[JAIF] プレスリリース -2003年2月20日 |
日本原子力産業会議は2月20日に第490回常任理事会を開催し、以下の通り「もんじゅ控訴審判決について」の声明を発表しました。
もんじゅ控訴審判決について2003年2月20日
(社)日本原子力産業会議 1. 狭隘な国土に1億2000万人を超える人口を擁し、一方で天然資源に乏しいという極めて厳しい現実にあるわが国は科学技術による「ものづくり」を国の富の基盤とせざるを得ないことを、われわれは改めて強く認識しなければならない。このため、科学技術の振興を国として図らなければならないことはいうまでもなく、さらに生活に必要な科学技術やその製品を輸出して経済を保たねばならないことから、科学技術を立国の柱とし続けるために、世代を超えて、また国内のみならず世界的視野に立った不断の研究開発・技術開発は国民的な命題である。 2. 国民生活ならびにそれを支える産業の持続的な維持発展にとって、とくにエネルギーの安定かつ安価な供給と地球環境保全との両立は必須の条件である。そのエネルギーにおいてウラン資源をエネルギーとして利用可能とする原子力科学技術は、わが国の現在将来にとってのみならず人口100億にならんとする地球を予見するならば、世界的にも必要不可欠の選択肢の1つである。また広く原子力エネルギーについても、現今の軽水炉技術を踏まえて技術の一層の高度化を図り、ウラン資源の一層の有効活用と環境負荷の低減を目指すために、安全を最優先に研究開発・技術開発を進めることは後世代への我々の重要な使命であり、高速増殖炉サイクル技術の開発はそのような位置付けにあるものである。原型炉もんじゅはその研究開発・技術開発をわが国が先導的に担ってきた重要な意義を有するもので、この分野の将来を見通すための実験を行って、わが国エネルギー計画の策定を行わんとするものであり、その早期運転再開によって同計画を定めるために必要な研究の再開を強く望むものである。 3. 科学技術への依存を高めつつある現代社会において、国民には科学技術への期待の一方で、これに起因する昨今のさまざまな社会的な事象から科学技術の功罪に対して、さらにはそれを扱う専門家たちに対して社会の評価は厳しさを増していることも事実である。とくに原子力については、技術的に安全であっても安心し難いという社会的な感情の存在は否定できない。 4. とはいえ、今回の判決について国民的立場に立った原子力利用に携わる立場から言及すれば、原子力のような極めて専門性の高い科学技術に関する司法の判断にあたっては、専門分野のさまざまな知見やその解釈などを踏まえた十分なかつ客観的な吟味がなされることを強く要望するところである。先端科学技術は総じて極端な条件の下で研究開発が行なわれることによって効果を高めたり、極めて困難なことを容易に行えるようにしていることが多い。科学技術者はこの困難な条件の上に安全という蓋をかぶせて、研究開発、技術開発を行っている。万一の事故を考慮しても十分な安全余裕を見込んで行っているのである。近来のトラブルや事故は、思いもかけぬ浅慮に基いた軽率な行動に起因していることは極めて残念なことである。 5. 開発要素の多い技術については、今回の司法の判断を契機に専門的な分野にかかわる安全審査などであっても国民にわかりやすい発信をするなど、原子力安全規制について説明責任の履行など透明性の向上に努め、より一層の国民の理解と納得を得ることが必要である。 6. 原子力案件についてこのような司法の判断が下されたことは大変遺憾なことであるが、もんじゅ判決以前から存在する現今の原子力に対する社会の厳しい雰囲気とは決して無縁ではないこと、そしてこの不信感の原因は原子力関係者が自ら招いたことでもあることを改めて深く認識し、官民を問わず原子力関係者は高い自己責任意識のもとに技術に対して真摯かつ謙虚に取り組むことが肝要であり、原子力関係者自らの体質改善と徹底的な情報公開などを通じて一層の信頼回復に全力を尽くすことを、原子力関係者あげてここに誓うこととしたい。 以 上
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