[JAIF] プレスリリース−西澤 原産会長談話 |
本日(10月2日)、当会議西澤会長が記者会見を行い、以下の談話を発表致しました。
原子力発電所の点検・補修作業における記録の不適切な取り扱いなどで指摘される今後の課題 ― 西澤 原産会長談話2002年10月2日
(社) 日本原子力産業会議 会長 西澤 潤一 原子力発電が国民生活に必要なエネルギーの安定供給に不可欠であることに甘えて悪しき特権階級になって、未だ充分に取り決めを守らなかったために国民の皆様にご心配をおかけしたことをお詫びしなければなりません。 東京電力の原子力発電所の点検・補修作業における記録の不適切な取り扱いが発表されてから、中部電力浜岡原子力発電所1号機、3号機及び東北電力女川原子力発電所1号機において過去の定期検査等で再循環系配管にひびが確認されていたことなどが発表された。 くり返して、従来からの取り決めを守っていなかったことについて、再思三省してみなければならないところである。まず喫緊の課題として当事者である電力会社は当然のこと、政府や専門家の手によって徹底的な調査が行われ、このような事態に至った原因や背景を明らかにして、再発防止はもちろん、むしろこの事態を教訓として、官民を問わず原子力研究開発・利用に関わる経営あるいは組織体制の抜本的な改善へと結び付けなければなりません。今後の課題は現在伝えられていることなどによって判断するならば、次の二点に分けて考えられるべきであろう。違反の根本を断つ処理を目指さなければなりません。 第一点は、いわゆる原子力関係者の社会的責任の問題である。東京電力の調査結果で明らかになった「事実と異なる報告」や「検査報告書の書き換え」といった事態をみると、下記の第二点の要因がかかわっていると考えたとしても、潜在的に危険性を有する原子力だからこそ、その安全性に対し社会の共感を得なければならないという自覚に欠けているといわざるを得ない。推察するに事態にかかわった技術者は、これが直ちに安全を脅かすものではないという専門家としての自信のうえに、それが意味する社会的不安に思い至らなかったといえるであろう。指摘されているとおり、原子力技術者がいわゆる原子力ムラを作り、未だ自分たちだけの価値基準や行動原理をもって進めてきたとすれば、猛省すべきところである。専門的判断を社会に知らしめ共感を得るための努力は、専門分野における能力の向上への努力と同等のものと考えなくてはならない。関係の経営者、規制当局さらに学識者も原子力技術者がこのような誤謬に陥る過程を未だ見過ごしてきた責任があり、これらの関係者は適切な人材を配するなど、社会的責任を全うしうるような体制の再構築をはかる努力をすべきである。 第二点は、原子力技術の進展や設備の変化に応じた安全規制の方法や基準をいかに先見的かつタイムリーに作っていくか、あるいは適切な基準が制定されるまでの間どのように現実的な対応をするかの問題である。原子力施設はその潜在的危険性及び規格基準の充分な吟味が間に合わないため大きな安全裕度をとって設計されている。東京電力のケースのいくつかおよび中部電力と東北電力のひび割れのケースは、発電所の運転者が安全裕度の範囲内と判断したものであった。しかし、経年変化に伴なう比較的軽微と考えられる機器やコンポーネントの損傷の許容限度を規定した維持基準が存在していなかったことが、今回の混乱要因の根本であったことは否めない。この基準制定のための検討がいまだ結論に至っていないのは、いささか遅きに失しており、あらゆる部品に至る使用状況に応じた基準の制定を急ぐべきで、現在、審議中の原子力関係研究機関の研究項目にも優先して列記されるべきある。また、事業者は自信あるデータを公開の場に積極的に提供すべきである。本来、設置後、年を経た機器や施設を、その間の変化を考慮にいれて、安全を大前提としつつ効率的に利用するのは最も重要な技術のひとつである。原子力発電施設の運転が重ねられつつ今日、その経験や研究開発の成果を活用して、現実に即した安全規制の整備が強く望まれるところである。それまでの間、各項目の専門家の経験を踏まえた責任者をおき、その責任者の責任の下に、不充分な基準に替わる責任者の判断基準を公表した上で、経験を生かした安全運転が実施できるように臨機の対応を認めるなどの現実的処置が出来るようにするなどの対応を考える必要がある。もしそれが出来ないようであれば、もはや原子力先進国たる資格はない。 以 上
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