日本国政府への提言
世界の核廃絶に向けて −北朝鮮に核兵器を断念させるためには
2002年12月19日
(社) 日本原子力産業会議 核不拡散・核軍縮問題懇談会
米国政府は先ごろ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がウラン濃縮装置を保有し、核開発計画が継続していることを認めたと発表した。現行の日朝関係には拉致という大きな問題があるが、北朝鮮による核開発の問題は、わが国及びアジアの安全保障にとって看過できないだけでなく、現行の核不拡散体制を脅かしかねない重大な問題である。われわれは直面する事態について、平成14年12月4日の懇談会において論議し、
- 北朝鮮による核開発継続の動きは、核活動に関する1994年の「米朝枠組み合意」や国際原子力機関(IAEA)保障措置協定に違反し、核不拡散条約の精神に背く。
- わが国は「米朝枠組み合意」および朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に深く関与してきた。
- 米朝政府によるKEDO反故のきざしは北朝鮮に核開発の大義名分を与え、極東地域ならびに世界の安定に影響を及ぼす。
- 北朝鮮の核開発及びミサイル開発はわが国の安全保障に深刻な影響を与えるのみならず、ミサイル技術の輸出は南アジア、中東にまで及ぶ。
- 米国政府が関係諸国の意向を忖度することなく、北朝鮮に対し一方的に強硬姿勢を貫くようなことがあれば、双方の対外政策は硬直化し、危険であるとの基本認識を共有するにいたった。
従ってわれわれは日本国政府に対し以下のとおり提言する。
- NPT加盟の核保有国は、北朝鮮など他の加盟国に条約遵守を促すためにも、条約第6条及び「核不拡散と核軍縮の原則と目標」に従い、核軍縮を速やかに実施することが不可欠である。このことを日本政府は、多国間交渉のみならず2国間レベルでも訴える。
- 北朝鮮が核開発を断念し、IAEAの保障措置をすべての関連施設において受け入れるよう、あらゆる機会を通じて継続して求めていく。
- 北朝鮮の濃縮ウラン装置による核開発の実情と意図の把握を急ぐ。対応にあたっては、不必要に過度な反応ならびに性急な制裁は避ける。
- KEDOは外交上、北朝鮮との重要なパイプであることに鑑み、存続させるよう努力する。その際、軽水炉事業の継続と重油の供給に関しては、北朝鮮による「米朝枠組み合意」遵守を条件とする。
- 北朝鮮が「米朝枠組み合意」を遵守する場合、極東の平和と安定のために、北朝鮮の食糧・エネルギー・経済問題の根本解決に協力する。良好な日朝関係は、北朝鮮の国益のためにも不可欠であることを認識させる一方、日本は北朝鮮への外交力をより高めるよう努力する。
- 平壌宣言に基づき、ミサイル発射実験の凍結を継続するよう、北朝鮮に強く求める。
- 日本、韓国、米国、中国、ロシアと北朝鮮、6カ国による外交・安全保障の枠組みを創設して包括的な議論を行い、各国の政策の透明性を高める仕組みを強化するよう努める。
- 1992年の朝鮮半島非核化共同宣言と日本の非核3原則を踏まえ、北朝鮮の非核化を北東アジアにおける非核地帯設置へとつなぎ、世界の非核化に向けて一層の努力をする。
以 上
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