近畿大と早川ゴム、成型が容易な放射線遮蔽材を開発
近畿大学医学部の研究チームはこのほど、耐放射線ゴム材料で定評のある早川ゴムと共同で、加温(60度C程度の湯)することで柔らかくなり常温で型を維持できる放射線遮蔽材「シーラー Soft Tungsten Rubber」(STR、=写真〈近畿大学ホームページより引用〉)を開発したと発表した。
早川ゴムは、大強度陽子加速器施設「J-PARC」(東海村)の建設資材となるゴム材料の開発で、高放射線環境下でもゴム本来の弾性体としての機能を維持することや耐震性などの技術課題をクリアしてきた。今回開発された「STR」は、同社独自の特殊配合技術によりゴムが持つ柔軟性・加工性と放射線遮蔽能力を兼ね備え、成型加工が容易な特徴から、従来の有毒な鉛やアンチモンに替わる遮蔽材として、放射線治療を行う際の副作用低減や高精度化に寄与することが期待される。また、「STR」は再利用が可能。創業100年を迎える早川ゴムは、戦前に端を発するタイヤゴム再生など、環境負荷低減に長く取り組んでいる。
近畿大学の発表によると、「STR」は、皮膚の表面に直接装着させた状態で電子線照射を行うことができ、特に呼吸による位置変動が大きい部位や小さな照射野に対しより高精度な治療が見込めるほか、手術直後に傷口への放射線治療を施すことがあるケロイドなどでは、遮蔽材の加工時間の大幅短縮による早期治療開始で再発が抑えられる可能性もあげている。