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ブラジル、新規原子力発電所の立地点選定作業を開始

20 Jan 2022

ブラジルで稼働するアングラ1、2号機 ©Eletrobras

ブラジルで原子力発電事業を展開するエレトロニュークリア(Eletronuclear)社は1月14日、国内で新規の原子力発電所立地点を選定するため、鉱物エネルギー省(MME)が電力研究機関のElectric Energy Research Center(Cepel)と協力協定を締結したと発表した。

Cepelの18日付の発表によると、契約期間はブラジルの連邦官報に掲載された後36か月間で、契約額は700万レアル(約1億5,000万円)。総発電量の約7割を水力発電に依存するブラジルでは、昨年の干ばつにより電力供給量が不足したが、同国の「2050年までの国家エネルギー計画(PNE 2050)」では、現在約200万kWの原子力発電設備を今後30年間で800万~1,000万kWに拡大する方針である。MMEは電源構成の中でクリーンかつ確実なエネルギー源である原子力発電の比率を高め、干ばつや地球温暖化等の影響を抑えたいとしており、新規立地点の選定もこの方針に沿ったものとなる。

エレトロニュークリア社は電力大手のエレトロブラス(Eletrobras)社(※旧電力公社で2021年7月に民営化法が施行)の傘下企業であり、電力部門の研究開発と技術革新を牽引するCepelも、エレトロブラス社とその複数の子会社が1970年代に設立した機関。MMEはCepelについて、「著名な研究者を数多く擁しており、電力部門における後続の研究者養成にも貢献している」と評価した。

Cepelは今回の協力協定に基づきMMEに技術面の助言を提供することになっており、第一段階では、エレトロニュークリア社が2009年から2010年にかけて同様の調査を実施した際、使用した基準に見直しや補足の必要があるかを分析する。Cepelはこの作業では、米国の電力研究所(EPRI)が2015年に公表した「早期の許認可申請に対する評価基準とサイト選定に関する手引書」の最新版を活用するとしている。

Cepelによると、2009年頃に調査が行われた後、ブラジル北東部では風力や太陽光の発電設備の設置が急速に進むなど、状況が大きく変化した。原子力発電所の立地点を選定する新たな調査では、PNE 2050が示した最新のエネルギー動向や市場状況、EPRIの手引書・最新版による勧告等を考慮する必要がある。

また、第二段階からは実際の選定作業に入るが、適合性に関するファクターや優先傾向などを見直す必要があるかCepelは重点的に取り組んでいく。このほか、新規立地点からの送電容量が十分であるか等についても、Cepelでは送電網を管理する全国相互接続システム(SIN)が評価しなければならないとしている。

(参照資料:Cepelエレトロニュークリア社(ポルトガル語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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