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日仏原子力専門家会合(N−20)とは、原子力発電を主要エネルギー源として開発を進めている日本とフランスの関係者が、原子力開発計画やその背景となる基本方針について非公式に意見や情報を交換することにより、両国間の相互理解と協力を促進するとともに、世界の原子力開発の円滑な推進に寄与することを目的として、1991年以来、両国で交互に開催されている会合です。今年の第12回会合(4月21〜22日、佐賀県唐津市で開催)において、日仏共同声明(原本英語)が取りまとめられました。


第12回日仏原子力専門家会合(N-20)共同声明(参考訳)

日本原子力産業会議

  1. フランスおよび日本の原子力専門家からなるグループN−20は、第12回会合を2005年4月21〜22日、佐賀県唐津市で開催した。2日間の会合において、日仏双方の専門家は次のテーマについて情報と意見の交換を行った。
    ○原子力開発の現状
    ○燃料サイクル
    ○核物質管理と危機管理
    ○経済性
    〇将来型原子炉システム
    〇プルサーマルと住民理解

  2. フランス側は、将来のエネルギー問題対応のための法的枠組み、特に2006年制定予定のエネルギー法および廃棄物管理法の審議状況を説明した。また、原子力開発に関する人々の一層の理解獲得のための諸検討についても紹介した。
    日本側は、新原子力長期計画策定のための検討状況ならびにエネルギー政策における原子力発電の位置付けについて説明した。また、原子力産業界が進めつつある改革について説明した。

  3. 双方は、文明社会の持続可能な発展にはクリーンな原子力エネルギーの積極的活用が必要不可欠であり、この度発効した地球の温暖化防止を目的とする京都議定書も、原子力抜きには達成不可能であることを再確認した。
    京都議定書を実効あるものとするためにも、すみやかに原子力をCDMの対象として認知すべきことについて、意見の一致を見た。

  4. グローバルアクチニドマネージメント(GAM)に関するワーキンググループは2003年のN−20会合にて設けられ、本課題について双方が高いレベルでの共通認識を得たとの報告書が出されている。今後は専門グループによる密接かつ具体的な協力関係へと段階を進めることに合意した。
    アクチニドマネージメントの重要性は、日仏がすでに共有しているところであるが、日仏にとどまらず、他の主要原子力国とも、この認識を共有すべきであり、日仏は共同して働きかけを強める。このため、多国間で討議を進めることが重要であり、OECD/NEAやIAEAなどに日仏から共同して、近い将来に本題に関するシンポジウムを開催するよう働きかけていくことに合意した。

  5. 日本側は、高速炉サイクルの実用化に向けた研究開発のステップの中で重要な役割を担う「もんじゅ」の改造工事が着手され、早期運転再開と今後の研究開発への貢献が期待されることを説明した。
    将来的な高速炉サイクルとしては、環境への負荷を小さくし21世紀のエネルギーを持続して供給するため、高速炉を最大限利用する究極の燃料サイクルが描かれる。その第一歩として日仏が、G ‐W内で米国と協力して、MA燃焼技術の実現に共同して踏み出すことが次の重要なステップであることが強調された。
    かねてよりフランス側より提案のある「もんじゅ」の共同利用について、両国は、「もんじゅ」を用いたMA燃焼について、具体的な協力方法を検討しており、今年の夏までの協定締結を目指すことが確認された。高速炉の利用については、電源としての利用のみならず、水素製造目的などが議論された。また、水素製造方法が検討されるべきことが議論された。

  6. 日本からは、事業段階における日本の高レベル放射性廃棄物処分計画の状況として、サイト選定に向けた公募が実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)により実施中であることを紹介した。また、高レベル廃棄物処分に関する研究開発については、サイクル機構の2つの地下研究施設での研究計画およびその成果の取りまとめの概要が示された。
    フランス側より、「分離・変換技術を究極の目標と位置づけ、地層処分・地上保管を手段として用いるべき」との原則を盛り込んだ廃棄物管理法案を作成すべきとの報告書を最近公表したフランス国民議会の動きなど、高レベル廃棄物管理政策の進展状況が説明された。
    双方は、高レベル放射性廃棄物処理処分に関する日仏それぞれの戦略の進展を確認しあうためワーキンググループを設けることに合意した。ワーキンググループでは、とくに政策決定に当たっての技術的、経済的進展を重点的に検討することとする。

