エネ庁WG、高速炉開発「戦略ロードマップ」策定に向け有識者よりヒア

2017年6月16日

 高速炉開発に向け、実務的検討を行う資源エネルギー庁の戦略ワーキンググループは6月15日、原子力発電環境整備機構理事長の近藤駿介氏と東京大学大学院工学系研究科教授の山口彰氏からヒアリングを行った。同ワーキンググループは、2016年12月決定の「高速炉開発の方針」を受けて、今後10年程度の開発作業を特定する「戦略ロードマップ」を、2018年を年を目途に策定することを目指し検討を行うもので、構成員は、資源エネルギー庁次長の多田明弘氏、文部科学省大臣官房審議官の増子宏氏、三菱重工業原子力事業部長の門上英氏、電気事業連合会原子力開発対策委員長の豊松秀己氏、日本原子力研究開発機構副理事長の田口康氏。
 15日の会合では、まず、近藤氏が、2004~14年に原子力委員会の委員長を務めた経験から、2005年の原子力政策大綱策定における核燃料サイクルに関する議論、これに続き、原子力機構、電気事業者、メーカーなどが連携して2006年より進められてきた「高速増殖炉サイクル実用化研究開発」(FaCT)について振り返りながら、大型研究プロジェクトを進める困難さを訴えかけた。FaCTプロジェクトは、「もんじゅ」に続く高速増殖炉サイクルの実証施設の概念設計、実用化に至るまでの研究開発計画を2015年に提示することを目標としていた。
 これを受けて、山口氏は、2005年の原子力政策大綱では高速炉開発戦略について「客観的に示されていた」とした上で、2013年に原産協会が開催した「原子力安全シンポジウム」に元英国議会科学技術部ディレクターとして登壇したデビッド・コープ氏の「後世のためにオプションを残しておくことは重要」との発言を披露し、将来に向けて高速炉開発を進めていく意義を強調した。
 また、実験炉の「常陽」が長期停止している状況下、山口氏が今後の高速炉に関する人材育成について、「極めて危機状況」と危惧したのに加えて、門上氏もメーカーの立場から、最近の学生の関心が福島第一原子力発電所の廃炉や核融合に移ってきている状況を述べ、社会の動きも敏感にとらえながら「何らかのミッションを与えないと優秀な学生は集まらない」などと憂慮した。この他、田口氏は、「もんじゅ」の廃止措置から得られる新知見の有用性に触れるなどした。