[JAIF] プレスリリース -2002年4月10日 |
世界の原子力発電開発の動向
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日本原子力産業会議は毎年、世界の原子力発電所の現状を「世界の原子力発電開発の動向」としてとりまとめている。今回の調査は、当会議が世界35カ国・地域の79の電力会社等から得たアンケートの回答などに基づき、2001年末現在のデータを集計したものである。 |
2001年末現在、世界で運転中の原子力発電所は432基、合計出力は3億6,628万6,000kW (前回:430基・3億6,334万3,000kW)、建設中は43基・4,127万1,000kW (同43基・4,143万6,000kW)、計画中は35基・2,660万4,000kW (同41基・3,133万8,000kW) となった。運転中の合計出力は、96年の3億6,569万4,000kW を上回り、過去最高となった。なお、運転中の合計基数は、過去最高である96年の434基を2基下回ったものの、95年と並ぶ過去第2番目。
2カ国で2基が営業運転開始2001年に新たに営業運転を開始した原子力発電所は、ブラジルのアングラ2号機 (PWR、130万9,000kW) とロシアのボルゴドンスク1号機 (VVER=ロシア型PWR、100万kW) の2基となり、前年の8基を大きく下回った。
アングラ2号機は、ドイツ製の PWR で、同国にとっては2基目、中南米では95年に運転を開始したメキシコのラグナベルデ2号機に続き6基目の原子力発電所。同機の運転開始は、水力発電の不調から深刻なエネルギー危機に見舞われているブラジルの電力供給に大きく寄与している。アングラ2号機の運転開始により2001年の総発電電力量に占める原子力の割合は、前年 (1.45%) より2.6ポイント増の4.1%となった。
ロシアのボルゴドンスク1号機は、ソ連崩壊後、ロシアとして初の新規サイトでの原子力発電所となった。同機はこれまでロストフの名称で呼ばれていたが、試運転段階で発電所周辺の住民の要望により町名をとってボルゴドンスクに変更された。電気だけでなく蒸気も供給する同機は、慢性的な電力不足に悩むロシア南部地域への電力供給源として期待されている。最優先に建設を進めてきた同機が完成したことから、ロシア政府は今後、建設中の2基に加えて、ボルゴドンスク2号機の建設を再開するとともにバラコボ5号機 (PWR、100万kW) を着工し、これらの早期完成をめざす方針。
インドで4基が着工間近、韓国・日本で2基ずつ計画入り今回の調査でも、アジア地域の原子力発電開発が順調に進んでいる状況が改めて確認された。前年4基が相次いで運転入りしたインドは、クダンクラム1、2号機 (VVER=ロシア型PWR、各100万kW) とカイガ3、4号機 (PHWR、各22万kW) の4基が建設開始を目前に控えている。このうち、クダンクラム発電所はロシア型 PWR を導入するもので、同国としては初の100万kW 級原子力発電所。
また、新たに計画入りしたのは、韓国の新古里3、4号機 (APWR、各140万kW) と日本の上関1、2号機 (ABWR、各137万3,000kW) の4基。「APR1400」と呼ばれる新古里3、4号機は、100万kW の韓国標準型炉 (KSNP) にさらに改良を加えて開発した次世代炉。中国電力の上関は、日本にとって99年8月に計画入りした電源開発の大間以来2年ぶりの新規サイト。両機は、日本に建設される7、8基目の ABWR となる。
日本で1基が送電開始、中国で1基が初臨界、1基が燃料装荷2001年に送電を開始したのは、日本の女川3号機 (BWR、82万5,000kW)。同機は2002年1月に営業運転を開始しており (本集計では「建設中」に分類)、国内では97年に運転を開始した九州電力の玄海4号機に続く53基目、東北電力にとっては3基目となる。
臨界を達成したのは、中国の秦山 (シンザン) II期1号機 (PWR、64万2,000kW)。同機は、第9次5カ年計画 (1996年〜2000年) のもとで建設中の4サイト8基の先頭をきって初臨界に達した。また、フランス製 PWR を採用した嶺澳 (リンアオ) 1号機 (PWR、98万5,000kW) も燃料装荷を行った。両機とも2002年に入り、すでに送電を開始しており、予定では今年6月ごろに営業運転を開始する見通し。建設中の他の6基も、2003年〜2005年の完成をめざしている。
欧米で新規建設の動きが浮上電力自由化が進む欧米では、稼働中の発電所を有効に活用し、少しでも多く発電しようという動きが顕著になってきた。欧米では新規に運転を開始した原子力発電所が1基もなかったにもかかわらず、2001年だけで設備容量が約60万kW 増加した。これは、米国を筆頭に定格出力の増強が行われたため。さらに、米国では既存原子力発電所の一層の有効活用をねらった運転期間の延長 (40年→60年) の動きが加速しており、昨年のアーカンソー・ニュークリア・ワン1号機を含めてこれまでに8基が運転期間の延長を NRC から認められている。
その米国では、官民協力して2010年までに新規の原子力発電所の運転を開始することをめざした「Nuclear Power 2010」プロジェクトがスタートした。2001年5月にブッシュ政権が公表した「国家エネルギー政策」に沿ったもので、まず原子力発電所を建設するサイト許可の取得を進める。また、英国でも、内閣府がまとめた報告書をタタキ台に、将来のエネルギー供給を見据えた「エネルギー白書」を2002年中にとりまとめることになった。原子力発電の扱いが最大の焦点になるとみられている。フィンランドでは新規原子力発電所の建設について具体的な審議が進められている。すでに政府は2002年1月、TVO 社の申請を受けて同国5基目となる新規建設を原則決定。議会が2002年5月にも最終決定を下すとみられている。
