原子力産業新聞

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ICEF開催、革新炉の社会受容も議論に

08 Oct 2021

開会に際し行われたビロルIEA事務局長(左)と田中ICEF運営委員長との対談、国際協力の重要性を確認(インターネット中継)

技術イノベーションによる気候変動対策について話し合う国際会合ICEF(アイセフ:Innovation for Cool Earth Forum、運営委員長=田中伸男・元IEA事務局長)の年次総会が10月6、7日、オンラインで開催された。安倍晋三元首相の提唱で立ち上がり2014年から続くICEFは今回、87か国・地域、2,000人以上の有識者らが参集し、「2050年までのカーボンニュートラルの道筋」をテーマに議論。特定技術分野として、デジタル技術、エネルギーシステム統合、原子力、食料システムなどに関する議論を深め、ステートメントを発表。原子力については、小型モジュール炉(SMR)の将来性が記載された。

三菱重工の原子力技術開発ロードマップ(三菱重工発表資料より引用)

7日に行われた原子力に関する技術セッションでは、米国マサチューセッツ工科大学教授のリチャード・レスター氏が「気候変動は世界が直面している最大の課題の一つ」と先鞭を付け、次世代炉技術の展望と課題について議論。三菱重工業から原子力技術部長の神﨑寛氏が「2050年カーボンニュートラル」の達成に向け取り組む開発計画を披露し、短期的には既設プラントの再稼働、革新的な次世代軽水炉の開発の推進に取り組み、その先の将来を見据え、小型軽水炉(30万kW以下)、高温ガス炉、高速炉、マイクロ炉(コンテナに収納可能)の開発・実用化に、長期的には核融合炉の実用化にも挑戦するという展望が示された。同氏は、革新炉による産業界の脱炭素化への貢献として、コークスの一部を高温ガス炉で製造した水素で代替しCO2を低減する「水素還元製鉄」の有望性を強調。日本原子力研究開発機構高温ガス炉研究開発センターのミャグマラジャブ・オドツェツェグ氏は、同機構の高温工学試験研究炉「HTTR」を用いた水素製造技術「ISプロセス」について説明した。

米国からは国立原子炉イノベーションセンター(NRIC)センター長のアシュレイ・ファイナン氏が「2025年までに少なくとも2基の革新炉を実証し2030年までの商業化を目指す」というビジョンを掲げ、その実現に向けて、コスト削減や安全性実証の他、「いかにして人々を巻き込んでいくか」と、ステークホルダーの関与に係る課題を提起。今回若手として登壇したミシガン大学のアディティ・ヴァルマ氏は、各国の原子炉設計手法のパラダイムに関する分析結果から、革新炉の発展・普及には技術者も社会と双方向に対話を行う必要があるとした。前回のICEFで女性の視点から原子力の必要性を主張した元欧州議会メンバーのエイヤ-リイタ・コーホラ氏も、社会受容に関し、「特に若い人たちの関与は重要」と強調した上で、「原子力技術について語る際、『臨界に達する』といったわかりにくい専門用語が障害となることもある」などと述べた。

今回ICEFに参画した若者たち、「気候変動の影響を受けるのはわれわれの世代」という声も(インターネット中継)

今回のICEFでは、脱炭素社会に向けた行動イノベーションに関する独立したセッションを初めて設け、価格規制やナッジ(人の感情に働きかけて“何となく”行動を促す手法)などを受けた個人の行動変容による温室効果ガス削減効果についても意見が交わされた。また、全セッションを通じ、「2050年の社会で中心的な役割を果たす」として招かれた各国・地域の若手登壇者らも、積極的に議論に参画。会合における議論の成果は、10月31日より英国グラスゴーで開催されるCOP26の場でも紹介される運び。

今回のICEFをイメージしたインフォグラフィックス(ICEFホームページより引用)

閉会に際し、運営委員長の田中氏は、「女性、若者、イノベーションの3つが世界をカーボンニュートラルに向けて動かす」という今回のICEFをイメージしたインフォグラフィックスを示しながら、「近々、ユースミーティングを開きたい」と、若い世代のさらなる参画に期待を寄せた。

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