「量子放射線利用普及連絡協議会」第13回会合を開催


当協会は6月15日、都内で「量子放射線利用普及連絡協議会」第13回会合を開催し、京都大学名誉教授・ICRP(国際放射線防護委員会)主委員会委員の丹羽 太貫 氏から「放射線の健康影響+胎児被ばくの影響」について、また、医療放射線防護連絡協議会総務理事・自治医科大学 大学RIセンター管理主任の菊地 透 氏から「対応を影響から考える‐放射線影響を基準としたレベル区分の提案」について、ご講演いただきました。

丹羽氏の講演の主なポイントは、以下の通り。
@ 原爆被爆者における全致死がん頻度と線量については、「1000mGy」でがん死亡の頻度は「10%増加」する。同じ線量をゆっくり受けるとその効果は半減するので、がんの頻度上昇は5%にとどまる。100mGy以上で、直線的にがん死亡頻度が増加するが、100mGy以下での増加は、統計的有意性がない。しかし、防護目的には、線量に対して直線的に増加と想定しており、100mGyの急性被ばくで1%、遷延被ばくで0.5%の増加を想定している。
A 発がんは、食生活、生活習慣、ウイルス感染、ストレスレベル、環境要因(紫外線、他)等々様々な影響に依存する。よって、がんの死亡率の地域変動(国内)の幅は大きく、10%以上である。国別変動は、さらに大きい。
B 内部被ばくは、線質が同じで、線量も同じであれば、外部被ばくと影響も同じ。内部被ばくの方が危ないというのは誤解。
C 「遺伝的影響」に関しては、被爆者2世の調査において、これまでの解析では検出されていない。遺伝的影響は「無い」とは言えないが、7万人の集団の解析で検出されない程度に低いと言える。
D 「胎児期の被ばくの影響」に関しては、大脳発達期の被ばくで小頭症・精神遅滞が増加するが、小児がんの増加は顕著ではない。ICRPは、100mGy以下で胎児影響無しと結論付けている。

菊地氏からは、「対応を影響から考える‐放射線影響を基準としたレベル区分」として、これまでの人での放射線影響の健康調査から、100mGy以下で有意な影響が起きていないため、今回の福島原発事故の緊急時対応に関する国民への説明には、100mGy(mSv)を基準とした以下のようなレベル区分が提案され、国民の関心が高い健康影響を基準に解り易く説明し、風評被害を防ぐことが重要である、との講演がなされた。

レベル区分線量・mGy説 明
4以上400以上 健康影響を懸念
300 宇宙飛行士の線量限度等
200 血液の変化が観察できる

健康影響の基準
100 健康影響の無しの上限・緊急作業時の線量限度
0.5
0.2
50
20
線量限度の最大(平常時)
年平均線量

その後、放射線の健康影響についてどのように国民に説明すべきか、放射性物質によって汚染された瓦礫の問題や放射線業務従事者の被ばく線量をどうすべきかなどについて、活発な意見交換がなされた。

詳しくは、以下をご覧ください。
    「量子放射線利用普及連絡協議会」第13回会合・議事メモ  (PDF, 263KB)

以上

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