[JAIF] 「エネルギー基本計画」案に対する見解 -2003年9月26日 |
日本原子力産業会議は、経済産業省・総合資源エネルギー調査会基本計画部会の「エネルギー基本計画」最終案に対する見解をまとめ、9月26日に経済産業省に対して提出いたしました。 |
「エネルギー基本計画」案に対する見解2003年9月26日
(社)日本原子力産業会議 昨年6月に施行されたエネルギー政策基本法に基づき、今般、最終的な「エネルギー基本計画」案が公表された。地方自治体関係者からの意見も踏まえたうえで、わが国のエネルギー需給を長期的に見とおし、総合的に推進する具体的政策の考え方が明確に示されたことの意義は大きい。 言うまでもなく、エネルギーの安定確保・安定供給はわが国社会経済の維持・発展に不可欠であるが、同時に今日の社会においては、環境面での制約を強く意識し、持続的発展を可能にする経済活動が求められている。原子力のエネルギー研究開発利用に関わる民間関係者としても、今後のエネルギー政策の基礎をなす「エネルギー基本計画」案の審議に重大な関心をもって注目してきたところである。 今般の計画案においては、安定供給に優れ環境負荷の少ない原子力の利用等について、その特性を的確に捉え、今後の利用のありかたについて重要な方向性が包括的に示されているものと評価を与えるとともに、支持を表明するものである。具体的な考えを以下に示す。 記
1.「エネルギー基本計画」案においては、安定供給が可能であり、地球温暖化対策上優れた特性を有するエネルギーとしての原子力発電について、安全確保を大前提に、核燃料サイクルの確立と相まって基幹電源として推進することを明記した点が評価される。あわせて、原子力発電をはじめとするエネルギーの安定供給と安全の確保や国民の理解を得るための取組みにおいて官民双方の努力が必要だと指摘しているが、実際に事業を担う民間産業界においては、健全な推進のため体制の整備強化を進めるとともに、率先して、安全確保への品質保証システムや自主保安体制の確立、立地地域住民をはじめとする国民の理解や協力を得るため情報公開と説明責任を全うすべく、なお一層の取組みを進めることが重要と考える。 2.計画案では、供給安定性等に優れている原子力発電の特性を一層改善する核燃料サイクルの推進を進めるにあたっては、安全性と核不拡散の確保を前提に、経済性に留意しつつ柔軟性のある取組みが必要と指摘したうえで、とくにプルトニウム利用の当面の中軸となるプルサーマルを着実に推進することが謳われている。プルサーマルは従来、電気事業者がウラン資源の有効利用等の観点から早期実施に向けて鋭意取り組んできた計画であり、今般の計画案で、エネルギー政策の一環として明確に推進の方針が示されたことを踏まえ、プルサーマルの意義をあらためて確認するとともに、事業者の活動に加え、国が前面に出た理解活動等とあわせて、その実現に向けて取り組みを進めていく所存である。 また、プルサーマル推進の意味において、プルトニウムの長期的利用を進める上で不可欠な再処理事業の意義について基本計画案の中で明確な位置付けがなされたものと考える。これと呼応して、民間関係者においては、予定される再処理事業の操業に向け推進のための態勢や品質保証活動等に細心の注意を払い、所要の取り組みを図ることが極めて重要であることをここに確認したい。 3.電力小売自由化と原子力発電および核燃料サイクル推進との両立について、自由化の拡大に伴い懸念される事業者側の投資リスクに配慮した上で、継続して原子力発電の推進を図るための諸制度整備の必要性が指摘されているとともに、バックエンド事業についても、国の政策としての推進と企業における投資リスクとの整合を図ることの重要性が指摘されている。このことから、今後は、事業者側の不断の経営努力とコスト削減への取組みを前提として、国においては、その円滑な遂行を支える制度的枠組み作りや、再処理、廃棄物処分などバックエンド事業への投資促進の環境整備を図るための適切な制度ならびに措置が講じられることが期待される。 4.同計画案では、重点的に研究開発の施策を構ずべき技術として、原子力の長期安定利用の観点から、核燃料サイクル技術の研究開発の必要性が明示されている。資源小国のわが国においてエネルギー安全保障を実現する視点からも、輸入ウランの一層の有効活用を実現する高速炉開発や燃料サイクルの早期の確立に必要な研究開発を継続していくことは極めて重要であり、産業界としても同分野の研究開発については積極的に支援を行ってきたところである。今後は新法人が中心となることを明確にして、これらの分野における研究開発が拡充されることを期待する。また、原子力技術の多様な活用の観点からは、高温ガス炉や、将来的な見地から核融合などの研究開発の必要性も指摘しておくことが望ましいと考える。 5.同計画案において、将来の水素エネルギー社会の実現に向けた取組みとして、燃料電池開発利用の高度化への期待が示される中で、本格的な水素供給のインフラ整備を進めることが述べられている。それとともに、化石燃料に依存しない原子力を利用した水素製造実用化への期待が示されていることから、来るべき水素エネルギー社会の需要に応えられるよう、国の誘導的施策とともに、新法人を中心として、原子力関係機関においても原子力技術を利用した水素製造の研究開発を着実に進めていくことが肝要と考える。 6.また、エネルギー資源の大半を輸入に依存するわが国のエネルギー安全保障の観点からは、海外諸国との外交関係の強化や国際協力活動の推進を図ることで、円滑な資源流通環境をつくり、維持することが重要との認識を明確にしておくことが望ましい。 7.なお、今般の基本計画案は定性的指針としての側面が強調されているが、本来ならば、民間企業による事業計画の策定に際し、エネルギー基本計画の具体的数値が根拠となり参考とされるべきものである。さらには、京都議定書に基づく国際的公約として、わが国は1990年レベル比で6%の温室効果ガス排出削減が求められている(現実には2001年度末で5.2%増加)ことを勘案すると、エネルギー政策の遂行に真に必要な数値を定量的に捉え、このような基本計画の中に具体的な目標値として明示することも必要であろう。 以 上
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