[JAIF]プレスリリース -2002年6月25日 |
日本原子力産業会議は6月25日、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の原子力二法人統合についての提言を、原子力二法人統合準備会議座長で文部科学副大臣の青山丘氏に提出致しました。
二法人統合についての提言2002年6月25日
(社) 日本原子力産業会議 21世紀を迎えた今日、わが国の諸政策は、経済・社会・環境および国際社会との調和をこれまで以上に重視していくことが必要になってきており、原子力開発政策にも大きな変化が迫られている。既設立地点の課題、原子力施設の新規立地、プルトニウムのリサイクル利用、放射性廃棄物処理処分等の原子力開発の基本計画は、これら各方面との調整なくして将来の明確な具体的ビジョンを描くことが難しい局面を迎えている。研究開発活動等についても、情勢の変化に応じて機動的に対処すべく、課題解決のための多様な選択肢を用意し、適時適切な評価により計画に柔軟性をもって取り組むべき情勢にある。また、地球環境問題への対応やエネルギーセキュリティ確保上の必要性と自由化市場における経済性を含む競争力の観点とのバランスも十分考慮していかねばならないということも視野に入れていく必要がある。 このような情勢を背景として、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の二法人がそれぞれ廃止の後、独立行政法人として統合されつつある。この二法人統合は、現在の様々な情勢を踏まえた上での、将来へ向けたわが国原子力開発推進のための効果ある布石となり、そのための転機とならねばならない。したがって、新法人の役割の検討にあたっては、現状で二法人が所掌している研究開発分野を対象に整理・見直しを行うという視点ではなく、わが国全体の研究開発の効率的、合理的な分担を構想した上で、新法人の責任分野の位置付けを明確化することがまず第一に大切なことである。 日本原子力産業会議は、国民的立場から原子力平和利用を推進する民間・非政府組織として、わが国の原子力政策・原子力技術ならびに原子力産業の方向性に大きく影響する「原子力の研究・技術開発」のあり方に、研究開発効率と資金効率の見地からも重大な関心を抱いている。本質的に長期・多額かつ計画的遂行を要する「炉型、フロントエンド、バックエンド」などの技術、ならびに資源リサイクルを含む総合的な原子力システム技術、さらに国民生活に密着した放射線利用技術、将来の夢を担う加速器利用技術や核融合技術などへの研究・技術開発投資は、政府と民間の明確な責任分担ならびに緊密な連携のもとに実施されることが必要である。統合された新法人は、その要であることから、当会議は、その経営に効果的に協力していきたいと考える。また、既設の原子力プラントの安全・安定運用はもちろん、その後のリプレースを担うなど研究者・技術者の確保・育成は、原子力開発の基盤であり、当会議は、これを重要な事業展開の目標の一つと位置づけ、新法人がその面においても果たすべき役割に強く期待するとともに、支援していきたい。 このような観点から当会議は、このたび原子力研究開発を総合的に実施する最大の中核機関となる新法人の役割・機能の基本的事項について、提言をとりまとめた。 <統合による相乗効果への期待> このたびの統合が目指すものは、単なる二法人の合併に留まらず、相乗効果をもたらすような組織・人事制度・運営形態の構築を行うことである。ここで相乗効果とは、日本原子力研究所が所掌してきた「基礎・基盤的な研究開発」から、核燃料サイクル開発機構が主として担ってきた「プロジェクト型研究開発」までを、両法人の特性を活かしつつ総合的かつ効率的に実施することである。統合により、重複部等の排除といった合理化はもとより、両者の専門能力を相乗的に利用してさらに高度な目標が達成され、それが、原子力界全体に波及する効果が期待される。 わが国は原子力研究開発利用の当初より数年ごとに「原子力の研究、開発および利用に関する長期計画」(以下「原子力長計」という。)を策定し、基本的枠組みを定めてきたところであり、今後とも長期展望に立ってこれを推進すべきことに変わりはない。したがって、主務大臣が定める「中期目標」は原子力長計に沿って定められるものと考えられる。ただし、目まぐるしく展開する情勢変化にも機動的に対応できるよう、常に内外の諸情勢を的確にとらえ、柔軟に研究・技術開発活動を計画、実施することが肝要である。 <経営とその責任のあり方> 新法人の活動の目的は、原子力長計によって示された原子力の研究・開発における国民の負託に応えることである。それを実現するため、公正かつ厳密な管理を行うとともに積極的な経営が肝要である。つまり新法人の経営者は長期的開発目標の実現に向けて新法人の資源(資金・設備ならびに人材)を適切に配分して最大の効果を実現せしめる責任を全うしなくてはならない。 一方、新法人の活動範囲は広範であることから、個別の研究、およびプロジェクトごとに目標を設け、ブレークダウンした上で具体的な計画が立てられなくてはならない。その実現にあたっては、民間企業のカンパニー制などを参考にして、これらの計画を執行する個別の組織(研究所等)においてできる限り意思決定が行えるような組織・体制を検討すべきである。これにより研究機関としての総合的な活動目標を見失うことなく、一方でスピードのある、小回りのきく事業運営を目指すべきである。 <経営への積極的支援> 新法人の経営責任は役員にあるが、その経営にあたって内外情勢を的確に反映できるように外部有識者が積極的に協力していくためのメカニズム(例えば経営評議会)を設けることを検討すべきである。これは、新法人の活動に対する客観的な情報を提供し、経営者による方針決定や執行を助けるためのものである。具体的には、法人の経営に関する重要事項(主要事項の官民協力の具体化などを含め)を審議・協力するとともに、運営について意見を述べることも出来る組織で、全て法人外の委員から構成されることが望ましい。このメカニズムが有効に機能していくためには、専門の事務局を持つことが必要と考えられる。 <活動の成果について> 新法人の活動の成果は、新法人内に留まることなく、円滑に応用あるいは産業化されなければならない。特定の成果が得られた段階で、その成果の産業化のために、施設、職員とも別の組織として独立または移転させるなど柔軟な対応が可能なようにすべきである。また、研究から応用への移行段階を円滑に進めるため、職員の兼職・兼務が容易になるよう配慮すべきである。 民間は、経済のグローバル化、電力の自由化などによって、世界で最も安価な技術や資材を安定的な確保を前提に採用することを求められているが、新法人の活動も、独創性が強く国際的にも優れた成果を目標とするものと、海外からの技術導入または国際分業を前提とするものあるいはその組み合わせなど多様な活動が行われるべきである。 研究開発の推進にあたっては、民間の技術能力の向上、あるいは民間能力の活用を考慮して、民間との協力を積極的に実施し、成果の共有を図るべきである。 一方、シーズの発掘も新法人の重大な任務と考えるべきで、研究者の発意による自由な研究活動を一定の範囲で保証することが肝要である。また、研究・技術開発を通じて育成される人材の広く社会的な活用、ならびに原子力人材育成への活動をも期待される。 <新法人の所管について> 原子力の研究開発は、本来多面的かつ広い視野から実施されるべき領域であり、特に新法人については膨大、多岐に亘る分野を取り扱うため、関係する各省の連携協力が実を挙げるよう格別の配慮がなされるべきである。 一方、独立行政法人化することのねらいは、新法人の弾力的な財務運営やより自律的な組織・人事管理を容易にすることである。この本来の目的が達成されるよう、関係省には適正かつ柔軟な対応が求められる。 以 上
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