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ルーマニア、チェルナボーダ3、4号機の完成に向け最初の契約締結

29 Nov 2021

チェルナボーダ原子力発電所©SNN

ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は11月25日、チェルナボーダ原子力発電所3、4号機(各70万kWの加圧重水炉)を完成させるプロジェクトで準備段階のエンジニアリング・サービスを受けるため、子会社でプロジェクト企業のエネルゴニュークリア(EN)社がカナダのCANDUエナジー社と契約したと発表した。

3、4号機はカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)として着工したため、これらを完成させるには、CANDU炉を設計したカナダ原子力公社(AECL)の商用原子炉部門を2011年に買収したSNC-ラバリン社の協力が不可欠となる。CANDUエナジー社はSNC-ラバリン社の完全子会社であり、CANDU炉の設計と供給、および関連サービスの提供を専門としている。

今回の契約は、ルーマニアと米国の両政府が2020年10月、両炉の完成に向けた米国からの支援、およびルーマニアの民生用原子力発電部門の拡充と近代化等で協力するため、政府間協定(IGA)案に仮調印したのにともなうもの。その後の今年6月、両国議会の承認を経て同協定案が発効したことから、米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補代行は今年8月、一行を率いて建設工事が1989年にそれぞれ15%と14%で停止した3、4号機を視察した。ルーマニアも米国とIGAを締結した後、カナダ政府とも民生用原子力プロジェクトに関する過去55年間の協力関係をさらに強化・発展させるため、了解覚書を今年8月に結んでいる。

CANDUエナジー社は今後、12か月間で840万カナダドル(約7億5,000万円)という今回の契約を通じて、建設工事の再開に必要な文書の最新化や詳細化といったエンジニアリング・サービスをSNN社に提供。具体的にこれらの文書は、両炉の許認可基盤や遵守すべき安全基準、安全設計の変更に関わるものだと説明している。

一方のSNN社は今年4月、通常総会で3、4号機の完成戦略を3段階で進めることを承認した。24か月間の「準備段階」ではまず、2009年に設立したEN社がプロジェクト企業として事業展開していけるか、資産・収益等の現在価値を算出。エンジニアリング等の技術面や法制面、財政面で同社が支援を受けられるよう、様々な契約をこの段階で締結し、関連の評価作業や調査も実施するとしている。

チェルナボーダ3、4号機を完成させるプロジェクトは、2050年までを見据えたルーマニアの「2019年から2030年までのエネルギー戦略」に盛り込まれており、エネルギー・地球温暖化関係の「国家統合計画」にも明記されている。同国が欧州連合(EU)の一員として、脱炭素化とエネルギーの自給を目指す際の中心政策とも位置付けられており、原子力プロジェクト関係の米国とのIGAはこれらの目標達成に向けて締結された。これと同時にルーマニアの経済・エネルギー・ビジネス環境省は、米輸出入銀行(US EXIM)と了解覚書に調印。原子力を含むルーマニアのエネルギー・インフラ分野向けに、最大70億ドルの投資支援を同行から取り付けている。

SNN社のC.ギタCEOは今回、「クリーンでコスト面の効果も高い原子力をルーマニアは必要としており、我が国が脱炭素化を目指す際の解決策の一つになる」と表明。新たな原子炉を国内で完成させることはまた、国家のエネルギー供給システムに安定性とセキュリティ面の効果をもたらし、雇用の創出や国内サプライチェーンの開発など社会経済的なメリットも多数あると強調した。

米国のD.ムニーズ公使代理は、ルーマニアが原子力発電設備の改修・拡張に向けて商業契約を結んだことを高く評価。「米国は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国としてカナダやルーマニアと協力し、ルーマニアにクリーンで安全、信頼性の高い廉価なエネルギーを提供していく」と述べた。

(参照資料:SNNSNC-ラバリン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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