[JAIF] プレスリリース−西澤 原産会長談話

原子力関係企業、諸団体における夏季に向けた節電への協力について

2003年5月30日
(社) 日本原子力産業会議
会長  西澤 潤一

○ 昨年8月末に明らかになった東京電力の原子力発電所自主点検に関わる不正記録問題を契機に、原子力事業者と規制当局に対する立地地域の不信感が顕わになっております。このため、炉心シュラウドなど当該機器の速やかな点検のための停止の結果、4月半ばには東京電力の全17基の原子力発電所が停止しました。柏崎刈羽原子力発電所6号機が戦列に復帰したものの、現在もなお、首都圏に電力を供給する同社原子力発電所のうち16基が運転を停止しています。これら発電所の再起動の条件整備に時間を要した場合には、夏場の電力需要のピーク時に首都圏の電力供給に支障をきたす恐れが生じてきていることは周知のとおりであります。

○ このような事態を避けるため、東京電力および関連事業者は、停止火力発電所の再開、応援融通計画受電、追加供給力対策などの電源確保対策、および需給調整など需要面での対策など、需要と供給両面から最大限の努力を積み重ねています。また、政府、日本経済団体連合会においても、今回の事態を重大視して、国民や産業界に対し節電を呼びかけております。

○ このような事態に至った背景として、ほぼ半世紀にわたる原子力発電開発の目覚ましい成果によるエネルギー安定供給と地球温暖化防止への寄与の一方で、遺憾ながら、こうした成功が一部で責任感と緊張感の欠如につながり、蓄積されたしわ寄せや制度疲労などの弊害が事業者と地域社会との信頼関係を損なうに至ったものと考えられます。原子力関係者は、当該事業者の改革と、可及的速やかな信頼回復を支援しなければならないと考えます。

○ そのためにも、予想しうる最悪の事態を回避するために、首都圏の原子力関係者は他にもまして節電・省エネルギーへの協力を行うことが、今必要と考えます。原子力関係各位におかれましても、会社の事務所、工場等に於いて、「節電」対策を徹底して実施されますよう要請する次第です。一方で、今回の状況を機に電力大消費地域に住む一人ひとりがあらためてエネルギー・電力といった問題に関心を深めていただくことを望みます。

○ なお、東京電力には現在停止中の原子力発電所の十分な点検・補修を行うことで安全確保に万全を期すとともに、社をあげての改革努力によって立地地域の理解と信頼を回復して、運転再開が可能となるよう、最大限の努力を継続するよう要望します。それとともに、原子力関係者は制度内にある矛盾点を国をはじめ関係者による速やかで忌憚ない議論を通して是正していくなど、原子力がそのエネルギー源としての重要性と高度の技術運用の不可欠な点で超絶した技術であることを踏まえ、社会に対する責任感を今一度新たにし、自粛自戒していかなければならないことを表明します。

以 上

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