米ニュースケール社、ポーランドでのSMR建設で銅の採掘会社と契約
16 Feb 2022
契約を交わした両社の首脳 ©KGHM
米国のニュースケール・パワー社とポーランド鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘(KGHM)会社は2月14日、ニュースケール社製の先進的小型モジュール炉(SMR)「NPM」を複数設置する発電所「VOYGR」をポーランド国内で建設するため、先行作業契約を締結したと発表した。
早ければ2029年にもVOYGRを完成させる計画で、これに向けた最初のタスクとして、両社はSMRの建設候補点をポーランド国内で評価・特定するほか、完成に至るまでの節目を設定した計画を立案、費用の見積も実施する。また、KGHM社はVOYGRの発電所を通じて、ポーランドのその他のエネルギー多消費産業に無炭素で安全なエネルギーを提供する機会を探るとしている。
両社はこの計画により、ポーランドでは最大で年間800万トンのCO2排出を抑制できると指摘。また、同国初のSMRを建設することで、KGHM社はポーランドのクリーンエネルギーへの移行を主導するリーダーとなり、これはCO2の排出量削減とエネルギーの自給を目指すという同社戦略の一環でもあると強調している。
ニュースケール社が開発した「NPM」はPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は出力7.7万kW版のモジュールについても、SDAを2022年第4四半期に申請するとしている。
「VOYGR」では出力7.7万kWのモジュールを設置すると想定されており、ニュースケール社は搭載基数毎に合計出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と呼称。KGHM社は差し当たり、4基のモジュールを連結して活用すると見られている。
両社による今回の契約締結は、2021年9月に両社およびポーランドのコンサルティング企業の3者が締結した協力覚書に基づくもの。KGHM社はポーランド南西部にある欧州最大規模の銅鉱床や、銀などその他鉱物の鉱床で採掘事業を行っているが、この事業に必要な電力と熱エネルギーは石炭火力から得ている。3者は協力覚書の下で、SMR導入の可能性や高経年化した石炭火力発電所の別用途への活用などを検証。SMRの建設に関しては、技術面や経済面、法制面、許認可手続に関する側面などを詳細に分析していた。
契約の調印は米国のワシントンD.Cで行われ、ポーランドのJ.サシン副首相兼国有財産相や米エネルギー省(DOE)のA.グリフィス原子燃料サイクル・サプライチェーン担当次官補代理らが同席した。KGHM社のM.チャドジンスキー社長は、「事業を100%脱炭素化するプロジェクトが始動することは当社の誇りだ。SMRを通じて当社はコストの効率化を図り、ポーランドのエネルギー部門をクリーンエネルギーに移行させていく」と述べた。
ニュースケール社のJ.ホプキンズCEOは、「CO2排出量の削減競争で世界中の企業がしのぎを削るなか、当社の技術はこの目標の達成に完璧な解決策を提供できるし、同時に建設国には経済的繁栄をもたらすことが可能だ」と強調。KGHM社とともに先進的なクリーンエネルギー源の商業化を促進し、地球温暖化に立ち向かいたいとの抱負を述べた。
(参照資料:ニュースケール社、KGHM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)