  7. 双方は、核不拡散体制が厳しい試練にさらされている現在、核不拡散の枠組み強化の一層の必要性を再確認し、現在検討中の国際的な諸提案について意見を交換した。双方は、多国間および二国間において協力を継続していくことの重要性を強調した。

  8. 原子力施設の運営にとって安全文化の醸成は最優先課題である。日仏とも、安全文化の重要性とそれを育む経営者の役割や意識について再認識した。

  9. 今後、高経年炉が増加し、高経年化対策の重要度が増してくる。従来の保全に加え、思いがけない事故を防ぐという観点から、国内外の事例・技術情報などの収集、分析を行い、予防保全に努めることが重要である。日仏間で、高経年化に係わる情報を交換し、データに基づく客観的、合理的な規制を含め、必要な対応を適宜適切に水平展開していくことが重要であることを確認した。

  10. 原子力事業は、立地地域の行政や住民の理解と協力なくしては、一歩も前に進むことができない。双方は、事業者、規制当局の両者が、立地地域への情報公開・理解獲得に努めるとともに、地域の声を聴き「地域に支えられ、地域を支える原子力」となることが重要であることを確認した。

  11. フランス側からは、EPRの開発状況、とくにフィンランドで建設中のプロジェクト、フランスのフラマンビルでの建設計画および第3世代炉の海外での展望が紹介された。また、一層の安全性、経済性向上のため、大型軽水炉についてのフランスとドイツの経験を集約した結果が説明された。さらに、欧米におけるいくつかの発電コスト比較検討の状況が説明された。
    日本側からは、再生可能エネルギーとの比較を含め、直接処分と再処理の燃料サイクルコストが説明された。原子力発電の発電コストは、再生可能エネルギーに比べかなり安価であり、石炭火力発電や天然ガス火力発電とほぼ同程度である。使用済み燃料の再処理路線による費用負担は、日本の試算によると直接処分に比べると発電コストで1割程度高いが、再処理によるウラン・プルトニウムの有効活用と高レベル放射性廃棄物の量的削減効果を考慮すると大きな負担とはいえない。
    日仏双方は、安全性、信頼性の向上のため努力を続けつつ、燃料サイクルコスト低減のための技術開発において協力することが期待される。双方は、原子力発電コストのさまざまなファクターに関する経済性評価のより詳細な比較を行うことに合意した。双方は、次回N−20会合に報告書を提出することに合意した。

  12. 日仏双方は、次世代原子力システムとして超高温ガス炉の開発の重要性を強調した。この開発にあたって、双方の協力関係をさらに強化し、日本原子力研究所の高温工学試験研究炉HTTRを活用した研究開発を推進することを確認した。また、高温ガス炉による水素製造法は、地球温暖化原因ガス低減の切り札になるとともに、経済的で安定した水素製造の技術として有望であることを改めて確認し、双方の協力で技術開発を進めていくことに合意した。

  13. 日本とフランスの専門家は、原子力発電システムの優位性を確認するとともに使用済燃料を再処理・回収し、資源のリサイクル、廃棄物減容をめざした燃料リサイクルが不可欠であり、両国における燃料リサイクルの積極的な推進が必要であることを確認した。また、燃料リサイクルの推進についてフランスでは、十分な実績もあり特に安全性に問題ないことが報告された。こうした実績も踏まえ、今後、日本においてもプルサーマル計画が着実に実施されることが望ましいことが双方の間で確認された。
    さらに、原子力の推進に当たっては、情報公開と双方向コミュニケーションを軸として一般社会の理解を得、安心感を与える取り組みが重要であり、そのため両国における理解活動推進の重要性が確認された。
    なお、燃料サイクル全般に関し、GAM構想や炉型戦略など幅広く戦略的な議論を日仏間で行う場を設置することの重要性が合意された。

    2005年4月22日 唐津市

    以上


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