ICEF年次総会開幕、気候変動解決のイノベーション実現に向け世界のリーダーが参集し議論

2018年10月10日

キーノート・ディスカッションに臨む、田中氏、解氏、クルーグ氏(左より)

 エネルギー・環境分野のイノベーションの重要性について世界の産官学のリーダーが話し合うICEFの年次総会が10月10日、都内で開幕した。
 2014年に安倍晋三首相の提唱により創設されたICEFの今回年次総会は、5年目の節目を迎え、「Driving Green Innovation (グリーンイノベーションを引き起こす推進力)」をテーマに、ビジネス主導の脱炭素化に向けた技術イノベーションや、企業・消費者を巻き込む社会イノベーションについて議論する。11日までの2日間、再生可能エネルギー、原子力、消費行動改革など、課題別に分科会を設け議論を深め、ロードマップを取りまとめる運び。原子力の分科会では、小型モジュール炉(SMR)のCO2を排出しない新たな電源としての可能性について議論する模様。
 年次総会の開会に際し、安倍首相はビデオメッセージで、「温暖化対策は、企業にとってコストではなく競争力の源泉」と、ICEF創設から5年間の「環境と成長の好循環」の世界潮流を訴えかけ、ICEFが地球温暖化の解決に向けた「大きな一歩」となるよう大いに期待を寄せた。
 また、世耕弘成経済産業相もビデオメッセージを寄せ、ICEFが70か国以上の国から1,000人を超す有識者の集まる世界的会議に発展したことを歓迎した。その上で、気候変動問題を解決するイノベーション実現のカギとして、(1)野心的ビジョンの設定、(2)研究開発の選択と集中、(3)イノベーションをグローバルかつオープンに進めること――を掲げ、2日間の議論の成果が「世界全体の持続的成長」へとつながるよう期待した。
 続くキーノート・ディスカッションでは、ICEF運営委員会の委員長を務める田中伸男氏(笹川平和財団会長)、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)副議長のテルマ・クルーグ氏、中国国家発展改革委員会特別代表の解振華(かい・しんか)氏が、先般公表された「IPCC1.5度C特別報告書」を中心に話し合い、以降の議論に先鞭を付けた。IPCCが10月5日の総会で承認した「IPCC1.5度C特別報告書」は、COP21決定の要請を受け、「産業革命前比で1.5度Cの気温上昇による影響や、それに関連する温室効果ガスの排出経路」に関して評価したもので、12月のCOP24に提出されることとなっている。クルーグ氏は、「単に気候変動だけに対応しているのではなく、世界の持続可能な開発や貧困撲滅につながるもの」と、特別報告書の意義を強調した。