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日仏原子力専門家会合(N−20)とは、原子力発電を主要エネルギー源として開発を進めている日本とフランスの関係者が、原子力開発計画やその背景となる基本方針について非公式に意見や情報を交換することにより、両国間の相互理解と協力を促進するとともに、世界の原子力開発の円滑な推進に寄与することを目的として、1991年以来、両国で交互に開催されている会合です。今年の第11回会合(7月6日〜7日、フランス・ディジョンで開催)において、日仏共同声明(原本英語)が取りまとめられました。


第11回日仏原子力専門家会合(N-20)共同声明(参考訳)

日本原子力産業会議


  1. フランスおよび日本の原子力専門家からなるグループN−20は、第11回会合を2004年7月6日〜7日、フランスのディジョンで開催した。2日間の会合において、日仏双方の専門家は次のテーマについて情報と意見の交換を行った。
    ○両国の原子力状況
    ○将来型原子力システム
    ○燃料サイクル−アクチナイド管理と放射性廃棄物問題
    ○核不拡散関連の諸問題

  2. N−20の専門家は、原子力エネルギーがすでに人類にとり、持続可能で、また温室効果ガスを生じないエネルギーをもたらすため主要な役割を演じており、今世紀において引き続きそのような役割を果たすであろうと強調した。今21世紀、人類は、化石燃料の価格上昇、エネルギー依存度および地政学的不安定リスクの増大、気候変動といった種々のエネルギー・環境問題に直面している。

  3. フランス側は、フランスのエネルギー状況、住民の理解獲得のための諸方策、および2003年に実施したエネルギーに関する国民討論の結果を発表した。フランス議会にて現在検討中のエネルギー政策法案における次の4つの優先課題が示された。
    ○エネルギー需要管理政策の復活
    ○再生可能エネルギー源の開発
    ○2015年から2020年の間にEPR実証炉を建設するとの決定による新世代原子炉の導入開始
    ○新エネルギー技術の研究開発
     フランス電力公社(EDF)からは、6月22日、フランス初のEPRの計画開始が発表された。

  4. 日本側は、日本において原子力開発活動に復調の兆候が見られることに言及し、また、最近の核燃料サイクル反対運動の原因について説明した。両者は、市民社会が環境の面からも経済の面からも持続可能となるためには、核燃料サイクルが原子力を持続可能とする基本要件であることに同意した。フランスや日本のように、国内にエネルギー資源の乏しい先進国にとっては、信頼でき、また効率の良い燃料サイクルシステムを確立することがとりわけ重要である。このような観点から、目下ウラン試験準備中の青森県の六ヶ所再処理施設を順調にスタートさせることが極めて重要である。フランスは、同施設に係る技術の主要部分を提供しているが、日本とともにその操業成功にできるだけの協力を惜しまないものである。日本側は、MOX燃料利用の重要性を強調し、そのため、透明性と説明責任を確保した政策を通じて、地元の理解を得るための努力が少しずつ奏功している状況を紹介した。参加者はまた、一般の人々、特に地元住民の信頼を得ることの重要性についても強調した。

  5. 日仏双方は、原子力発電システムは十分な競争力を有すると強調した。さらに、特に外部性(他のエネルギー源では考慮されていない)を考えれば、より有利である。再処理・リサイクル・廃棄物処理という一連の燃料サイクルバックエンドコストは、kWh当たりでは発電コストのごく一部にすぎないものであることも強調された。
     最近2年間のヨーロッパ電力市場価格と運転コストの比較において、@スポット市場価格では、原子力は常に競争力に優れている、A他のどの化石燃料発電も原子力発電より高い──ことが明かにされている。
     現在建設準備中および一部運転中の第3世代新型原子炉(EPR、ABWRなど)においても、原子力発電コストの競争力が最も高いことが実証されている(コンバインドサイクル天然ガスより低い)。
     双方は、原子力発電の内部コストに価格競争力を有することを強調した。外部コストについては、他の化石燃料に比べかなり小さい。外部コストの評価により、原子力発電と核燃料サイクル関連の推進が正当化されるものであり、このことは、エネルギー政策決定の際にも考慮されるべきである。

  6. 参加者は、2035年までの技術的成熟を目指して、国際的枠組みの中で、第4世代原子力システムを積極的に開発していくことが重要であると強調した。参加者は、第4世代システムが持続可能なエネルギー供給に解決策をもたらすことにより、21世紀のエネルギー・環境問題に対応する手段であると強調した。それはまた、電力と水素を産出し、二酸化炭素を発生しないと期待される運輸用エネルギー、さらに、海水淡水化につながる可能性を有している。これらシステムの持続可能性は、全てのアクチナイドの再利用により放射性廃棄物の容量および長期にわたる放射性毒素をいかに減少し、最終廃棄物を核分裂生成物つまりアクチナイドより早く崩壊する放射性毒素に限定することができる可能性にかかっている。これも、天然ウランの有効利用の一つである。
     これらの目標に達するため、高温炉、高速中性子炉、新型燃料サイクル技術を伴う第4世代システム技術開発が、積極的に進められている。

  7. 日本とフランスの専門家は、現在の、再処理−リサイクル−ガラス固化、というバックエンド政策は、成熟した産業技術の上に成り立つものであり、極めて安定したガラス化形態において、またプルトニウムを最終廃棄物に持ち越さないことから、廃棄物の量と放射性毒素をすでに著しく減じていると強調した。
     将来、この方策は全てのアクチナイド(ウラン、プルトニウムその他のマイナーアクチナイド)をリサイクルすることにより一層改善されるであろう。「グローバルアクチナイド管理」ワーキンググループから、将来のエネルギー開発にとって魅力ある戦略が提案された。それは、長期にわたる放射性廃棄物管理の重荷を解き、強力な核拡散抵抗性の特徴を持つものである。

  8. この代表的規模によるグローバルアクチナイド管理の手法をまず研究しさらに実証するため、フランスと日本は次の点を実証することが重要である。
    @全てのアクチナイドを回収する新型再処理プロセス
    A高速中性子炉におけるこれらのアクチナイドのリサイクル
     その中で「もんじゅ」は、今後10年から15年の間、国際的実証のための最も魅力ある、また実用的なツールである。

  9. 日本とフランスは共に商業規模の再処理プラントを運転中、または運転準備中である。参加者は、これに係る情報交換会議の開催について検討することとした。その中で議論する主要課題の一つは、運転情報に関する問題である。相互交流を行うことが、技術や管理、パブリックアクセプタンス等の諸側面から、有益であろう。

  10. 参加者は、安全規制および防災対策に関する情報を共有した。参加者はまた、国、地方、運転当局のあるべき役割について議論した。

  11. 双方は、核不拡散の枠組み強化の役割を再確認し、現在検討中の国際的な諸提案を再評価した。機微な技術、機器への規制強化により、国際査察の下で、特に発電において原子力の平和利用のための国際協力の発展を阻害することがあってはならないことが強調された。双方は、国際協力と共に二国間協力継続の重要性を強調した。

  12. 最後に、参加者は、また核融合研究分野における国際および二国間協力の重要性を強調し、ITER計画進展への強い期待を表明した。

    以上


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