原賠制度専門部会 被災者の視点を第一に 国民負担の最小化や予見可能性など議論
原子力委員会の第5回原子力損害賠償制度専門部会が12月9日、都内で開催された。
原子力損害と認められる損害については全て填補される「適切な賠償」を被害者保護の在り方の基本として検討を進めることや、被害者救済手続に関しては紛争審査会による指針の策定やADRセンターによる和解の仲介などの福島第一原子力発電所事故等への対応を踏まえた上で賠償を行うに当たっての迅速性と適切性が求められることについては、被災者保護の立場から考えることは最も重要な点であるとの意見が多く聞かれた。崎田裕子NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長は、「賠償や除染をどのように終わらせるのかについてもわかりやすく提示を」と求めた。
まずは原子力事業者が最大限の責任を負うべきであり、税による国民負担の最小化は引き続き追求されるべきとの点について、山口彰東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授は、「国のエネルギー安定供給に寄与することなど原子力の特殊性があまり整理されてないのでは」と論点に加えることを提起した。
現行の原賠制度は原子力事業者にとって事業の予見可能性が確保された仕組みか、仮に予見可能性が十分ではない場合はどのような予見可能性を高めていくことが必要と考えられるか――との点について、阿部信泰原子力委員から「保険で考えていくことも一つの方法では」と意見があったが、木原哲郎日本原子力保険プール専務理事からは「現在の1,200億円の保険プールは海外の例と比べても高額であり大幅な引き上げは難しい」との説明があった。
原賠法の目的である「被害者の保護」および「原子力事業の健全な発達」の在り方については、「原子力事業の健全な発達」という文言が現状にそぐわないという意見が聞かれた。住田裕子エビス法律事務所弁護士は、「原子力事業の『持続可能性』という言葉にしてはどうか」との意見を述べた。