トルコのメリチ大使が浜岡原発を訪問


去る7月25日(金)に、在日トルコ大使館のビュレント・メリチ大使が中部電力の浜岡原子力発電所を訪問しました。トルコでは、ロシアとの第一原発のアックユ・プロジェクトに次いで、第二のシノップ・プロジェクトを日仏連合で進めようとしております。大使の原子力安全に対する強い関心が示された訪問でした。

日本と国交90周年を祝っているトルコは、「エルトゥール号事件」(明治時代のトルコ軍艦の台風遭難を和歌山県の串本の漁村民総出でトルコ人69人を救出)をいまでも小学校で教えており非常に親日的な国です。1985年のイラン・イラク戦争で(サダム・フセインの撃墜予告時間までに日本からの救援機が到着せず)、テヘラン空港を出発できなくなったイラン在留日本人216人に「自分たちは砂漠を歩いてでも帰れるから」(実際はトルコ国境まで600km強)と、トルコ航空機の座席を提供してくれたのはトルコ国民でした。

原子力分野では、2013年5月の安倍首相のトルコ訪問時に、シノップ原発への日仏連合への実質発注が示され、同年10月の安倍首相のトルコ再訪、本年1月のエルドアン首相の来日でさらに進展し、日土間の原子力協力協定の発効や施設国政府契約(HGA)の締結も間近に見込まれています。

メリチ大使は、本年4月に日本に着任されましたが、日本の原発訪問の機会がなく、今後の自国首脳の来日に備え日本の原子力発電についてしっかり理解して置きたいと希望しておられました。
5月下旬、大使館側の招請により当協会の服部拓也理事長が表敬訪問した際、メリチ大使からこの希望が表明され、その後大使館側と協議した結果、「PWR かBWRは問わず、トルコにとって重要な耐震性と(福島原発事故でクローズアップされた)津波対策を重点化しているところ」とのことで浜岡原発への打診を依頼され、今回の訪問になりました。



(左ウルケル専門官、右メリチ大使)

浜岡原発では、倉田千代治 取締役専務執行役員・浜岡原子力総合事務所長、岡田利晴 原子力研修センター所長等から3時間半の懇切な説明をいただきました。

  (手前は倉田所長、中央は岡田研修センター長)

メリチ大使からの質問のいくつかと、それに対する答えを紹介します。
Q:1・2号機はどうして福島原発事故以前に廃止をしたのか?
A:1・2号機は合わせても130万kWの容量しかない。古い炉の改修・補強に金をかけるよりも新しい炉として6号機を建設するほうが合理的と判断した。
Q:耐震性はどれくらいの対策をとっているか?
A:想定される最大級の南海トラフ等にも耐えられる最高レベルの耐震策をとっている。
Q:防波堤工事について聞きたい。



(高さ22mの防波堤模型の前で)

A:当局の指導もあり、福島事故後1年間で18m高の防波堤を作り、その後さらに19m高、22m高の津波に対応できるようにした。
防波堤の耐震性を保つために直径3pの鉄筋を使っている。普通は、一般の15階建てマンションでもせいぜい直径1〜2cmの鉄筋しか使っていない。



(巨大防波堤模型の前で)

 



(大使は、復水器で事故があっても海水が汚染されることがないのかを何度も質問)

Q:浜岡での特徴的な施策は?
A:緊急冷却水用に海水を吸い上げるポンプの設置もそのひとつ。現在は浜岡にしかない。最上部に潜水艦のシュノーケルに相当する装置があり、津波の来襲からその引き潮までの(取水口からの取水が妨げられる)20分間の冷却海水を確保する。
Q:近くに風力発電タワーが見られるが、風力で賄えば原発は不要では?
A:風力タワーの発電容量は2千kW/基。浜岡5号機(140万kW)の容量を満たすには700台が必要。さらに安定供給するには2千台が必要。

原子力研修センターで、福島原発事故のシーケンスの推移をシミュレーション・パネル全面を使って模擬、地震襲来→原発の自動停止→40分後の津波襲来→電源喪失→炉心の水位低下と圧力上昇→バルブ開放による炉内圧力の低減→その後の炉内気圧の増減→消防車等の外部からの注水が失敗→バッテリー切れに至る過程を解説いただきました。
メリチ大使は、原発の安全を保つ機能や福島原発事故のシーケンスがよく分かり、感銘を受けたと発言されました。

中部電力側からは、「浜岡では福島事故後、さまざまなシーケンスに対応するプログラムを訓練シミュレータに追加している。炉心溶融対応プログラムは今年中に組み込む」との説明もありました。

会議室に戻ってからメリチ大使は、「新しいことを含め、得るものが多い訪問であった。トルコの専門家にもぜひ見せてトルコの原子力安全の強化に役立てたい」と感想を述べられました。

以上


 

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