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 日本原子力産業会議は8月12日付けで、総合科学技術会議における 第3期科学技術基本計画策定にあたり
小泉 純一郎 総合科学技術会議 議長、 棚橋 泰文 総合科学技術会議議員・科学技術政策担当大臣、 薬師寺 泰蔵 総合科学技術会議 議員宛に要望書を提出いたしました。

第3期科学技術基本計画策定にあたっての要望

平成17年8月12日

社団法人 日本原子力産業会議

 国土が狭隘で天然資源に恵まれないわが国は、国民の知の集積である科学技術の積極的な振興とその成果の有効活用をはかり、持続的な発展を遂げていかなければならない。 

 社会経済の成長の原動力となる産業や質の高い国民生活にとり、エネルギーの安定供給は生命線である。今後、中国をはじめとする開発途上国の急激なエネルギー需要増を背景とした世界的なエネルギー資源獲得競争の激化が予想される中にあって、わが国が目指すべきは科学技術を最大限に活用したエネルギーの確保である。

 環境特性に優れた原子力は持続的発展に適した技術エネルギーであるが、近年、原子力の研究開発への投資は、国と民間の双方において減少を余儀なくされており、原子力利用の基盤が脆弱化する懸念が生じている。原子力エネルギー利用、放射線利用において、新知見の獲得をもたらす研究開発が促進され、技術が継承・発展し、その基盤となる人材の厚みが増すことが極めて重要である。これらが実現するために、国の総合的な科学技術政策における措置が強く求められる。

 以上の観点から、民間原子力産業界として、第3期科学技術基本計画に対する多大な関心をもって、以下の通り要望します。

1.エネルギー分野の重点対象化、基幹的な科学技術としての原子力の位置付け

 核燃料サイクルを含む原子力発電、将来の実用化を目指して安全確保を大前提に研究開発が進められている高速増殖炉、核融合等は、わが国の長期的なエネルギー安全保障に資するのみならず、環境保全の観点から炭酸ガス濃度の減少に大きく貢献する極めて有効な技術である。例えば、国内の原子力発電所は約1.83億トンのCO2排出抑制を果たしている。一方、昨今原油価格が高騰(過去1か月、NY商業取引価格において1バレル56ドル以上で推移。8月8日には約64ドル)する中にあって、原子力発電は燃料費依存度が低く、国民経済の観点からも安定した電力供給を可能としている。さらに、革新的技術開発によるウラン資源の飛躍的な効率的利用がもたらす資源制約からの解消が期待されている。このように、原子力を含むエネルギー分野の研究開発は、「基本方針」に示された「大政策目標2『環境と経済の両立』」における「中政策目標4『地球温暖化・エネルギー問題の克服』」および「同目標5『環境と調和する循環型社会の実現』」に合致するものである。

 上記を踏まえ、第3期基本計画において、長期的視野から戦略的に研究開発投資が行われるべき領域である「エネルギー」を重点分野対象とするとともに、高速増殖炉サイクルや高温工学等の革新的原子力システムおよび核融合について、国家基盤を強化する基幹的な技術として明確に位置付けることを強く要望します。

2.原子力エネルギー分野の大規模研究開発に対する資源配分上の配慮

 本年10月に発足する日本原子力研究開発機構は、高速増殖炉、核融合炉等の高度な原子力エネルギーシステムの研究開発を重要な使命としている。この分野の研究開発活動について、同機構を核として産業界や学界が緊密に連携し活性化をはかることで、新たな技術的知見の獲得が促進され、原子力エネルギー利用の高度化につながると考えられる。こうした研究開発は、一般的に大規模施設が必要であり、プロジェクト研究開発として集中的な研究開発投資と施設の運転維持費用が必然的に多額にのぼることが特徴として挙げられる。

 原子力エネルギー技術の研究開発に対しては、例えば、競争的研究資金を大学や民間機関等が柔軟に活用し、協働して研究開発を推進できるような仕組みを取り入れることも重要であるが、基本的に、第3期科学技術基本計画において、原子力エネルギー技術の研究開発を国家基幹技術として位置づけ、その特性を十分考慮した資源の配分および研究開発を推進する制度整備を強く要望します。

3.量子ビームテクノロジー研究開発の推進

 加速器技術およびレーザー技術の飛躍的な進歩にともない、近年、強度が強く質の高い粒子線や電磁波の利用技術の高度化と多様化が進展している。これを背景として発展している高度な放射線利用は、量子ビームテクノロジーとも呼ぶべき技術して注目を集めている。量子ビームテクノロジーは、高い性能での物質の構造解析や生体内現象の観察や加工を可能とするものであり、ナノテクノロジー、ライフサイエンスをはじめとする最先端の科学技術・学術分野から、各種産業技術を支える高度技術として高く期待されている。

 上記を踏まえ、第3期基本計画において、同分野の研究開発を促進する上で重要な役割を果たす大強度陽子加速器等の最先端施設の整備を継続的に進め、わが国の産業力強化に貢献する量子ビームテクノロジーを積極的に推進する方針を打ち出すよう強く要望します。

以上

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