原産協会プレスブリーフィング 福島第二原子力発電所廃炉の検討に遺憾の意
高橋明男原産協会理事長は6月21日、メディア向け定例ブリーフィングを開催した。
はじめに最近の原子力関連ニュースとして、第5次エネルギー基本計画案が7月にも閣議決定見込みであること、玄海4号機が営業運転を再開したこと、福島第二原子力発電所廃炉の検討がなされること、安全性向上を目的とした原子力エネルギー協議会が7月に発足することなどが挙げられた。
その後の質疑応答で高橋理事長は、2030年に原子力発電の割合を20~22%とするには稼働率にもよるが30基程度の稼働が必要だとし、気候変動対策目標の達成は国際的な約束であるため、現存する原子力発電所の運転期間延長および再稼働を進めていくことを求めた。また一般の廃炉に関しては、圧力容器内の高線量部分の解体を除いては各地域の地元企業が請け負っていくことが可能であり、ノウハウを共有しながら経済的かつ効率的に進めていくことが大事だと語った。
さらに、英国ホライズン社の新規原子力発電所建設計画については、日本の技術を維持し継承していく良い機会であるとともに高品質のものを提供することで世界に貢献でき、先進炉として運転実績のあるABWRの技術を提供できるという点で産業界にとって意義深いとの見解を示した。費用回収に重要となる電気料金の設定に関しては、先行するヒンクリーポイントC計画での実績も踏まえながら、経済性を考慮していくべきだと述べた。また輸出に際しては、メーカーが建設するだけではなく、今後は運転や保守、放射線管理や廃棄物処理等まで含めた提案ができるかが課題で、電力会社の協力も必要になると指摘した。
電力会社間で余剰プルトニウムを融通することについては、理屈としては理解できるとしながらも、各社はプルサーマル導入時にも地域の理解を得るために苦労しており、時間のかかる難しい問題であるとの見方を示した。
伊方発電所敷地内の使用済み燃料乾式貯蔵に関しては、乾式キャスクは非常に丈夫に作られており冷却も不要なため今後も増えていくだろうが、廃炉にキャスク製造が追いつかないとの懸念も示唆した。
最後に理事長自身がかつて所長を務めた福島第二原子力発電所の廃炉が検討されることについて、福島県の浜通りだけでも原子力発電所10基のメンテナンスが常に必要だったことから、地元作業員たちの技量が非常に高く、こうした仕事がなくなってしまうという観点からも非常に残念だとの所感を語った。