月18日

世界の原子力発電開発の動向
−2000年12月31日現在−

日本原子力産業会議は毎年、世界の原子力発電所の現状を「世界の原子力発電開発の動向」としてとりまとめている。今回の調査は、当会議が世界31カ国・地域の70の電力会社等から得たアンケートの回答などに基づき、2000年末現在のデータを集計したものである。

−衰え見せぬアジアの原子力開発−


4カ国で8基が営業運転開始

2000年末現在、世界で運転中の原子力発電所は430基、合計出力は3億6334万3000kW (前回:425基・3億5942万5000kW)、建設中は43基・4143万6000kW (同49基・4356万3000kW)、計画中は41基・3133万8000kW (同40基・2741万3000kW) となった。

2000年に新たに営業運転を開始した原子力発電所は、インドのカイガ1、2号機 (加圧重水炉:PHWR、各22万kW) とラジャスタン3、4号機 (同)、フランスのショーB1、2号機 (加圧水型軽水炉:PWR、各151万6000kW)、スロバキアのモホフチェ2号機 (ロシア型PWR=VVER、44万kW)、パキスタンのチャシュマ (PWR、32万5000kW) の8基。過去5年間についてみると、営業運転開始基数は減少傾向を示していたが、2000年は久しぶりに上昇に転じた。

アジアで5基が着工、6基が計画入り

今回の調査でも、アジア地域の原子力発電開発が順調に進んでいる状況が改めて確認された。新規に運転を開始した8基のうち5基をアジアが占めたことに加え、着工と計画入りもアジア地域がほぼ独占した形になった。

2000年に新たに着工した5基は、朝鮮半島エネルギー開発機構 (KEDO) が北朝鮮で建設を進めている韓国標準型炉2基 (PWR、各100万kW)、インドのタラプール3、4号機 (PHWR、各50万kW)、中国の田湾2号機 (PWR、106万kW) と、すべてアジア地域。中国の田湾2号機は、前年の同1号機に続く着工で、これにより第9次5カ年計画 (96年〜2000年) で予定されていた4サイト8基すべてが着手されたことになる。

また、アジアで新たに計画入りしたのは、韓国の新古里1、2号機 (PWR、各100万kW) と新月城1、2号機 (同)、日本の島根3号機 (ABWR、137万3000kW) と泊3号機 (PWR、91万2000kW) の6基。アジア以外の新規計画としては、2000年5月に原子力発電開発戦略を策定したロシアが、従来の原子力開発計画を大幅に改訂し、当初計画にあがっていた VVER-640 型炉 (PWR、64万kW) 4基と FBR 1基の代わりに100万kW 級の6基 (PWR5基、LWGR1基) を計画に組み入れた。

英国、ウクライナなどで4基が閉鎖

今回の調査で閉鎖を確認したのは、ウクライナのチェルノブイリ3号機 (軽水冷却黒鉛減速炉:LWGR、100万kW) と英国のヒンクリーポイントA1、2号機 (GCR、各32万1000kW)  、ドイツのミュルハイム・ケールリッヒ (PWR、130万2000kW) の4基。1986年に起きたチェルノブイリ4号機の事故後、運転を続けていた同3号機が閉鎖されたことにより、同発電所にあった原子炉4基すべてが閉鎖されたことになる。英国のヒンクリーポイントA1、2号機は、英国原子燃料会社 (BNFL) が2000年5月に打ち出したガス炉閉鎖計画に基づき閉鎖された。また、訴訟により10年以上運転を休止していたドイツのミュルハイム・ケールリッヒが正式に閉鎖された。2000年6月に連邦政府と大手電力が運転中の原子力発電所に発電電力量の制限を設けることで合意した際、休止中の同機についても電力量を割り当てることとひきかえに、閉鎖することになったもの。

1基が送電開始、1基が初臨界

2000年に送電を開始したのは、チェコのテメリン1号機 (PWR、97万2000kW)。ロシア型 PWR である VVER-1000 型炉を採用する同機は、西側と同レベルの安全性を備えていることが確認されていたが、完成が近づくにつれ周辺諸国からの反対が強まった。このため、同発電所は10月に初臨界を達成、12月に送電網に接続されたが、2001年5月に予定されている営業運転はチェコ、オーストリア、欧州連合 (EU) の3者による補足的な環境影響調査の結果を待って開始されることになった。

一方、ブラジルにとって2基目の原子力発電所となるアングラ2号機 (PWR、130万9000kW) は7月に初臨界を達成した。同機が営業運転を開始すると、95年に運転を開始したメキシコのラグナベルデ2号機に続く、中南米で6基目の原子力発電所となる。同サイトには、ツインユニットである3号機の計画も控えているが、資金問題を抱えているため、完成後の2号機の実績を見極めた上で着工となる見通し。

ロシア初の、ロストフ1号機が営業運転間近に

この他、完成を間近に控えているのは、ロシアのロストフ1号機 (PWR、100万kW)。同機は2000年中に機器類の設置が終了し、2001年1月には燃料を装荷、翌2月には初臨界を達成後、送電も開始している。同機の営業運転は10月ごろの予定で、順調に行くと、ソ連崩壊後、ロシアにとって初の新規原子力発電所となる。ロシアでは資金難のため、同機のほか、カリーニン3号機とクルスク5号機の3基の建設を優先してきた。いずれも数年のうちに完成する見通し。

欧米で新規発電所建設の兆し

電力市場の自由化が加速する欧米で、競争力の強化をめざした吸収合併が相次ぎ、米エクセロン・ジェネレーション社や独 RWE パワー社、E.ON エネルギー社を代表とする巨大企業が誕生したのも昨年の大きな特徴。

こうした中、フィンランドで2000年11月に新規原子力発電所の建設が政府に申請された。申し入れを行った TVO 社は、原子力発電の供給安定性や経済性を評価しており、自由化された北欧市場で最適な電源と位置付けている。

米国でも原子力発電所の運転実績が着実に向上しており、2000年の平均設備利用率も89.6%を記録し過去最高を更新した。また、平均生産コストも他電源を押さえトップに踊り出るなど、各種指標にも大きな改善が見られるため、原子力発電に対する評価が高まってきている。既存の発電所の運転認可を60年に延長しようという動きも、そうした中で出てきており、これまでに5基が20年延長を認められている。

以 上

資料2000年の主な動き
世界の原子力発電開発の現状
地域別 世界の原子力発電開発の現状
米国の電気事業再編動向

本件問合せ先:日本原子力産業会議 情報調査本部
内外動向グループ 花光 (ハナミツ)、窪田
電話 03-3508-2411 (代表)、03-3508-7930 (直通) FAX 03-3508-2094

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