農研機構、イオンビーム照射でセシウムを吸収しにくい新品種コシヒカリを開発
農業・食品産業技術総合研究機構は5月31日、イオンビーム照射による突然変異法により、放射性セシウムを吸収しにくい稲の新品種「Cs低吸収コシヒカリ」を開発したと発表した。
福島第一原子力発電所事故に伴う放射性セシウムにより農地土壌の汚染が発生し、作物への影響を防ぐため、肥料の増量などの対策がとられてきたが、より省力的な放射性セシウム低減技術が求められていたことから、同機構を中心とする研究グループでは新品種の水稲開発に取り組んでいた。「Cs低吸収コシヒカリ」の食味は元々のコシヒカリとほとんど変わらず、生育特性や収量、栽培方法もほぼ同等だとしている。これまで以上に安全で美味しい米を提供する新たな低減技術となりそうだ。
研究グループでは、土壌中の放射性セシウム濃度が比較的高い条件下で、新品種の検証を行ったところ、玄米中の放射性セシウム濃度が、元々のコシヒカリの半分以下に、肥料を与えることで、さらに半分以下にまで抑制されていることを確認した。
これを踏まえ、「Cs低吸収コシヒカリ」において、放射性セシウム濃度が低下したカギとなる遺伝子の特定のため、岩手生物工学研究センターとの共同研究を実施しており、稲の耐塩性に関わるタンパク質リン酸化酵素遺伝子(OsSOS2)に変異が生じたこととで根からのセシウム吸収が抑制されたものと研究グループでは説明している。また、OsSOS2の変異を簡易に検出する技術も合わせて開発されており、コシヒカリ以外の品種改良にも応用できるものと期待を寄せている。
イオンビーム照射による突然変異法では、カドミウムを吸収しない新品種コシヒカリの開発も行われたことがある。