[JAIF] 原産会長所信表明 - 第37回原産年次大会 |
第37回原産年次大会(4月21日〜23日開催)開会セッションで、西澤潤一会長が以下の通り所信表明を行いました。 |
原産会長所信表明2004年4月21日 (社)日本原子力産業会議 会長 西澤 潤一 議長、泉経済産業副大臣、宮腰内閣府大臣政務官、河村文部科学大臣のご所感をいただく坂田文部科学省研究開発局長、ご列席の来賓の方々、並びに国内、海外から、この原産年次大会にご参加下さいました皆様に、心から深く御礼申し上げます。 第37回原産年次大会の開催に当たりまして、主催者を代表いたしまして、一言、所信を述べさせて頂きます。 さて、世界で運転中の原子力発電所は2003年末現在で434基、合計出力は3億7628万kWであり、過去最高の規模となりました。原子力発電は世界の発電電力量のほぼ17%、一次エネルギーのほぼ7%を占めており、結果的に約20億トンの二酸化炭素の削減になっているわけであります。ご存知のとおり、日本では現在52基の原子力発電所が、全電力の3割強をまかなう有力な電源の一つとなっております。 エネルギーの安定確保はいかなる国においても、生活と経済の維持発展に不可欠なものであり、国の近代化に伴ない、その必要性はますます増大して参ります。それなるが故にとも言えましょうが、過去そして現在もなお、エネルギーの確保は人類の紛争の種とさえなってきました。遺憾ながら、わが国は、特に緊急度認識が不足していますので、今世紀においてはなんとしても、そのくびきから抜け出さなくてはなりません。そのためには、発電設備の利用率向上、新しいエネルギーの開発などにより、エネルギーの供給量を増大させ、国際的な流通を円滑にしていくことに、もっと努力をしていく必要があります。 原子力はすでに発電分野において重要な役割をはたしておりますが、水素製造や海水淡水化のエネルギーとして活用することができ、地球温暖化対策や水不足の問題に一層役立てることができます。今日ここにお集まりの方々は、このような原子力の果たし得る貢献に確信を持ち、大きな期待を抱いておられるに違いありません。 しかしながら、わが国の今日の原子力開発をめぐる状況をみますと、残念ながら、このような大きな期待に向って着実に進んでいると申し上げることはできません。 相次ぐ事故や不祥事によって損なわれた原子力への信頼は、関係者がその回復に向けて必死に努力していますが、まだ回復された状況にはありません。米国など海外の主要国では原子力発電の設備利用率が大幅に向上しているのに対して、わが国では停滞状況にあり、海外諸国に比べて大きく遅れをとっております。このような状況は「日本の原子力の失われた10年」といわれております。 さらに、わが国の原子力を取り巻く環境は大きく変化しております。国は独立行政法人原子力安全基盤機構を発足させ規制体制を整えるとともに、安全規制の実効性を高めるべく、安全規制と検査制度の見直しを行っています。また、世界的な電力市場自由化の流れの中で、わが国においても電力小売市場の自由化範囲が順次拡大されつつあり、民間による長期研究開発投資が行われ難い環境になりつつあります。 一方、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合が進められ、原子力研究開発の一般会計予算は近年漸減傾向にあります。このような状況の変化に適切に対応していかなければ、わが国の原子力産業基盤は喪失にいたるという危機感を抱かずにはいられません。 つまり、わが国の原子力産業界が再び社会の信頼を回復し、エネルギーの安定供給と地球環境問題の解決に向けて今後とも重要な役割を果たして行くためには、民間原子力産業界が原子力の現状に対する危機感を共有し、自ら意識改革と体制改革に向けて主体的に行動を起こしていかなくてはならないのです。 このため、当日本原子力産業会議は、民間の先頭に立って改革を推進するべく、「基盤強化委員会」において、人材問題について報告を取りまとめ、既にその一部を実行に移しており、また昨年秋に原産の外部に「原子力産業界団体の在り方を考える委員会」を設置して約半年にわたって検討を行っていただきました。 その検討結果の骨子は、二つの団体の設立です。 一つは「原子力産業界が自らの責任のもとで自主的に技術力を維持・向上し、運転保守情報を一元的に収集・分析し、これをベースに技術的視点から原子力産業界を支援、牽引、評価する団体」であり、 二つ目は「民の考えのもとで科学的合理性を基本として公正・誠実・透明を行動原理として、民間の意見・提言を対外的に発信する団体」です。 これら二つを発足させ、事故不祥事の絶無を期するとともに、既存の民間団体の力を結集して、再編、統合に早急に取り組むことであります。 これを受けて基盤強化委員会では、「当日本原子力産業会議が、特に後者の役割を重点的・主体的に担うために、その機能強化と組織改革を図る必要がある。」と議論がなされたとの報告を受けました。 さらに、前者の団体も、後者の対外的な活動のための客観的技術的なベースとなるものであり、後者の団体と並行して実現することが求められます。 半世紀前にスタートし、わが国の原子力開発において公益法人の民間団体として主導的な役目を担ってきた当会議が今日、時代の変遷に応じて、民間原子力界の再生に向けてこのように重要な改革のリーダーと目されることは、当会議の歴史をかえりみれば当然のことかと存じ、各界の理解、協力を得ながら、早速その方向へと改革に取り組んで参りたいと存じます。事故不祥事の絶無が何よりも大切で、全ての出発は、この点から始まるわけですが、皆様方のご理解とご支援を切に願うものであります。 最後になりましたが、今回の年次大会の準備委員長には、東京大学名誉教授で地球環境産業技術研究機構副理事長の茅 陽一様にお願いいたしました。茅さんには、ご多用中にもかかわらず、快くお引き受け頂き、大会の準備にあたり様々なご指導を頂きました。厚く御礼申し上げます。また、準備委員の方々、国内、海外の発表者、議長に感謝の意を表したいと存じます。また、お集まりいただきました皆様には、是非積極的に議論に参加され、大会を盛り上げていただきますようお願い申し上げます。 以 上
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