地層処分に関する国際ワークショップ、各国実施主体が集まり対話活動のあり方を議論

2018年11月29日

 高レベル放射性廃棄物の地層処分に関し、地域との対話活動のあり方を考える国際ワークショップ(OECD/NEA・資源エネルギー庁主催)が11月28日、都内で行われ、ベルギー、カナダ、フランス、韓国、スウェーデン、スイス、英国、米国の処分事業実施主体などから、各国の取組状況について報告を受け議論した(=写真)。
 現在処分地選定に向けた取組を進めている日本では、事業実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)により、これまでに蓄積されてきた科学的知見や技術を包括した報告書が21日に公表されたところだ。そこでは、「なぜ安全な処分場を構築できるといえるのか」を説明する技術的な論拠・根拠を総合的にまとめた「セーフティケース」を事業実施主体が作成し社会に提示するのが諸外国では主流となっているとしている。本ワークショップでは、こうした地層処分技術の「セーフティケース」に関して、各国が地域のステークホルダーから理解を得るため、継続的な対話をどのように進めているかを比較しながら、課題を共有し議論を深めた。
 OECD/NEAで「セーフティケース」に関するコミュニケーションのあり方について報告書を取りまとめたルーシー・ベーリー氏は、「ステークホルダーとは、“with not to” で(一方的ではなく)、相手の話もよく聴き、不確実性があることも率直に伝えなければならない」と述べ、技術的能力に対する信頼性だけでなく誠実さも求められることを強調した。
 各国の事業実施主体による発言で、処分地選定プロセスが調査段階にあるフランスのANDRAからは、多くの訪問者を受け入れている地下研究所について、信頼性を向上し「進捗を実証するよいツール」としていく必要性が述べられた。また、22の地域が関心を表明しているカナダのNWMOからは、各コミュニティの社会的・経済的志向も尊重し、「パートナーシップ」を深めながら対話活動に取り組んでいる事例が紹介された。
 一方、スイスのエネルギー庁からは、処分地選定プロセスにおけるヴェレンベルグ地域での失敗経験を通じて得た「ステークホルダーからは予想もしない疑問が発せられることもある。反対する人たちも重要な役割を担っている」といった教訓があげられた。
 各国からの発言を受け、ワークショップの座長を務めたOECD/NEA放射性廃棄物管理委員会(RWMC)委員長のジャン‐ポール・ミノン氏は、安全性を担保する規制当局の信頼性とともに、社会とのコミュニケーションの重要性を改めて強調した。また、対話活動においては、「すべての質問に対し耳を傾け、その背景にあるものを理解すべき」としたほか、反対意見に関しても「新たなアイデアを提供してくれる」などと、看過できぬことを指摘した。その上で、「地層処分の問題は目に見えないからこそ地下研究所が必要となる。また、国際的議論は時間と忍耐を要するが、常に学ぶものがある」として、今後も国際協力を継続していく必要性を訴えワークショップを締めくくった。