2016年度エネルギー白書公表、福島第一廃炉「着実に進捗」と評価
資源エネルギー庁は6月2日、2016年度のエネルギー白書を公表した。本年度白書では、エネルギーを巡る最近の状況と主な対策について、「福島復興の進捗」、「エネルギー政策の新たな展開」、「国内外のエネルギー制度改革とエネルギー産業の動向」の3本柱で取りまとめ紹介している。白書は同日閣議決定された。
「福島復興の進捗」では、冒頭、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を「日本のエネルギー政策全体の転換点」と位置付け、改めて3・11後に顕在化したわが国の資源・エネルギーを巡る諸課題を示唆した。その上で、発災から6年間の福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策、福島の復興、原子力損害賠償、東京電力改革に関する最近の施策状況を説明しており、廃炉の取組については、「対策に一部の遅れはあるものの、全体としては着実に進捗してきている」と、中長期ロードマップに基づく進展に一定の評価を示した。
「エネルギー政策の新たな展開」では、わが国のエネルギー安定供給確保に向けた資源開発動向、経済成長と環境保全を両立させる省エネ・再エネ政策の現状などを述べたほか、電力システム改革の動きについて、総合資源エネルギー調査会下に設けられた小委員会・ワーキンググループでの課題整理・制度設計に関する議論を紹介した。これを踏まえ、原子力政策に関しては、電力自由化が進み、経済効率性の追求を目指した競争環境が進展した状況下においても、「安全規制に受け身で対応するのではなく、自らの意思で常により安全を高めていく」必要性を訴えている。さらに、同調査会の自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループの議論に触れながら、規制機関、事業者、メーカー、関係省庁など、すべての原子力関係者が、それぞれの立場で安全性向上を追求しながら、相互に指摘し合い、さらなる高みを目指す「継続的な原子力安全性向上のための自律的システム」を構築する必要があると述べている。
こうしたわが国のエネルギーを巡る事業環境の変化をとらえ、「国内外のエネルギー制度改革等とエネルギー産業の競争力強化」では、諸外国の企業動向を分析、紹介している。特に、市場の自由化が先行する欧州のエネルギー企業については、国内市場での競争激化とリスクが高まる一方、新たに開かれた国外市場への積極的展開を図っている状況が、国外売上高比率などのデータを通じ示された。また、原子力関連では、コラム形式で紹介した技術革新・新サービス創出の事例の中で、例えば、米国ベンチャー企業のニュースケール社における小型原子炉SMRの開発について触れており、1基ごとの出力を5万kWと小さくし、冷却が容易となり安全性が高まるとともに、工場で製造したユニットを現場で組み立てることで、工期短縮やコスト削減にもつながっている。