営業運転開始 | ブラジル | アングラ2号機 (PWR、130万9,000kW) | 2月1日 |
ロシア | ボルゴドンスク1号機 (PWR、100万kW) | 12月25日 | |
送電開始 | 日本 | 女川3号機 (BWR、82万5,000kW) | 5月30日 |
初臨界 | 中国 | 秦山II期1号機 (PWR、64万2,000kW) | 12月28日 |
燃料装荷 | 中国 | 嶺澳1号機 (PWR、98万5,000kW) | 12月8日 |
着工 | ロシア | バラコボ5号機 (PWR、100万kW) | − |
発注 | インド | クダンクラム1、2号機 (PWR、各100万kW) | 11月 |
計画入り | 韓国 | 新古里3、4号機 (APWR、各140万kW) | 5月16日 |
日本 | 上関1、2号機 (ABWR、各137万3,000kW) | 5月16日 |
運転中 | 建設中 | 計画中 | 合計 | ||||||
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国・地域 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | 出力 | 基数 | |
1 | 米国 | 10,174.2 | 103 | 10,174.2 | 103 | ||||
2 | フランス | 6,292.0 | 57 | 303.2 | 2 | 6,595.2 | 59 | ||
3 | 日本 | 4,508.2 | 52 | 494.3 | 5 | 723.9 | 6 | 5,726.4 | 63 |
4 | ロシア | 2,255.6 | 30 | 400.0 | 4 | 2,655.6 | 34 | ||
5 | ドイツ | 2,235.5 | 19 | 2,235.5 | 19 | ||||
6 | 韓国 | 1,371.6 | 16 | 400.0 | 4 | 680.0 | 6 | 2,451.6 | 26 |
7 | 英国 | 1,353.1 | 33 | 1,353.1 | 33 | ||||
8 | ウクライナ | 1,183.6 | 13 | 500.0 | 5 | 1,683.6 | 18 | ||
9 | カナダ | 1,061.5 | 14 | 1,061.5 | 14 | ||||
10 | スウェーデン | 982.6 | 11 | 982.6 | 11 | ||||
11 | スペイン | 781.3 | 9 | 781.3 | 9 | ||||
12 | ベルギー | 599.5 | 7 | 599.5 | 7 | ||||
13 | 台湾 | 514.4 | 6 | 270.0 | 2 | 784.4 | 8 | ||
14 | ブルガリア | 376.0 | 6 | 376.0 | 6 | ||||
15 | スイス | 335.2 | 5 | 335.2 | 5 | ||||
16 | リトアニア | 300.0 | 2 | 300.0 | 2 | ||||
17 | フィンランド | 276.0 | 4 | 276.0 | 4 | ||||
18 | インド | 272.0 | 14 | 108.0 | 2 | 440.0 | 10 | 820.0 | 26 |
19 | スロバキア | 264.0 | 6 | 88.0 | 2 | 352.0 | 8 | ||
20 | 中国 | 226.8 | 3 | 683.0 | 8 | 909.8 | 11 | ||
21 | ブラジル | 196.6 | 2 | 130.9 | 1 | 327.5 | 3 | ||
22 | 南アフリカ | 193.0 | 2 | 193.0 | 2 | ||||
23 | ハンガリー | 186.6 | 4 | 186.6 | 4 | ||||
24 | チェコ | 176.0 | 4 | 196.2 | 2 | 372.2 | 6 | ||
25 | メキシコ | 136.4 | 2 | 136.4 | 2 | ||||
26 | アルゼンチン | 100.5 | 2 | 74.5 | 1 | 175.0 | 3 | ||
27 | スロベニア | 70.7 | 1 | 70.7 | 1 | ||||
28 | ルーマニア | 70.6 | 1 | 268.6 | 4 | 339.2 | 5 | ||
29 | オランダ | 48.1 | 1 | 48.1 | 1 | ||||
30 | パキスタン | 46.2 | 2 | 46.2 | 2 | ||||
31 | アルメニア | 40.8 | 1 | 40.8 | 1 | ||||
32 | イラン | 229.3 | 2 | 152.0 | 4 | 381.3 | 6 | ||
33 | 北朝鮮 | 200.0 | 2 | 200.0 | 2 | ||||
34 | カザフスタン | 192.0 | 3 | 192.0 | 3 | ||||
35 | エジプト | 187.2 | 2 | 187.2 | 2 | ||||
36 | イスラエル | 66.4 | 1 | 66.4 | 1 | ||||
合 計 ( )内は前年値 | 36,628.6 (36,334.3) | 432 (430) | 4,127.1 (4,143.6) | 43 (43) | 2,660.4 (3,133.8) | 35 (41) | 43,416.1 (43,611.7) | 510 (514) |
本件問合せ先: | (社)日本原子力産業会議 情報調査本部・内外動向グループ [花光 (はなみつ)、窪田] |
電話: 03-5777-0754 (直通) | |
FAX: 03-5777-0758 |