UAEでバラカ3号機の建設工事が完了
05 Nov 2021
バラカ3号機©ENEC
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当している首長国原子力会社(ENEC)は11月4日、バラカ原子力発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の3号機の建設工事が完了したと発表した。
2014年9月に本格着工した3号機ではすでに、冷態機能試験や温態機能試験のほか、構造性能確認試験(SIT)、総合漏えい率試験(ILRT)など様々な試験が完了。2023年の起動と送電開始に向けて作業は順調に進展しており、世界原子力発電事業者協会(WANO)など国際機関の独立した専門家による評価作業も含めて運転準備の段階に入った。連邦原子力規制庁(FANR)も同炉に運転認可を発給するのに先立ち、運転の担当機関など同炉のあらゆる側面を詳細にレビュー中である。
同発電所では今年4月、アラブ諸国初の商業炉として1号機が営業運転を開始したほか、同2号機も9月に連邦内への送電を開始。現在、出力上昇試験などを実施している。
3号機に関する今回の発表は、第26回・国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)の開催イベントの一つ「エネルギー・デー」に合わせて行われた。UAEはCO2の排出量を削減しつつ、連邦内で増加する電力需要を満たすために電力供給量を拡大、発電部門の迅速な脱炭素化を図りクリーンエネルギー社会への移行を進めているとアピール。「エネルギー・デー」に参加した46か国・地域(日米や中国、豪州、インドなどを除く)の首脳はこの日、先進国などで2030年代に、世界全体では2040年代にも石炭火力を廃止し、CO2削減対策を持たない新たな発電所の建設を中止するほか、公的な輸出支援も終えることなどを約束している。
「COP」に関してUAEは、(3号機が送電開始予定の)2023年に開催される「COP28」の誘致を希望。UAEの明確な方針として、地球温暖化への対応でCO2排出量の削減を図り、2050年までに実質ゼロ化するということを示しており、同じく誘致を希望していた韓国も含め、国連アジア・太平洋地域の諸国からはすでに支持を取り付けた。ENECによると、バラカ3号機が完成したことによりUAEは140万kWの無炭素電力源を速やかに追加し、クリーンエネルギーへの移行で主導的役割を果たしていく。再生可能エネルギーの間欠性を補えるベースロード用のクリーンエネルギー源として、原子力を活用するとの国際誓約を果たすとともに、地球温暖化の解決策が著しく進展していることを実証した。
ENECのM.I.アルハマディCEOも、「当社は原子力でUAEの持続可能な成長と繁栄を目指しており、一日24時間、年中無休でクリーンな電力を豊富に生産する原子力発電所は、再生可能エネルギーを補うだけでなく、水素エネルギーなど他のクリーンエネルギーへの橋渡しになる」と指摘。今後60年間は、原子力で地球温暖化に直接取り組むとの決意を示したほか、15年前に原子力による電源の多様化ビジョンを描き、確固たる信念を持ってバラカ発電所建設計画を今日の実現に導いたUAE指導者達に謝意を表明した。
(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)