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英規制当局、中国の「華龍一号」設計を承認

08 Feb 2022

「UK HPR1000」の断面模型図 ©CGN

英国の原子力規制庁(ONR)は2月7日、中国が知的財産権を保有する「華龍一号」設計の英国版(UK HPR1000)について、実施していた全4段階の包括的設計審査(GDA))が完了し、ONRが「設計承認確認書(DAC)」を、環境庁(EA)が「設計承認声明書(SoDAC)」を関係企業に発給したと発表した。

GDAは、英国内で初めて建設される原子炉設計に対して行われる設計認証審査で、DACの発給は対象設計の安全・セキュリティ面、SoDACは環境保護と放射性廃棄物管理の側面で、英国の厳しい基準をクリアしたことを確認。これにより、同設計が英国内で直ちに建設可能になるわけではないが、中国広核集団有限公司(CGN)とEDFエナジー社が、英国エセックス州で共同で進める予定のブラッドウェルB原子力発電所建設(UK-HPR1000×2基)計画は技術的には大きく前進した。

EDFエナジー社は現在、サマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの「欧州加圧水型炉:EPR」×2基)を建設中だが、同社は2015年10月、英国と中国の両政府が2013年に交わした覚書に基づき、CGNと共同で同計画に投資する内容の戦略的投資協定で合意。CGNはHPC計画の総工費180億ポンドのうち33.5%を投資することを約束したほか、EDFエナジー社がサフォーク州で計画しているサイズウェルC原子力発電所(167万kWのEPR×2基)建設計画にも20%出資する。また、後続のブラッドウェルB計画については「華龍一号」設計を採用し、CGNが建設段階において66.5%を出資、EDFエナジー社をパートナーとしてCGNが同計画を主導することになった。

ONRとEAが2017年1月に開始した「UK HPR1000」のGDAに関しても、EDFエナジー社とCGNは合弁で審査活動の管理会社「ジェネラル・ニュークリア・システム(GNS)社」を設立した。同社の株式の66.5%は、CGNが持ち株会社として立ち上げたジェネラル・ニュークリア・インターナショナル(GNI)社が保有。このため、今回のDACとSoDACはCGNとEDFエナジー社、およびGNI社に対して発給されている。 

「華龍一号」はCGNと中国核工業集団公司(CNNC)、双方による第3世代の100万kW級PWR設計を一本化して開発されたもので、CGNはブラッドウェルB計画でCGNバージョンの「華龍一号」を採用する。この「華龍一号」は現在、中国・広西省の防城港3、4号機、広東省の太平嶺1、2号機、浙江省の三澳1、2号機として建設中であり、防城港の2基はブラッドウェルB発電所の参照炉に位置付けられている。

今回、その英国版にDACを発給したことについて、ONRのM.フォイ主席原子力検査官(CNI)は「ONRの特別検査官が詳細かつ厳密に審査した結果であり、この設計が英国内での建設に適したものであることを示している」と述べた。

EAのS.フィナーティ原子力規制担当局長は、「当庁の2025年までの行動計画にも示したように、審査は急を要する地球温暖化への影響を最優先としたもので、エネルギー供給の脱炭素化は英国における主要目標の一つだ」と説明した。原子力については、「CO2排出量の実質ゼロ化に向けて英国政府が進めているエネルギー政策の重要部分を担っている」と指摘。こうした背景から、審査では新たな原子力発電所が英国の厳しい基準を満たすだけでなく、周辺コミュニティや環境も適切に防護されるよう配慮したとしている。

(参照資料: ONREAブラッドウェルB発電会社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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